相次ぐ「不都合な経済データ」の公表停止 借金の返済不能者が多すぎるからか?=中国

2023/11/20
更新: 2023/11/20

中国経済の衰退が加速するなか、若者の失業率の公表が停止されたように、発表することが「当局にとって不都合な経済データ」について、その更新が相次いで停止されている。

若者の失業率に続いて公表が停止されたのは、中国語で「失信被執行人」と呼ばれる対象、つまり犯罪や借金返済などの債務不履行によって社会的信用を失った者に対してペナルティとして冠せられる「信用失墜者」である。その人数の公表が、ストップされたというのだ。

2023年11月6日以降、中国の最高裁「最高人民法院」の「中国執行信息公開網」が公表してきた「信用失墜者リスト」が今月6日の849万6435人を最後に、その数字の更新を停止した。

 

「中国執行信息公開網」よりスクリーンショット。

 

中国メディアによると、以前には、信用失墜者の人数はおよそ毎日約2千人ずつ増えていた。しかし最近では、毎日の増加人数は約3千人に増えていたという。その背景には、中国国内で借金の返済不能者が急増している実態があるとみられる。

今月6日の時点で、信用失墜者数は累計で約850万人となっていた。ただし、このリストに計上される信用失墜者の数は、実際の借金滞納者のうち、ごく一部に過ぎないことが指摘されている。

今年6月、金融系セルフメディアが調べたところ、司法データからして中国では「失信被執行人(信用失墜者)」が毎日1万人以上のペースで増えており、すでに累計で2600万人を超えていることがわかった、という。

また、中国の中央銀行である中国人民銀行の内部文書によると、社会信用システムに借金返済の延滞記録がある人は3.7億人に上る。なかでも、6か月以上の延滞により「ブラックリスト入り」した人数は、8623万人に達している。

当局による信用失墜者数の公表停止をめぐり、ネット上では「(不都合な)数字の更新を停止した。これはまさに、爆発的に人数が増えていることを意味している」といった、現実味のある皮肉コメントが殺到した。

それに関連してか、北京における中古住宅の販売数も「17万件から(更新されず)さっぱり動かなくなったよ」というコメントもある。

今年7月には「過去最悪」となっていた若者の失業率が公表停止になっている。11月現在、中国の若者の失業率は公表されていないが、それが好転した兆しは全くない。「過去最悪」という前置きだけが変わらずに更新されるという、抜け出せない悪循環に陥っていると想像したほうが実態に近いだろう。

相次ぐ「不都合な経済データ」の公表停止に、中国経済に対する不安がますます広がっている。

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。