大白から隔離施設まで 中国だけに再来する「ゼロコロナの悪夢」

2023/12/03
更新: 2023/12/03

中国各地で今、発熱や肺炎をともなう呼吸器系の感染症が、まさしく爆発的に流行している。

中国共産党が発動した「ゼロコロナ(清零)政策」は、実質的に2022年12月7日まで約3年間にわたって続けられた政策であるが、あまりにも無謀で強制的なその隔離政策は、中国国民に多大な苦難と損失をもたらした。

結論を先に言えば、疫病は「ゼロ」にはならず、いっそう拡大して今日の大流行を招いている。

よみがえる「忌まわしい記憶」

そもそも目に見えぬウイルスに対して、新型コロナウイルス(中共ウイルス)感染症をゼロにせよ、という「上からの命令」によって進められたこの政策が、どれほど有効であったのか。

死亡診断書に記載する病名を他の病名にすり替えて、数字を「ゼロ」にすることはできるだろう。しかしそれをしても、すさまじい疫病を抑制することには全くつながらなかった。

本当の数字を中共当局は一切公表していないが、解約された携帯電話の膨大な数や火葬場へ向かう霊柩車の長蛇の列が、恐るべき実情を側面から伝えている。ゼロコロナの3年間から現在に至るまで、中国は確実に人口が激減し、今も減りつつあるのだ。

まもなく2023年を終えようとする今、まさに「津波のようだ」と形容されるほどの疫病の大波が、世界のなかで、なぜか中国だけに襲いかかっている。

それに呼応して、ゼロコロナ時代を代表する「白服の防疫要員(大白、ダーバイ)が返ってきた」「上海の空港でPCR検査が再開された」「各地で健康コードにログインできるようになった」「方艙医院がまた使われ始めた」などといった、かつての感染症対策が復活したという情報が沸き起こった。

これらはまさに、3年間にわたり中国人の脳裏に焼き付いた「ゼロコロナ」の忌まわしい記憶が、悪夢となってよみがえってきたことを意味している。

こうした、かつての感染対策の数々が再開されたことは、現在、中国における感染症流行の状況が非常に深刻であることを物語っており、民衆はパニックを起こしているといっても過言ではない。

病院は「医療崩壊」の寸前

11月以降、北京、天津、大連、上海、杭州などの各地の病院は、あふれる患者でごった返しの状態になった。一部の病院では「急診が24時間以上待ち」など、すでに医療崩壊が目前にあると言ってもよい状況だ。

とくに子供の患者が爆発している。肺が重度の炎症を起こし、レントゲンに白く映る「白肺(バイフェイ)」にまでなった児童があふれた。保護者が必死の思いで我が子を病院へ連れて行っても、すぐには診てもらえない。数時間から、なんと数日も待たされるという異常事態のなかで、子供の病状はますます悪化する一方だ。

最近では、多くの病院の産婦人科や整形外科の医師までもが小児科や呼吸器科の支援に駆り出されていると明かす情報がある。大量の医療従事者もすでに感染しているが、それでも勤務を余儀なくされている。

今回の感染症は中国全土に拡大しているが、最も医療条件の整っているといわれる北京での感染被害が最も深刻だ。

そのようななか、北京の一部の病院では、先月22日より、かつて中共ウイルス(新型コロナ)の爆発的感染が発生した際に作られた隔離施設「方艙医院」を、臨時の点滴室として再度稼働させたことがわかった。

また、先月24日、河北省三河市の学校内で殺菌消毒作業を行う白い防護服を着た防疫要員「大白(ダーバイ)」を捉えた動画がSNSに流出した。

続いて今月1日、小鵬汽車の共同創業者である何小鵬CEOは「上海経由で帰国した際に、飛行機を降りたとたん、PCR検査を求められた」と自身のSNSで明かした。

この件をめぐり、実際に検査されたのは乗客全員であったが、当局は「(全員ではない)抜き取り検査だった」と回答している。上海の空港でPCR検査が行われていたことを暴露した何小鵬氏のSNS投稿は、今では削除されている。

いっぽう今月1日、長らく姿を消していたスマホ画面の「健康コード」が各地で復活することを示す画像がネットに出回っている。河南省の官製メディア「頂端新聞」は、今年2月16日にアプリストアから消えた広東省の健康コードが再度リリースされていると報じている。

このスマホ画面の「健康コード」は、当局が操作して意図的に「陽性」にすることも含めて、人々の行動を抑制する「首輪」のようなものでもある。

こうした忌まわしい防疫措置の復活は、公式発表よりもはるかに深刻な中国での感染症流行の実情を物語っている。

 

画像は左から、広東省、四川省、陝西省の健康コード。(中国のSNSより)

 

「新型コロナを隠蔽せよ」

北京市CDC(疾病予防管理センター)の公式サイトは11月30日、11月20日から26日の北京市内の感染症が先週の2倍に当たる7.2万件以上発生したことや、現在北京における感染症のトップ2はインフルエンザと「新型コロナ」だと明かした。

12月2日、中国疾病予防管理センター(CCDC)の免疫計画首席専門家の王華慶氏は記者会見で、「15~59歳の国民の間で流行っているのはインフルエンザウイルス、ライノウイルス、新型コロナだ」と話している。

早くも11月10日の時点で、中共当局御用達の感染症研究専門家の鍾南山氏は、会議の席で「11月から来年1月まで、新型コロナウイルス感染の流行がピークに達するだろう」と公言していた。

もとより隠蔽体質の中共当局である以上、その公表データは信用できるものではない。

それでも、北京で最も流行っている感染症のなかに「新型コロナが含まれている」ことを、控えめながらも当局が認める段階に入ったことは確かである。「もはや隠しきれなくなったか」。そう分析する声が上がっている。

先月26日、中共中央と関係をもつある人物は、エポックタイムズの記者に対して「中国共産党の党首(習近平)が、深刻化する疫病流行の実情を報道しないよう指示した」と明かした。

さらに「(この疫病を)新型コロナと呼ばず、インフルエンザや他の名称で呼ぶこと。さらに、外国人が中国に来なくならないよう、外国メディアによる取材を許さない」という指示もあった。

そのため、多くの病院で行われている検査項目には、なんと「新型コロナの項目がない」のである。

「漢方の小児科外来」の新設つづく

中共の公式メディアは、ほとんど新型コロナに関する報道はしていない。そのようななか「自分で検査した結果、新型コロナ陽性だった」と明かすネットユーザーも少なくない。

中国の大きな病院は、今日では西医(西洋医学)が主流ではあるが、同じ病院のなかに中医(漢方医学)の部門もある。西医と中医、それぞれの特性を生かして治療に当たるのが、中国における医療の伝統的な考え方である。

感染症が再拡大するなかで、八方塞がりの中共当局は「小児肺炎に対する中医薬(漢方薬)の有効性を評価する」と公表した。それに呼応するかたちで北京では、北京中医薬医院や同仁医院を含む多くの病院で「漢方の小児科外来」の新設が続いている。

実は、中共による3年にわたる「ゼロコロナ政策」の間に、少なくとも一度は「中医薬による感染症治療」を政治的任務としたことがある。

しかし、各地から「漢方薬は効果がない」とする指摘が多く寄せられた。そのようななか、当局が推薦する漢方薬「連花清瘟」の背後にいる中共の特権家族だけは、これを機会に大儲けしたという背景がある。

このたびの「漢方の小児科外来の新設」が、果たして現状緩和にどれほど有効であるか。重症の我が子をかかえて藁をもつかむ思いである保護者から、高額な費用だけを取って、その期待を裏切ることになるのか。

無数の幼い命が危機に瀕するなか、感染症をめぐる中国の状況は予断を許さない。

 

中医薬「連花清瘟顆粒」。(黃小堂/大紀元)
李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。