プレミアム報道 緊張激化から1年、米中トップが11月に会談。中国共産党は約束を守れるか。

【プレミアム報道】「自由と全体主義の対決」専門家が米中会談を振り返る(上)

2023/12/29
更新: 2024/01/03

フェンタニルの取り締まり、軍事対話の再開、首脳間のホットライン設置。米国のジョー・バイデン大統領は、周到に準備された11月の米中会談の終了時に「重要な進展があった」と称賛した。しかし、中国共産党政権は約束を守るのだろうか。

実際の結果は、中共政府の変化への意欲に大きく左右される。中国共産党がこれまでやってきたことを踏まえると、非対立的なアプローチを主張するバイデン政権は慎重だ。

バイデン大統領は、習近平とサンフランシスコのフィロリ邸を散策した直後、記者団にこう語った。「古い格言が言うように『信頼せよ、されど確認せよ』というのが私の立場だ」

11月21日、フェンタニルの流出を抑制するために中国がとった措置について、バイデン大統領は再度「ただ信頼するだけではだめだ。確認しなければ。それが命を救う」と述べた。

バイデン氏が2度引用したこのロシアのことわざは、ロナルド・レーガン大統領が冷戦時代にソ連とのやり取りの指針として引用したことで有名になった。

しかし、トランプ政権で中国政策顧問を務めたマイルズ・ユー氏のような中国ウォッチャーからすれば、その程度の警戒心では全然足りないという。 

「前提が信頼から始まるべきではない」と彼はエポックタイムズに語った。

バイデン大統領が抱く「大きな疑念」は80%正しいが、1940年代以来、中国共産党が米国の指導者の信頼を裏切ってきたことを鑑みれば、「信頼せず、確認せよ」がより現実的だとユー氏は指摘した。 

「我々は当然、中国は協定を守らないという前提で中国にアプローチすべきであり、そんなことはないと証明するのは中国の義務だ。確認とはつまり、中国がお決まりの協定違反を続けるかどうかの確認だ」

2023年11月15日、カリフォルニア州ウッドサイドで開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で、中国共産党トップと会談した米国のジョー・バイデン大統領。1年ぶりの会談となった。 (BRENDAN SMIALOWSKI/AFP via Getty Images)

共和党議員の中には、もっと露骨な発言をする者もいる。

リック・スコット上院議員(テキサス州選出)は会談後、「私は習近平のどの発言も信じない。ジョー・バイデンを含め、米国人は誰もそれを信じてはならない」とエポックタイムズにはっきり語った。「行動は言葉よりも雄弁だ。中共は我々の敵となることを選んだ。それを行動で語った」

ドン・ベーコン議員(ネブラスカ州選出)も同様に、「(米国は)目を見開いて臨むべきだ」と警告した。

「彼らは全体主義政権なので、真実かどうかに関係なく言いたいことは何でも言うし、それが彼らのモラルに反することもない」とエポックタイムの姉妹メディアNTDに語った。

自由と全体主義の対決

バイデン政権は米中関係を「熾烈な競争関係」と定義し、軍事、外交、経済において競争しつつ、共通の利益を推進していると特徴付けている。マイルズ・ユー氏によれば、より重要なのは2つの統治形態の違いだが、それはあまり語られないという。

「これは自由と全体主義の対決だ。今、中国との対話において、そのことが欠けている。バイデン政権内には、少なくともイデオロギー的な側面について暗黙の了解があった」

11月15日、バイデン大統領はブリーフィングルームを去る前に、習近平を「独裁者」と呼んだ以前の発言を固持することを認めた。

2023年11月15日、カリフォルニア州ウッドサイドで開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)で中国共産党トップと会談後、記者会見に臨む米国のジョー・バイデン大統領。 (BRENDAN SMIALOWSKI/AFP via Getty Images)

バイデン氏は「ほら見ろ。彼は独裁者だ。彼が国を動かしている。その国は私たちとはまったく異なる統治形態に基づく共産主義国だ」と発言した。

しかし、対中戦略としては、認識を持つだけではやや物足りないとユー氏は言う。

「それは開かれた外交の一環であるべきだ。どうにかして中国と経済的・文化的に関わろうと考えたところで、実際にはありえない。なにしろ、米国人が個人レベルで中国と関わることを、中国政権が全力で阻止している」

「それらが全てイデオロギーに起因するという認識の有無は関係ない。国家の最高意思決定機関である中国共産党政治局が政治アジェンダだけでなく経済アジェンダをも決定しているのは、イデオロギーが理由だ」

「イデオロギーや政治体制について話すことを恥ずかしがる必要はない段階に達したと思う。中国国内で語られるのはそればかりだ。米国との交流や関与は、根本的にはイデオロギー対立の問題だ」

2023年3月7日、北京で開かれた第14回全国人民代表大会の記者会見に臨む中国の秦剛外相。(Lintao Zhang/Getty Images)

中共政権が直面する問題

アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議は、習近平にとって6年ぶりの訪米となったが、中国国内で勃発する一連の危機は放置された。

数十年にわたり中国の経済成長を支えてきた不動産セクターが崩壊の危機に瀕している。また、中共が最後にデータを発表した8月時点で、中国の若者の5人に1人以上が失業していた。

さらに、洪水、干ばつ、その他の自然災害によって深刻化する食糧不足に加え、中国は何兆ドルもの地方政府の負債、労働力の高齢化、資本逃避を加速させる政治的不確実性に直面している。

『やがて中国の崩壊が始まる』の著者ゴードン・チャン氏は、「習近平が米国にやってきて仲直りし、中国が5年間にわたる敵対的なプロパガンダを一瞬で止めたことは実に衝撃的だ。とはいえ、彼らは私たちが好きなのではない。重要なのは、中共が弱っていることだろう」とエポックタイムズに語った。

「APEC首脳会議に出席し、バイデン大統領と会談したのは、中共による政権維持のための必死の努力だ」とチャン氏は述べた。サミット期間中、中共の国営メディアは突然、長年にわたる敵対的なレトリックを捨て、「新時代の米中人民友好」という見出しの下、第二次世界大戦で対日戦を助けた米国人パイロットを称える記事を掲載した。

2023年8月19日、北京の就職フェアに参加する人々。若者の失業率が急上昇する中、何百万人もの新卒者が中国の就職市場に参入している。(JADE GAO/AFP via Getty Images)

二国間協議に先立ち、中国は数百万トンの米国産大豆をサプライズで購入した。ここ数ヶ月で最大の購入量だった。

「彼らは生き残るために必要と思うことなら何でもやる。やけくそになっている」とチャン氏は述べた。

バイデン政権は、交渉の席での双方の立場を認識していることを明確化した。二国間会談の前日に行われた背景説明の電話会議では、政権高官が「高い自信をもってこの会談に臨んでいる」と述べた。

チャン氏は「中国は現実的な課題に直面していると思う。秘密はない」と述べた。

中共政府が自ら進んで手を引いたことには驚かないが、彼らが交渉の責任を果たせるかどうかについては楽観視していないとチャン氏は述べた。

「彼らが約束を守るのは、そうせざるを得ない場合だけだ。厳しい結果を課すことによってのみ、中共は行動を慎む理由を見出す」

Eva Fu
エポックタイムズのライター。ニューヨークを拠点に、米国政治、米中関係、信教の自由、人権問題について執筆を行う。