米国の議会報告書によると、中国共産党政権は「世界で最も精巧かつ広範な」検閲システムを有し、自国民の発言を統制している。そしてその検閲は、過去10年間でますますグローバル化してきた。
米中経済・安全保障調査委員会(USCC)が20日に発表した報告書によると、中国共産党(以下、中共)は、自国の利益に有害とみなす意見やシナリオの拡散を世界中で抑圧することに膨大なリソースを投入し、「中共が好ましくないとみなす立場を表明する米国の民間企業や個人を罰すること、中国経済データへの米国からのアクセスを制限すること、米国社会に分断の種をまくことを目的とした偽情報キャンペーンを実施することなど、多方面にわたって推進してきた」
例えば、新疆ウイグル自治区やチベットにおける中共の人権侵害、あるいは台湾のようなセンシティブなトピックスに関する議論を制限するため、中国の検閲官は、海外のソーシャルメディアに無関係なコンテンツを頻繁に流し込んでいる。
米国テクノロジーによる支援
中共は、自らの政治的正統性を保持し、国民の行動をコントロールするために検閲を利用している。しかしその多くは、米国のテクノロジーと専門知識によるものだという。
同報告書によると、中共は歴史的に「オンライン検閲を構築し運用するために、米国から調達したハードウェア部品とソフトウェアに大きく依存していた」 。一例として、中国は2000年代初頭にシスコやシマンテックといった米国企業のルーター、ファイアウォール、アンチウイルス製品を使用していたとされ、これにより高度な検閲を行うことができたという。
研究者の指摘によると、「検閲装置は依然として米国からの輸入品、特にAIやビッグデータアプリケーションなどの新技術に依存」しており、AIを利用した 「世論誘導」ツールの多くも、GPU(General Processing Unit)やクラウドコンピューティングのインフラなど、米国から輸入された製品のコンポーネントに依存している」と同報告書はいう。
既に2019年の報告書でも、グーグルやIBMといったアメリカのハイテク大手が中国企業と協力して中共の検閲体制に貢献している可能性を示唆していた。 米国企業のなかには、中共の検閲を無意識のまま支援してしまうところもあるかもしれない。しかし多くの場合、「中国での外国企業は、中国のセキュリティ・サービスとのつながりを意図的に隠している」と同報告書は指摘。
そして習近平体制下の中共は、「検閲の範囲と厳格さを大幅に拡大し、特にインターネットのコンテンツに対する統制を強固にすることに重点を置いている」
中共は、あらゆる話題に絶対的な統制を行うが、党の権力保持を脅かさない限り、例えば地方官僚の汚職や不始末といったデリケートな問題についての限定的な議論は許容する柔軟なアプローチも採用している。そうすることで中国国民は不満を訴えることができる一方、中央当局の命令を「誤って」実行したとされる下級役人に責任を転嫁することができる。
新型コロナウイルスに関する中国国内での情報弾圧の強化は、海外にも戦慄を与えた。同報告書では、中共が2019年後半に武漢市から始まったコロナ禍にどのように対応したかを取り上げ、検閲強化の恐ろしい代償を説明した。
武漢の眼科医である李文良医師は、2019年12月に「SARSのような」肺炎を引き起こすウイルスについて警告を発しようとしたが、当局がパンデミックの深刻さを軽視しようとしたために地元警察から叱責され「噂を広めた」と非難された。
李博士は後にコロナで死亡した。 そして世界がウイルスの出現元を調査しようとしたとき、「中国は発表できるものを制限することで研究者を抑圧し、そして国内外のメディアプラットフォームに偽情報を氾濫させた」と指摘した。
バージニア州のシンクタンクExovera’s Center for Intelligence Research and Analysisが作成した報告書では、中共の検閲に対抗するためには、民間企業との協力関係を強化させ、米国の政策立案者向けに提言した。例えば「ボットネットを使用して、センシティブなトピックに関するオンライン上の会話を乗っ取り、アルゴリズムで操作するような『情報飽和』の防止に向けたツールの開発と普及」を支援することなどだ。
また中共の検閲に貢献した中国系企業について、その子会社やペーパーカンパニーを含む「公開勧告リスト」を発行するよう提案した。「そうすることで、米国を拠点とするテクノロジー企業のデューデリジェンスを大いに助け、中国の検閲体制を不用意に支援することを避けることができるであろう」
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