【寄稿】日本の再生エネルギー政策が中国に牛耳られている実態

2024/03/24
更新: 2024/03/26

内閣府の審議会「再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース(TF)」が珍事に揺れている。審議会メンバーである大林ミカ氏の提出資料に、中国の国策企業のロゴの透かしが入っていたのだ。

この再エネ・タスクフォースは次期再生エネルギー調達にかかる固定買取価格(FIT)を政権に対して提言するというもの。納税者の血税の使い道を議論する場で、中国共産党の息がかかった企業との関係が疑われる資料が使われていたとなれば、国民の信頼を裏切る大事件になる。

大林氏の説明を受けた内閣府規制改革推進室は次のようなコメントをX(旧ツイッター)に投稿した。

「大林氏が事務局長を務める自然エネルギー財団の数年前のシンポジウムに中国の当該企業関係者が登壇した際の資料の一部を使用したところ、テンプレートにロゴが残ってしまっていたとのこどでした。なお自然エネルギー財団と中国政府・企業とは人的・資本的な関係はないとのことです」

こんな説明は、なんの弁明にもなっていない。

2017年、邦訳すれば「全世界エネルギーネットワーク発展協力組織」と題する組織が中国・北京に発足した。初代主席は劉振亜・国家電網公司共産党書記だった。劉氏は大林氏の資料に「透かし」があった中国企業のトップを10年以上務めていたことになる。

自然エネルギーを全世界に普及させることで、持続可能社会を構築したいという設立趣旨が書かれている。

そして、「理事単位」(協力団体)として、ファーウェイやバーミンガム大学、山東大学などに加えて「日本可再生能源協会」という見慣れない団体の名前がある。ここをクリックすると、何と「自然エネルギー財団」のHP(ホームページ)が現れるのだ。つまり「日本可再生能源協会」とは「自然エネルギー財団」にほかならない証左なのだ。

中国事情に詳しい関係者は「いわば一帯一路構想の再生可能エネルギー版とでも言いましょうか。中国はエネルギー事業を通じて、日本の生殺与奪を握ろうとしているのです」

国民民主党の玉木雄一郎代表がXに投稿したコメントは手厳しい。

「到底納得できるものではない。我が国の再エネ政策が中国の影響が及んでいる疑惑であり、見過ごすことはできない。内閣府は背景を徹底調査すべきだ。今後、審議会等のメンバー選定にも、ある種のセキュリティークリアランスが必要ではないか。再エネ賦課金についても廃止を含め、見直しを検討すべきだ」

さて、本件資料を作成したとされる大林ミカ氏の経歴を見てみたい。自然エネルギー財団事務局長を務める大林氏は、同財団のホームページ(HP)によると、1992年から1999年末まで特定非営利活動法人原子力情報研究室でエネルギーやアジアの原子力問題を担当し、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)のアジア太平洋政策・プロジェクトマネージャーを経て、2011年から財団の設立に参加したのだという。

自然エネルギー財団は2011年8月、ソフトバンクグループの孫正義代表が設立者となり立ち上げた団体だ。未曾有の大災害が列島を襲い、福島の原発が大損害を被ってから5カ月後のことだった。思えば菅直人元首相は演説で「孫正義さんと中国、モンゴルと日本をつないで、再生可能エネルギーの道を作りたい」などと話しているのをJR吉祥寺駅前で聞いたことがある。今回の「事件」で合点がいった。

TFの委員が、中国企業の作ったデータをもとに再エネ政策を進めることがいかに危ういか、平和ボケした日本人には伝わらないだろうか。自然エネルギー財団が、中国の「エネルギー版」一帯一路構想を実現するための「協力機関」だとしたら、日本にとっては中国に電力網を牛耳られる恐るべき事態が起こる可能性があるだろう。大林氏のミスがなければ、中国の野望は表沙汰にならなかったかもしれない。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
1967(昭和42)年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業後、1991(平成3)年、産経新聞社に入社。主に東京本社社会部で警視庁などの警察、国税庁担当を長く務め、国税担当は東京と大阪で9年にわたる。東北総局次長などを歴任後、2019(令和元)年に退社。フリーに。主著にノンフィクション「19歳の無念」(角川書店)。