能登半島地震を受けて「可能な限り急ぐべき4項目」、高市大臣

2024/02/22
更新: 2024/03/04

高市経済安全補償担当大臣は2月17日、自身のSNSチャンネルで、1月1日の能登半島地震を受けて、自身の所管事項の中で急がなければならない分野について、あらためて紹介した。

高市大臣は、自身が所管する宇宙政策・科学技術政策、そして経済安全保障に関して、可能な限り対応を急ぐべきだと決意を新たにしたとして、4つの項目をあげた。

1.SAR衛星

1つは夜間や悪天候の時にも被災状況を撮像できる「SAR衛星」で、高市大臣は「この機数を増やさなければならず、計画を進めている」と述べた。

SAR(Synthetic Aperture Radar/合成開口レーダー)とは、国土交通省国土地理院のウェブサイトによると、「飛翔体(人工衛星や飛行機など)が移動しながら電波を繰り返し送受信して、大きな開口を持ったアンテナと等価な画像が得られるように、人工的に『開口』を『合成』する技術」だと説明している。

レーダーは、アンテナから電波を発射し、観測する対象物に当たって反射された電波を観測する。反射された電波の強さから、対象物の大きさや表面の性質がわかる。 また、反射された電波が戻ってくるまでの時間を測定することで、対象物までのおおまかな距離も測定できる。

レーダーの分解能(どの程度まで細かい対象物を判別できるか)は、アンテナを大きくすればするほどよくなる。しかし、人工衛星などに搭載できるアンテナの大きさには限りがある。そこで、「合成開口レーダー」と呼ばれる技術が活躍することになる。

 

2.通信衛星コンステレーション

2つ目は、「通信衛星コンステレーション」高市大臣は「被災地では通信が途絶されて、大変な状況が長く続きましたよね。発災直後でありましたけれども、やはりこれは日本独自のものを早く構築しなければいけない」と述べた。

「通信衛星コンステレーション」は、イーロン・マスク氏のSpaceX社が提供するサービス「Starlink(スターリンク)」が有名。中・低軌道に多くの小型非静止衛星を打ち上げて、連携させて一体的に運用する。総務省のウェブサイトによると、「衛星コンステレーションでは、通信の遅延時間が短い中・低軌道を周回する非静止衛星を用いるため、世界全域を対象として、緊急時・平時を問わず、陸上・海上・航空機上で、高速大容量通信など多様なサービスの提供が可能であり、世界的に様々な衛星コンステレーションシステムが計画されている」という。

活用例としては、上記の高速大容量通信の他、リモートセンシング、軍事利用がある。リモートセンシングとは、遠く離れたところ(リモート)から、対象物の形や性質を触れずに測定する(センシング)技術。気候変動、環境汚染、災害監視、資源探査など多くの用途で利用できる。軍事利用としては、陸、海、空、そして宇宙という多層的な領域で網羅的な通信を可能にし、これにより、効率的かつ迅速な戦術が遂行可能になる。この能力によって、索敵能力の向上と味方の間のコミュニケーションが向上する。

3.日本製ドローン

3つ目は「日本製ドローン」高市大臣は「重い物資を積んだ状態でも長時間飛行が可能なドローンの開発がもっと早く出来ないかということで思いを申し上げました」と語った。

重い物資を積んだ状態でも長時間飛行が可能なドローン イメージ図(metamorworkspixta_75455360_M)

 

国土交通省では、令和4年12月から「インフラ管理、災害対応等に活用できる長時間飛行ドローンの実装化に参画する企業」の募集を行った。今年の2 月26 ~27 日にかけて、福島県ロボットテストフィールド浪江滑走路周辺地域にて、長時間連続飛行ドローンの実証実験第二弾を開催する予定だ。

4.偽情報対策

最後の4つ目は「偽情報」に対する対策だ。最近では、能登半島地震や台湾総統選挙でも「偽情報」が話題となった。高市大臣は偽情報の脅威について次のように述べた。「本当に残念なことにディスインフォメーションといわれるこの偽情報が、インターネット上に流布されて社会に影響を及ぼすような事例が増加していると思う。大規模な自然災害、戦争などの緊急時における偽情報は、人命に関わりますよね。例えば救助に行く場所の優先順位が変わったりする可能性もあります。それから偽情報によって株価が乱高下したり、またサプライチェーンが停止する、こういった国民生活や経済活動に大きな影響を及ぼす可能性もあります。また、選挙結果を左右する恐れもあります」

そして、日本政府が対応できることとして、高市大臣は次のように述べた。「現在も日本では企業やアカデミアにおいて、SNSのテキストデータや会話音声における感情を分析する技術や、AIが生成するフェイク顔映像を自動判定するプログラムの開発が進められています。またファクトチェックの推進や普及を行おうという民間団体も存在しています。ただこの偽情報対策については技術的に各国も苦労しており、米国の大手プラットフォーマーや国防総省、英国やフランス、イスラエルの各国のスタートアップも研究開発を行なっています。しかし今のところはまだ、文書や画像など、個別の情報に対する偽情報の分析にとどまっているようでございます。SNSやニュースの内容自体の信頼性を確認した上で、しっかり分析して統合的に対処を実施するというものはまだ存在していないと承知をしております。そこで経済安全保障推進法に基づくKプログラムで、偽情報の分析に係る技術を支援するべき重要技術といたしました」

Kプログラム

Kプログラムとは、経済安全保障推進会議及び統合イノベーション戦略推進会議の下、内閣府、文部科学省及び経済産業省が中心となって、府省横断的に、経済安全保障上重要な先端技術の研究開発を推進するものだ。

「Kプログラム」という呼び名は通称で、正式名称は、経済安全保障重要技術育成プログラム(英名:Key and Advanced Technology R&D through Cross Community Collaboration Program)という。

内閣府ウェブサイトのKプログラムのページには次のように紹介されている。「本プログラムは、中長期的に我が国が国際社会において確固たる地位を確保し続ける上で、不可欠な要素となる。先端的な重要技術について、科学技術の多義性を踏まえ、民生利用のみならず公的利用につながる研究開発及び、その成果の活用を推進するものです。具体的には、経済安全保障上の我が国のニーズを踏まえつつ、個別の技術の特性や技術成熟度等に応じて、適切な技術流出対策をとりながら、研究開発から技術実証までを迅速かつ柔軟に推進します」
 

若いころはHG/PGに明け暮れ、中年になると、アジア各国での日系工場の立て直しに実績有り。同時に小説をプロに習い、書き始める。 エポックタイムズ掲載:「UFOと老人」、「千代能比丘尼物語」、「時間を無くした男」 アマゾン出版:「南十字星の少女戦士」など。