中国の小中学校では、冬休みが近づいている。中国の学校の冬休みは、旧正月の期間もふくまれるので、30数日ほどになる。
そのようななか、ある保護者がネット上で「うちの子供は、冬休みの宿題として、18冊ものドリル(問題集)が課された」と悲鳴を上げた。
確かに、親も唖然するほど膨大な宿題の量である。1冊でも相当な厚さがあるため「問題を考えて解く時間を計算に入れず、ただ答えを写すだけでも半月はかかる」という。
関連トピックスは、中国の大手検索サイト百度(バイドゥ) のホットリサーチ(1月20日)入りし、熱い議論を引き起こした。
そこには「子供の宿題が山ほどあるのは、よくあることだ」や「出された宿題を全てこなすなら、子供は遊ぶ時間がほとんどない」という声だけではない。
「普段から、子供たちは緊張した学習環境におかれている。せっかくの冬休みぐらい、リラックスしたり、体を動かす良い機会であるべきだ。なのに、宿題ばかりとは」といった、保護者へ共感する声が殺到した。
なかには、学校が宿題を大量に出すのは「参考書やドリルなどを多く売るためだ」と指摘する声もあった。
さらには、子供たちをここまで勉強漬けにするのは「彼らの自由な時間を奪って、中共の政治体制に対する批判精神をもたせないためだ」とも言われている。
中国の学生(小・中・高校の生徒)の宿題の量が「膨大である」ことは、世界的にも有名なことである。
山積みの宿題。限界まで削られる睡眠時間。成績だけを重視する極端な風潮。さらには「一発勝負」の大学入試による受験戦争の激化などにより、中国の学生が過剰なストレスとプレッシャーを受けていることは、以前から大きな問題とされてきた。
そして昨今の中国には、新たに加わった「深刻な問題」がある。
そのようにして、青春の全てをかけて受験勉強に身を削り、たとえ一流大学、いや中国で最高峰とされる重点大学(北京大、清華大、復旦大など)を卒業したとしても、それに見合うだけの就職先が全くないことだ。
たとえ高望みをしなくても、一般の企業でさえ就職は難しい。1人の採用枠に、数百人から数千人が殺到することも珍しくないのが、経済低迷が続く中国の現状である。
そのため、大学や大学院を卒業した高学歴者が、フードデリバリーのアルバイトでぎりぎりの生活をしている。
教育の本来の目的は「人間を健全に育てること」であり、学歴至上主義や知識のつめこみではない。
実質的に「若者の2人に1人が失業」という昨今の現実のなかで、宿題を山のように出す学校教育に、果たして何の意味があるのか。中国共産党体制下における現行教育の弊害と問題点が、今後さらに露呈することになるだろう。
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