無言の抗議を示した「白紙革命」から1年 中共当局は安定維持に躍起

2023/11/27
更新: 2023/11/27

何も書いていない「白い紙」を手にして、広場や街頭に立つ一般市民や学生たち。声を出さず、スローガンの文字も掲げていなかったが、彼らの心は一つであった。

それがいつしか「白紙革命」と呼ばれる大衆運動に発展した。この「白紙革命(白紙運動)」は昨年11月26日から12月頃までの約1か月間、中国各地で中国共産党のゼロコロナ政策を批判する一連の抗議運動として始まった。

その「白紙革命」から1周年を迎えようとしている。警戒を強める中共当局は、国内外で安定維持の強化に躍起になっている。

ことの発端は「ウルムチの悲劇」

いま中国国内では強力なネット検閲を行い、「白紙革命1周年」を記念する活動や発言を厳しく禁じている。いっぽう、国外に対しては、海外にいる中国人留学生が「白紙革命」関連のイベントに参加しないよう、彼らの中国国内にいる家族を「人質」に取り、脅迫や圧力をかけている。

「白紙革命」の発端となったのは、昨年11月24日、新疆ウイグル自治区のウルムチ市内で起きた集合住宅の大規模火災であった。

当時はまだ、中共当局による「ゼロコロナ(清零)政策」が続いていた。そのため、火災が起きた集合住宅は周囲が封鎖されており、消防車が火災現場に近づけず、放水も全く届かなかった。

この火災による死者数は、当局発表では「10人」であるが、その数字を信用する市民はいない。閉ざされた鉄扉の向こう側で猛火に追われた住民が「開けて!」絶叫するなか、子供をふくむ44人が「生きながら焼け死んだ」というのが一般に伝わっている当時の状況である。

昨年、南京の大学生たちが、ウルムチ市で発生した火災の犠牲者を追悼するために集まった「南京伝媒学院」では、1年後の今、警察による厳戒態勢が敷かれた。

その他の各地でも「白紙運動への参加歴がある学生」が学校から監視されたり、警察が家に訪れるなどしている。また昨年、大勢の学生が集まって白い紙を掲げた広場では、今年のこの時期「部外者は立ち入り禁止」とされた。

ネット検閲で「白紙革命」は禁句に

現在、中国のネットでは厳しい検閲が敷かれており、「白紙革命」に関連するワードは検索することができない。そのためか、これまでのところ、中国各地では白紙革命関連の記念イベントは見られていない。

中共当局は、国内のみならず、海外にいる中国人留学生の口まで封じようとしている。例えば、ツイッターアカウント「清絲老師談治國理政(邦訳:清絲先生は国政運営を語る)」の場合はこうだ。

彼は「ロンドンの中共大使館前で開催予定の白紙革命1周年記念イベントへの参加」をツイッターに投稿した。その後、中共の「国保」は、この英国留学中の中国人学生の身元を突き止め、国内にいる両親に対して「お前の子供を、行かせるな」と圧力をかけた。

なお「国保」とは、中共の「公安局国内安全保衛隊」の略であり、全国の公安体制に組み込まれている「秘密組織」の一つである。

「国保」は、中共政府に対して異見をもつ人士のほか、人権派弁護士や民主活動家を監視、尾行、弾圧、不当拘束するのがその任務である。今ではその国保がさらに凶暴さを増し、対象となる人物に狙いをつけ、暴行して死に至らしめる集団にさえなっている。

「清絲先生」が公開した録音のなかには、国外(中国以外の国)での白紙運動を記念するイベントに参加しないよう警告する南京「国保」の音声が収録されていた。

国保の管轄範囲が国外まで伸びていることについて「清絲先生」は、これは明らかな脅迫だと反発し「私がどんな法律を犯したというのか」と問うた。すると相手の国保は、こう答えた。

「お前は英国へ留学しているだけで、国籍はまだ中国だ。だからお前が国外でしたことが、中国と関係ないとは言えないのだ」

中国にいる父親からは、何度も「国外でのイベント参加をやめるよう」求められた。両親ともパトカーへ乗せられたこともあると聞いて、ついに「清絲先生」は英国でのイベント参加を断念せざるを得なくなった。

「中共は、必ず倒れる」

いっぽう「白紙運動」の後に結成されたグループ「中国反賊(China Deviants)」は、多くの団体と協力して、英国のロンドンをはじめとするヨーロッパ各地で「白紙革命」と関連する芸術展を計画している。

同グループの主催者は「ヨーロッパ大陸の各都市を結ぶ人権ロードを作りたい。『白い紙』というシンボルを強化して、中国共産党政権に『No』を突きつける若い世代の決意を示したい」と話している。

米ニューヨーク市では今月25日、中国の民主化を訴える団体が、寒さのなか、同市の庁舎近くで「白紙革命1周年」を記念するイベントを開催した。

「この1年の間に、多くの中国人が逮捕され、投獄されたり、精神病院送りにされたりした。あるいは、そのまま行方不明になった人もいる。中国の国内には、多くの(白紙革命への)参加者が閉じ込められている。そのようななか、私は幸運にもあの国から脱出することができた。しかし私は、今でも本当に苦しい」

そう語るのは、当時の「白紙革命」の参加者だった張俊傑さんである。張さんは1年前、「白紙革命」に参加したことで中共警察から繰り返し「精神病院」に送られるなど、度重なる迫害を受けてきた。その後、幸いニュージーランドへ亡命できた張俊傑さんは、今こう話す。

「多くの不正な行いをすれば必ず自滅する、という言葉にもあるように、中共は遅かれ早かれ、必ず倒れるだろう」

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。