英海軍はおよそ90年にわたって、中国人を雇い艦艇内の洗濯業務に従事させる慣習があった。近日これを打ち破り、勤続39年の中国人職人を解雇した。秘密保持徹底のためだ。「我が国はどうか」ーー。松原仁衆院議員は政府に問うた。
英紙ザ・サンによれば、英国海軍が解雇したのは、家族が香港に居住する中国人の洗濯職人。中国共産党当局が香港にいる職人の家族を脅迫して、英国海軍の秘密情報を漏洩させる事態を危惧したためだ。
英海軍は1930年代より水兵の制服のアイロンがけやクロスの手入れを香港出身の中国人職人に任せてきた。一世紀近く続く伝統は、核の秘密を含む情報漏洩リスクを懸念する情報機関MI5の指摘により見直されることになった。
洗濯職人はネパール人に代えられているという。英海軍の広報官は「すべての民間人請負業者は、セキュリティー・クリアランス制度に基づき、適切なアクセス権の保持を保証する」と述べている。このほか、3人の中国人に対して空母乗艦を禁止した。情報安保への姿勢がうかがえる。
セキュリティー・クリアランス 日本の姿勢は?
我が国の姿勢はどうか。政府は答弁で「防衛省は一般競争入札で事業者や使用者に対し秘密保全に関する義務を課す条項を含む契約を締結」しており、不適当なものが契約を獲得することを防いでいるとした。
官公庁の庁舎における秘密保全は、実は以前から厳格だ。これについて実際の体験談を大紀元は聞いている。ある通信設備を担う機械工のAさんの話だ。
民間企業に勤務するAさん(50代)によれば、庁舎への立ち入りは他施設よりも厳しく、入場前には戸籍謄本の提出や指紋、静脈、虹彩(瞳の模様)の記録を提出していたという。このほか、私用の携帯電話を持ち込むことも許されなったと付け加えた。
「セキュリティの厳しさから、そういうところだ、というのは感じて。緊張感がありましたね」Aさんは語った。
日本では以前、外国勢力スパイによる機密文書漏えい発覚している。昭和42年、警視庁が検挙した外務省スパイ事件だ。在日本朝鮮人総聯合会傘下組織の幹部である北朝鮮工作員が外務省の事務官から秘密文書を入手したもので、日本における秘密情報の漏洩リスクを浮き彫りにした。
事件から半世紀以上経ったいま、政府は今年2月27日、特定の重要情報へのアクセスを国が信頼できると認めた個人に限定する「セキュリティー・クリアランス」制度の創設を閣議決定した。
サイバー攻撃やサプライチェーンの脆弱性など、日本の安全保障に重大な影響を及ぼす可能性がある情報の保護を目的としている。審査は事前に対象者本人の同意を得るものとし、家族関係や犯罪歴、経済状況などの詳細な調査が行われることになっている。
法案が成立すれば、日本は他のG7諸国と情報保全において足並みを揃え、経済安全保障上の重要情報を保護することが可能となる。尽力してきた高市早苗経済安保相は「これからが本番」と意気込みを示す。
「既に経済・技術の分野でも情報保全制度が定着している他のG7諸国やオーストラリア等との信頼関係が深化して、日本企業のビジネスチャンスが拡がることや、国際共同研究の機会が増えることを、大いに期待している」と高市氏はX(旧ツイッター)で指摘した。
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