「社会報復事件」が1日に3件も発生 街中で市民を無差別にはねる暴走車=中国

2024/03/21
更新: 2024/03/21

3月19日、中国の3つの地方で「暴走車が市民をはねる」事件が起きた。

中国では近年、社会報復を狙ったとみられる無差別殺傷事件が頻発している。そのため、中国の人々は「なぜ中国がこうなってしまったのか?」ということを、嫌でも考えさせられている。

もちろん、その答えは「こうなってしまった」という明確な結果によって、すでに示されている。中国共産党による暴政と洗脳があって、そうなった。そのことを、人々が知らないわけがない。

「連動する邪気」で同時多発した暴走車

かつての経済発展の幻想が雲散霧消した今、中国の大地に残されたものは、あの群立する幽霊マンションが象徴するように、民衆にとって「生き地獄」のような恐るべき世界であった。

道徳や正義などの「正のエネルギー」は、そのほとんどが駆逐された。いくら日本や米国を「悪者」に仕立てて民衆の憎悪をそちらへ向けたとしても、もはや手遅れである。それほど中国の社会は、真っ黒な邪気に満ちているのだ。

以下の3つの事例も、それぞれ個別の無差別殺傷事件であるが、偶然ではなく、中国社会に充満した邪気が連動して引き起こされたものと見られる。

今月19日、北京、遼寧省、浙江省の3か所で暴走車が市民を次々とはねるという、事故ではない「事件」が同時多発的に起きた。これによる死傷者は、合計で数十人に上るとされている。

SNSには、それぞれの現場映像も投稿されている。そこには道端に倒れるバイクや市民の姿、地面に流れた大量の血の跡など、目を覆いたくなるほど凄惨な様子が映されている。

19日夜、北京市東城区の街中で、黒い乗用車が突然、自転車専用道に入り込み、歩行者やバイクなどを次々とはねた。

同日、遼寧省瀋陽市の街中でも同じく、車が自転車専用道に入り込んで、歩行者らを次々とはねた。この「事件」で少なくとも3人が死亡し、2人が負傷している。

さらに同じ19日、浙江省台州市の「台州職業技術学院」のキャンパス内でも、自動車が学生を無差別にはねる事件が起きた。ここでは少なくとも3人が死亡、16人が負傷したという。

(NTD新唐人テレビの報道番組。3月19日、少なくとも3か所で「暴走車」が人を無差別にはねる事件が起きている)

警察当局によると、いずれの地方の事件でも容疑者はすでに逮捕されており、いま動機などを詳しく調べている。

情報封鎖に乗り出す当局

中国では、これまでにも世論が注目するような「社会報復事件」などの凶悪事件が起きるたび、これを「個別のケース」や「特定の人に対する恨みやトラブル」というように、動機の背景にある社会問題や政府当局の関与を意図的に隠蔽し、事件による社会への影響を希薄化しようとしてきた。

今回起きたこれらの無差別殺傷事件について、やはり当局は「事故」として処理するとともに、いつものように情報封鎖に乗り出している。そのため、これらの事件による実際の死傷者数や犯人の真の動機については、明らかにされていない。

同日のうちに、このような「社会報復」と思われる凶悪事件が相次いだことで、ネット上では、これまでにない嘆きの声が広がっている。

「もう怖くて外を歩けない」「なぜこんな世の中になってしまったのか」といった深い悲しみのほか、「個人的な恨みがあるのなら、あなたに苦しみをもたらした人に復讐すればいいだろう」「一般市民を巻き込むな」「(公権力に立ち向かった)楊佳や張扣扣を見習え」といったコメントが圧倒的に多かった。

「両会」期間中の3月7日、江蘇省の地方政府施設が爆破され、同日、江蘇省の公安局の建物でも大規模な火災が発生した。この爆破については「袁剣虹」と名乗る人物による「犯行声明」がネットに出回っている。

「政府を爆破した男」は、ネット上では「勇者」扱いされた。いっぽう、子供たちを狙い、一般市民を巻き添えにする凶悪な社会報復事件を起こした者たちは「人間のクズ」と呼ばれ、唾棄されている。

中国社会は「爆発寸前の火薬庫」

米国在住の著名な人権活動家・界立建氏はNTD新唐人テレビの取材に対し、次のように話した。

「今の中国では、経済面だけでなく、さまざまな面で絶望している人が本当に多い。精神的に崩壊寸前の状態にある彼らは、政府や社会に対して自分の不満をぶちまけたいと考える。しかし、たとえ何があったとしても、罪のない市民を巻き込むような極端な方法で社会に報復するのは間違っている」

NTD新唐人テレビの取材に応じた中国民主党合同本部の執行長の界立建氏。(NTDの報道番組より)

時事評論家の李林一氏も、以下のように分析する。

「(中国)政府や社会に対して怨恨を抱いている人は多い。しかし、当局による厳しい安定維持で、不満や怨恨を吐き出すことができず、長期にわたって心に溜め込んできた結果、このような事件が起きたのではないか」

「これらの事件からもわかるように、今の中国社会は、すでに火薬庫のような状態になっている。そのため、今では外出して無事に家に戻れるかどうかも不確かな世の中になってしまった。今後このような状態が続けば、遅かれ早かれ中国では何か大きな事件が起こるだろう」

今回の事件で現場を封鎖し、安定維持に当たる警察。しかし彼らのする安定維持とは、ほとんど隠蔽の意味に近い。(SNS投稿動画よりスクリーンショット)
李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。