中共のダム計画に中止の請願をしたチベット人、百人以上が逮捕される=中国 四川

2024/02/27
更新: 2024/02/28

目を疑うような、陰惨な光景である。チベット仏教のラマ僧やチベット人たちが跪き、大声で泣きながら懇願するのに対して、うすら笑いを浮かべる中共の警察や当局者たち。

この光景が、いかに異常であるか。そして、人類が住む地球上にあってはならない、恐るべきことであるか。中共の罪深さは、日本にいる私たちの想像を遥かに超えるため、実感しにくいのも無理はない。

語弊を恐れずにいえば、キリスト教世界において、ローマ法王に土下座をさせ、その頭を泥靴で踏みつけているにも等しい。口にするのも憚られるような悪魔の所業であるが、それを平気でするのが中国共産党である。

半世紀を経て、再来した「文化大革命」

このほど、四川省で進められる当局のダム建設に反対して、連日のように抗議活動を行ってきた100人以上のチベット人(四川省在住のチベット人)が、現地警察に逮捕されたことがわかった。また、そのほかの情報として「拘束されたチベット人は、ラマ僧をふくめて1千人以上」というものもある。

問題のダムは、金沙江という、下流で長江につながる大河につくられようとしている。

このダム建設によって水底に沈む6つの寺院のなかには、貴重な古代の壁画が保存された千年以上の歴史をもつ古刹・汪堆寺(おうたいじ)も含まれる。

汪堆寺は、この場所が都市から離れた山間部であったため、文化大革命期における紅衛兵の攻撃をほとんど受けなかった。そのことが幸いして、およそ千年前の貴重な壁画や建物などが奇跡的に良好な状態で保存されている。

それらの貴重な文化遺産を、中国共産党がダム建設によって湖底に沈めることは、言わば、ユネスコ世界遺産である敦煌莫高窟の壁画や石窟群を重機で潰すことにも匹敵する「暴挙」と言うしかない。

タリバン政権は2001年2月、バーミヤンの仏教遺跡を爆破することを宣言し、同年3月にそれを実行した。その貴重な文化遺跡の破壊を、ついに世界は制止することができなかった。

それと同じく、人類の宝である貴重な歴史遺産が破壊されようとしている事実を、日本をふくむ世界は看過してしまうのだろうか。

この度の中共のダム建設にあたり、現地のラマ僧やチベット人たちが大声で泣きながら跪き、ひたすら懇願するのは、ただ単に自分たちの生活の場が奪われる窮状を訴えているのではない。

そこにあるのは、中共による恐るべき文化破壊と、天を激怒させるほどの神への冒涜である。

それはまさに半世紀の時を経て、かつての文化大革命(1966~1976)の紅衛兵に代わり、中共の黒服の警官が大量にやってきたようなものだろう。

だからこそ彼らは、政治的な抗議ではなく、大声で泣いて、土下座をして「なんとか思いとどまってください」という呼びかけをしているのだ。彼らが最も恐れるのは中共ではなく、中共の暴挙によって引き起こされる天や神仏の怒りだからである。

中共軍のチベット侵攻は、1950年代に始まる。以来、この70年間、チベット高原とその周辺地域に古くから住むチベット人、および彼らの信仰の中心であるチベット仏教の寺院は、残虐きわまる迫害を受けてきた。

中共は、数百万人はいる彼らを、55ある少数民族のひとつに組み入れ「チベット族(蔵族)」と呼んだ。しかしそれは、彼らが自称する民族名ではない。チベット語では「プーリー (bod rigs)」 と自称する。

これまでに、何人ものチベット僧が焼身自殺で抗議してきた。しかし、中共はそれを遥かにまさる残虐さで報復し、チベット人の自由と権利を奪ってきた。この度の中共のダム建設も、そうしたチベット侵略70年の流れのなかにおいて、俯瞰的に見る必要があるだろう。

なぜなら中共が進めるダム建設の目的は、ダムそのものの必要性だけではなく、チベット人を完全に屈服させ、中共中央への抵抗を諦めさせる「漬物石」としての意味もあるからだ。

「話し合いに誘って、一斉逮捕」の騙し討ち

SNS上には、ラマ僧やチベット人たちが、黒服の警察や当局者に対して、泣きながら跪き、ひたすら懇願する動画が複数流れたことで、いっそう物議を醸している。

抗議とはいっても、彼らがするのはデモやシュプレヒコールではなく、泣きながら土下座して懇願する「お願い」である。

そこには、暴力はもちろん、いかなる違法行為や反政府的な言動もない。70年にわたって中共に虐げられてきたチベット人にとって、これしか意思表示の方法がないとは、なんという不条理であろうか。

米政府系放送局のラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、連日のように抗議をし、逮捕されたチベット人は四川省のチベット族自治州、徳格県に位置する集落「汪布頂(ワンプディン)郷」の人々だという。

現地の金沙江(きんさこう)では、水力発電所のダム建設が計画されている。これにより、6つの寺院と2つの村がダム湖に沈められ、約2千人の村民が移転を余儀なくされることになる。

ここ最近で、最も多くの抗議者が集まったのは2月14日だった。その時は、300人以上が徳格県舎前に集結した。現地のチベット人によると、この時、中共の公安は放水銃や唐辛子スプレー、スタンガンなどを使って抗議する市民を鎮圧。その結果、負傷して入院した市民もいたという。

14日の抗議活動の後、現地当局は集落に通じる全ての主要道路を封鎖するとともに、村や寺院に対して、通信の遮断をふくむ厳しい制限を行った。

これまでに、チベット人僧侶や市民など、100人を超える抗議参加者が逮捕されているという。

チベット亡命政府の立場を代表する放送局「チベットの声」は今月20日、中共政府の当局者が集落「汪布頂郷」にある寺院「銀南寺」を訪れて、チベット僧たちに寺から退去するよう命令した、と伝えた。

チベット僧と地元のチベット人たちは跪いて、中共の当局者に対し「退去命令の執行を止めるよう」懇願したが拒否されたという。

その後(21日)政府当局者が取り壊しが予定されていた寺院を現地視察する際に、それら当局者の前に跪いて、ダム建設を中止するよう懇願する僧侶の姿を映した動画がSNSに出回った。

チベット人作家で米国在住のジャーナリストの丹珍(Tsering Kyi)氏は23日、自身のSNSに、夜間に撮影された動画を投稿した。

この動画のなかでも、多くのチベット人が跪き、泣きながら水力発電所の建設中止を求める様子が映っている。懇願するチベット人のそばには、中共警察のパトカーが待機しており、一斉逮捕の号令を待っていた。

丹珍氏によれば、「現地政府の役人は、汪堆寺の代表と村民代表に対して(当局者と)話し合うため来るように、と告げた。ところが、チベット人の代表がいざ話し合いの場に臨んだ途端、一斉に逮捕された」という。

「しかし当時、現地ではネットを切断されたため、寺や村民たちは自分たちの代表が逮捕されたことを知らなかった。警察は道路を封鎖し、村には監視員を付けて、民衆が移動することを禁じた」

「この時点でも、チベット人の僧侶たちは、警察も上からの命令を執行しているだけだと考え(警察の人たちに善意で)食事や水を提供していた。ところが次の日になったら、警察は突然、人々を逮捕し始めた」

今回、中共による「世界最大規模」の水力発電所建設が計画されている金沙江では、近年、川沿いの貯水池や発電所の周辺で、地滑りや地震が頻発している。

「天の怒り」が爆発寸前であることは、もはや言を俟たない。

(「現地政府の役人が寺や村民代表を騙して、一斉逮捕した」と訴えるチベット人作家で米国在住のジャーナリストの丹珍(Tsering Kyi)氏による投稿)

(ダム建設により、水の中に沈められようとするチベット寺院の紹介)

(ダム建設により、水の中に沈められようとするチベット寺院の紹介)

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。