【分析】転換点迎える東アジア情勢 束縛脱した日本が果たすべき主導的役割

2023/11/23
更新: 2023/11/24

東アジア情勢の緊迫感が増すなか、日本は歴史的な転換点を迎えている。「AUKUS」への加盟検討や地域の同志国への防衛装備移転など、「平和憲法」の束縛を脱しつつある。

安倍晋三元首相が始めた大改革は、今も続いている。中国共産党の脅威に対する国際的な認識が広がるなか、専門家は、今こそ日本が重要な役割を果たすべき時だと指摘する。

11月10日から20日にかけて、陸・海・空の自衛隊員およそ3万人が米軍のおよそ1万人とともに全国各地で大規模演習を行った。台湾有事を見据えて、日本最西端の与那国島でも演習が行われた。離島防衛の専門部隊である陸上自衛隊水陸機動団司令官の梨木信吾陸将補は、東アジアで軍事活動が活発化するなか、日本を取り巻く安全保障環境は一段と厳しくなっていると述べた。

岸田首相は11月11日に行われた航空自衛隊の観閲式に出席し、「日本は戦後もっとも厳しく複雑な安全保障環境のただ中にある。こうした難局を乗り切り、国民の命と安全、国の平和と繁栄を保つため、政府は、昨年末、新たな国家戦略である3文書を策定した」と発言し、目下の厳しい情勢に対する認識を明らかにした。

自民党の麻生太郎副総裁は豪州訪問期間中、米英豪からなる安全保障枠組み「AUKUS」に加盟する意欲を示した。日本(Japan)が加われば「JAUKUS」になるとし、同志国が団結して中国共産党の脅威に対抗していくべきだと語った。

麻生氏は、インド太平洋地域や台湾海峡における中国共産党の脅威に対処することこそAUKUSの存在意義だと述べた。中共が台湾本島に対して直ちに軍事侵攻を行う可能性は低いものの、中国本土に近い金門島や馬祖島を占拠する可能性は軽視できないと指摘した。

中共が台湾の離島を占拠した場合、日本、米国、豪州が断固たる姿勢を取ることができなければ、「次は台湾本島に狙いを定めたとしてもおかしくない」と指摘。中共の武力による威嚇を前に、日米豪は結束を強めなければならないと述べた。

アジアの強国・日本の役割

中国共産党は10数年来、東シナ海南シナ海、台湾海峡での軍事行動を活発化させ、地域の情勢を緊迫化させてきた。これに対応すべく、日本は安全保障戦略を根本から転換した。

2015年4月、日本は「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」を改定し、従来までの地域的な同盟からグローバルな同盟へとグレードアップさせた。同年には安保関連法が成立、集団的自衛権の行使が可能となった。

2022年には、国の安全保障政策に関する防衛三文書(国家安全保障戦略、防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画)を改定し、防衛力を5年以内に抜本的に強化する方針を定めた。「敵基地攻撃能力(反撃能力)」を獲得した自衛隊の活動範囲は大幅に拡大し、地域の安全保障に積極的に関与している。台湾海峡や南シナ海の平和と安定を維持する上でも、重要な役割を果たしている。

台湾の軍事専門家で、シンクタンク「国家政策研究基金会」で副研究員を務める李正修氏は大紀元の取材に対し、「日本は常に中国(中共)の軍事行動に対して高い警戒心を保っており、特に東シナ海、尖閣諸島周辺、台湾海峡、南シナ海に注目している。近年、日本は平和憲法の制約を徐々に突破し、地域の安全保障問題に積極的にコミットしている」と述べた。

近年、中共指導部の野心はますます明らかになっている。こうしたなか、日本が戦後の憲法による制約に縛られ続ければ、日米安保の先行きは暗いと李正修氏は指摘する。

「日本は優れた部隊と先進技術を持っているため、中国(中共)と対抗することができる。米国なども、日本がインド太平洋地域で積極的な役割を果たすことを歓迎するだろう」

反撃能力の要として、日本はスタンドオフミサイルの開発を進めている。11月17日、米国務省は日本にトマホーク巡航ミサイルを400発売却することを承認した。

売却の理由について、国務省は、敵の射程圏外から攻撃する「スタンド・オフ防衛能力」を持つ巡航ミサイルを日本に提供することで、脅威に対処する能力を強化する、と説明した。

日米間で新兵器を共同開発する計画も持ち上がった。8月18日には岸田文雄首相がキャンプ・デービッドでバイデン大統領と会談し、中国やロシア、北朝鮮が開発を進める極超音速兵器を迎撃する新型ミサイルを共同開発することで合意した。

防衛省は4月、射程約1,000キロメートルの潜水艦発射型長距離ミサイルの開発を発表した。2023年度から開発を始め、2027年度末の完成を目指す。さらに、2035年までに射程3,000キロメートルの極超音速ミサイルを開発し、潜水艦に搭載する計画もある。これらのミサイルを日本海から発射すれば、北京を含む中国の主要都市や重要な軍事施設を射程圏内に納めることができる。

台湾の軍事評論家である亓樂義氏は大紀元の取材に対し、「日米安保の枠組みにおいて、日本は今後ますます重要な役割を担うだろう。これは米国も望むところだ。なぜなら、日本には高い防衛力と財力があるからだ」と述べた。

亓氏は直近の動向を分析し、「米国は今後、第一線を退き、インド太平洋地域の調整役となるだろう。インド太平洋地域、特に西太平洋地域において、日本は重要な役割を担っていくだろう。これは大きな趨勢だ」と述べた。

南シナ海の緊張が高まる中、日本の岸田文雄首相は、11月3日と4日にフィリピンを訪問し、ボンボン・マルコス大統領と会談した。両国は円滑化協定(RAA)の交渉を開始することに合意した。日本はフィリピンに巡視艦と警戒監視用のレーダーを提供することに同意した。これは、4月に日本が設立した「政府安全保障能力強化支援(OSA)」の新しい枠組みのもとでの最初の協力プロジェクトである。

OSAの枠組みに基づき、日本は来年、インドネシア、ベトナム、モンゴルなど6カ国に防衛装備を無償提供する予定だ。

次世代戦闘機と防衛装備輸出

軍事評論家の夏洛山氏は大紀元の取材に対し、インド太平洋地域や台湾海峡は今や自由主義諸国が中国共産党と対峙する最前線になっていると指摘した。世界情勢の帰趨を決める対決に際し、技術力と財力を持つ日本は新たな道を切り開いていると評価した。

20日夜、日本とイギリス、イタリアの防衛相はテレビ会談を行い、共同開発を進めている次世代戦闘機について議論した。3カ国は、開発の司令塔となる組織を来年度中に設立する方向で調整を進めることを確認した。

戦闘機は2035年の配備を計画している。来月には東京で防衛相会談を開き、組織の設置に合意する見通しだ。日本政府はおよそ40億円の資金を機関運営のために拠出する予定。

第6世代戦闘機の開発により、日本の防衛産業を活性化することも期待されている。戦闘機の輸出に向けて、「防衛装備移転三原則」の改正も急がれている。

前出の夏洛山氏は、中国共産党の脅威に直面して、日本は防衛装備開発における自己規制から解き放たれたと述べた。日本社会には依然として防衛力増強に対する反対意見が存在するものの、分断は段々と縮小しつつあると指摘した。

寧芯
趙彬