今月3日、浙江省のある男性が亡くなった祖母の預金600元(約12,000円)を銀行から引き出そうとしたところ、職員から「証明書発行料(遺言の公正証書)」として800元(約16,000円)を要求された。この事件は世間を騒がせた。
SNSに投稿された動画のなかには、中国版のゆうちょ銀行にあたる「中国郵政儲蓄銀行」の支店の窓口で、複数の銀行職員と言い争う男性の姿があった。
男性は銀行員に対して、警察が発行する親族関係証明書を見せながら、「この通り、手続き書類は揃ってる。銀行カードの残金は600元しかない。それを引き出すのに800元出して、わざわざ証明書を発行してもらうなんて、有り得ないことだ」と興奮気味に訴えていた。
関連トピックスには「中国の銀行は強盗だ」「家族に預金を残したいのなら、死ぬ前に全部引き出さなければ、後で大変なことになる」といった非難が殺到している。
(亡くなった祖母の預金600元を引き出そうとしたら、証明書発行料の800元を銀行から要求されたという男性。納得できず、銀行員に質問している)
中国メディアの取材に対し、中国郵政儲蓄銀行の職員は、次のように回答している。
「故人の預金金額が5万元(約102万円)未満であれば、法定相続の第1順位の人(両親、配偶者、子)は公正証書を提出する必要はない。預金者の死亡証明書や親族関係証明書を提出すれば、どこの支店へ行っても預金引き出せる」
「それ以外のケースは公正証書が必要だが、証明書の発行に関する手数料などは(銀行ではなく)発行部門が決めることだ」
つまり、故人の「孫」が預金を引き出しにきた今回のケースは、金額は5万元未満ではあるが、法的根拠からして、公的証書を必要としない「法的相続第1順位の人」と認められるかどうかは、わからない。ただし「証明書の発行は、その手数料もふくめて、銀行とは何の関係もない」ということは言えるだろう。
それなのに、なぜ動画のなかの銀行員は、遺族から預金額以上の「証明書発行料」を、しかも銀行の立場でそれを支払うよう要求したのだろうか。
以上の情報だけでは全貌を読み解くことは難しいが、どうやら法的に規定された手続きを超える「費用の徴収」が、現場の窓口では慣例化していることが想像される。
このニュースをきっかけとして、いままでに「銀行からつけられた難癖(なんくせ)の数々」に関する議論がネット上で持ち上がった。
「昨年、私は在職証明書をもって銀行に行き、給与を受け取る口座をつくる申請した。すると銀行員から、口座をつくる申請をするには半年分の社会保険料を支払わなければならない、と言われた。そこで私は、今は給与を受け取る口座すらないのに、どうやって社会保険料を支払えるというのか、と反論した。銀行員は、これは上からの規定だから、どうすることもできない、と言う。なぜそんな馬鹿げた規定があるのか。本当に理解に苦しむ」
「先月、銀行カードを作ろうとしたら、作る前に警察の許可を得なければならない、と言われた。なんでだ?」
「会社の人事担当者と銀行との電話やり取りを聞いた。何かの手続きをしようとしたらしいが、銀行側から、申請者の社会保険の支払い証明書が必要だと言われたらしい。うちの人事担当は、申請者は新卒だ、社会保険に加入しているわけがないだろう、と怒り心頭だったよ」
それらの「難癖」の一つ一つを検証する術はないが、中国の銀行には「巨大な不条理」が渦巻いているのかもしれない。預金者から預かったお金を、突然凍結したり、勝手につかって金融商品を無断購入したりするのは、その一端であろう。
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