限界に達した中国の貨幣供給量 「史上最悪の資金不足」=専門家

2024/04/01
更新: 2024/04/01

中国(共産党)のM2貨幣供給量)は、すでに約300兆元(約6282兆円)に達している。通貨による債務は増加の一途を辿りながら、GDPの成長率は着実に下降し、インフレはほとんど見られない。中国金融智庫の研究員である鞏勝利氏は、2024年には中国が最も資金の不足している時代に突入すると指摘している。

M2は市場全体に供給される通貨(マネー)の量を測る指標の一つで、現金通貨と国内銀行等に預けられた預金のことを指している

M2に定期預金が含まれているため、定期預金が増えれば増えるほど、市場で流れるマネーが減り、取引や消費が減少し、景気が悪化する傾向にある。

最新の金融データによれば、2月末時点での中国のM2は299兆5600億元(約6272兆5149億円)に達し、前年同期比で8.7%増加している。この数値は米国の2倍、日本の3.7倍に相当している。

長年にわたり、中国のM2の成長率はGDPの成長率を上回ることが多い。現在、中国のM2はGDPの2.3倍。米国の場合、この数値は0.76にとどまっている。

M2は一般に、貨幣供給量の指標として用いられる。信用貨幣(銀行券・預金通貨)の発行量が増えるほど、債務の総量も大きくなる。

信用貨幣の発行の増加ペースがGDPの成長率を継続的に上回ると、債務のリスクは次第に高まる。

鞏勝利氏は、2000年に中国のM2は13兆元(約2721兆4561億円)だったのに対し、現在は23倍に増加して300兆元に達し、極端な水準になっていると指摘した。

鞏勝利氏はさらに、「中国は投資の規模をあまりにも大きくし過ぎた。その結果、現在の中国の貨幣供給量は歴史的な最高点にあり、すでに限界に達している。資金不足は少なくなく、そのため中国の一部の省や市では新たな投資を全面的に制限している」と述べた。

ロイター通信が1月に報じたところによると、北京は地方政府や国営銀行に対し、遼寧省、天津市、重慶市など債務問題が深刻な12の地域で、いくつかのプロジェクトの建設を延期または中止するよう指示している。さらに、投資効率が50%を超えるプロジェクトについては、投資規模を縮小するよう求めている。

中国では多くの建設プロジェクトにお金を投じている。鞏勝利氏によると、最低でも、毎年資金の3分の1が不足する可能性がある。

「現在の状況が非常に深刻であるため、当局は新たな通貨の発行をためらっている。2024年を境に、中国は史上最悪の資金不足に直面するかもしれない」

中国財政部のデータによると、2023年末に地方政府の債務残高は40兆元(約839兆円)を超え、その年の利息支出は1兆2千元(約20兆9377億円)を超えた。満期となる債券のほとんどは、新たな借入によって返済されている。

世界トップの総合金融グループ、ゴールドマン・サックスは、地方政府の融資機能を果たすオフバランスシートの実体を含めると、中国の地方政府の債務は合計で94兆元(約1967兆9001億円)に達すると推計している。

最近終了した中国共産党の「両会」で、政府は今後数年間にわたり超長期の特別国債を発行する計画を報告した。「超長期」とは一般に30年以上を意味し、実際に2009年には北京が50年物の国債を発行したことがある。

格付け機関フィッチグループは、中国では、中共中央政府が地方政府の役割を引き継ぎ、財政の主導権を握りつつあると指摘している。

経済学者らは、超長期国債からの資金が大きく不動産業の支援や多額の負債を抱える地方政府への資金提供に充てられると見込んでいる。

地方政府の債務と不動産市場の危機は、中国経済の回復を妨げる主要な要因と広く認識されている。

今年の初めの2か月間で、全国の不動産開発への投資は前年同期比で9.0%減少し、新築住宅の売上は29.3%減少、不動産開発企業の資金調達も24.1%の減少を見せた。

鞏氏は、中国の不動産業界が深刻な資金不足に直面しており、これが経済に壊滅的な影響を及ぼす可能性があると警告している。

「不動産企業は借金をして事業を行っているが、借金で運営するということは、その借金を返済しなければならない。今回の不動産危機は、長期にわたる借金で、将来の資金を使って現在をしのぐという悪循環がまだ終わっていないかもしれない。そのため、中国の産業が抱える借金問題については、現状では明るい展望が見えていないと思っている」

2021年以降、中国の不動産業界は債務危機に陥り、恒大集団や碧桂園(カントリー・ガーデン)といった大手不動産企業のデフォルトが相次いで発生している。

最近、中共の監督当局は、国有資本を背景に持つ不動産開発大手の万科企業(万科)への融資支援を強化するよう大手銀行に要請した。

鞏勝利氏は「今月末か来月にかけて、万科が不動産の債務をドル建てで返済できるかどうかが鍵となっている。返済できなければ、中国の不動産市場はさらにどん底に落ちるだろう」と述べた。

先月、国際格付け機関のムーディーズは、中国の主権信用格付けの見通しを「安定」から「ネガティブ」に下方修正し、地方債と不動産リスクに対する警告を発している。

駱亜
中国語大紀元の記者、編集者。