中共賛美番組「春晩」のライブ配信中 コメント欄を埋め尽くしたのは「張新偉」の名前=中国

2024/02/17
更新: 2024/02/17

今月9日、河北省滄州市青県の「春晩」のライブ配信中、当局者にとっては全く想定外のことが発生した。

そのライブ配信のコメント欄が「張新偉」「正義」「不正」「殺人者に報いを」といった、不審死を遂げた青年・張新偉さんのために声を上げるユーザーからのコメントで埋め尽くされたのである。

「春晩」のコメント欄に並ぶ「張新偉」

張新偉さん(18歳)は江蘇省連雲港市で昨年12月9日に失踪。今年1月14日に、川のなかから謎だらけの水死体となって見つかった。地元の公安当局は、これを「自殺」と決めつけただけで、事件の真相を一切明らかにしていない。

「春晩(春節連歓晩会)」とは、旧暦の大晦日(2024年は2月9日)の夜から元旦にかけて行われる中国中央電視台(CCTV)の番組である。中国版の「NHK紅白歌合戦」と呼ばれるものだが、その内容や演出は、多分に中国共産党を美化し、宣伝する意図があからさまである。

(共産党賛美の「春晩」のライブ配信中、コメント欄は張新偉さん失踪致死事件の真相を求めるユーザーの声で埋めつくされた)

「なぜCCTVの春晩ではなく、河北省滄州市青県の春晩だったのか」という点に関しては、「CCTVの春晩ライブ配信ではコメントができなかったため、ここにした。みんなで世論を形成して、中共当局に張新偉事件について追究させたいんだ」と、一部のネットユーザーは明かしている。

実はこの時、河北省滄州市青県の「春晩」ライブ配信に限らず、配信画面でのコメント表示が制限されていない他の「春晩」のライブ配信でも同様に、張新偉さんの事件に関する真相究明を求める声が上がっていた。

しかし現在、中国版tiktok「抖音」では、張新偉の関連動画に対して制限し始めている模様。そのため、同事件について言及する際には、ネット検閲を回避するために、張新偉さんが生前に残した「春和景明」という言葉を使うネットユーザーも多い。

CCTV「春晩」のライブ配信中に上がる「張新偉のために声を上げる」コメント。(中国のネットより)

張新偉は「第二の胡鑫宇」か?

張新偉さんは江蘇省連雲港市で昨年12月9日に失踪し、今年1月14日に川のなかから謎だらけの水死体となって見つかった。

その際に家族は、遺体のそばへ近寄ることさえ許されなかったため、臓器などが抜き取られていたか否かは、確認できていない。

事件の後、張新偉さんの父親は連日のようにネットを通じて、真相究明と関係者の責任追及を求めていた。ところが父親の携帯電話は、自宅から「公安当局の結論に異議を唱える内容」のライブ配信を行っている最中に、家の中に押し入ってきた大勢の正体不明の男たち奪われている。

「地元当局が、何かを隠蔽するため、裏で動いているのではないか」。こうした現地当局への不信感とともに、張新偉さんの家族に連帯し、支援する輪が広がった。

先月24日、周辺地域から数千人の支援者が張新偉さんの家のある村の入口(警察によって封鎖中)に集結して、張新偉さんの父親への連帯を示した。張新偉さんの家のある村は、それから1か月近く経った今もなお封鎖状態にある。

一部の現地市民によると、中共当局は町のすべての村の村民全員に対して「張新偉は自ら川に飛び込んだ」とする、当局が主張する「事実」について認める署名をするよう強要していたという。

「口封じの金」を拒否した遺族

中国メディアの取材に応じた張新偉の祖父は、「誰かが150万元(約3100万円)の口止め料で、我われ遺族の口を塞ごうとしていた」と明かしている。家族は、この口止め料の受け取りを拒否したという。

多くの不可解な点が存在する張新偉事件に関して、民衆の間では「これは第二の胡鑫宇ではないか」といった「臓器狩り」を疑う声が広がっている。

胡鑫宇(こきんう)事件は、2022年10月14日に江西省鉛山県の胡鑫宇さん(当時15歳)が学校から理由もなく失踪し、翌年1月28日に学校近くの林のなかで変死体となって発見されたもの。

遺体の臓器が抜き取られていた可能性があるが、地元警察は「本人の意思による首吊り自殺」と断定している。

さらに警察当局は、強引に幕引きを図るため異例の記者会見まで開いたが、そうした隠蔽体質からして、かえって組織的な「臓器狩り」の可能性をふくむ殺人が疑われている。そうであれば、胡鑫宇さんは始めから狙われて拉致され、殺害されたことになる。

以来、中国では、失踪した若者が変死体で発見されるたびに「第二の胡鑫宇ではないか」との疑いがもたれるようになった。

ただし、この場合の「第二の胡鑫宇」とは、ひとつの「第二」ばかりでない。

今や中国全土に、その「第二の胡鑫宇」を疑われる事例が無数にある。しかし、多くの場合「本人の意思による自殺」で片づけられている。

画像(左)は2024年1月14日、江蘇省連雲港市で行方不明になっていた張新偉さんの遺体の引き揚げ現場。画像(右)は2024年1月19日、張新偉さんの父親によるライブ中継画面。この後、家の中に押し入った当局者によって、携帯電話が奪われた。(SNS投稿動画よりスクリーンショット)

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李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。