【菁英論壇】恒大集団会長の逮捕 倒産は悪夢の始まり

2023/10/03
更新: 2023/10/03

恒大集団の許家印会長が最近、中国共産党(中共)の警察に正式に逮捕された。この一報は世界中の多くのメディアに大きな衝撃を与えた。恒大が終焉の時を迎えたという意見や、不動産の債務危機が臨界点に達したとの声、さらには恒大の崩壊により中国経済が連鎖的に崩壊するとの見方もある。

2023年は大変動の年となるかもしれないが、中国の不動産大手である恒大グループが実際に崩壊するのか、その結果、社会にどのような影響が生じるのだろうか。

恒大の倒産、不動産の崩壊が訪れる

米国在住の中国の実業家、孟軍氏は、新唐人テレビ「菁英論壇」番組において、許家印氏の逮捕が恒大の完全な崩壊を意味し、これによって中国の不動産の時代が完全に終わったと述べた。恒大に起因する問題は、不動産に留まらず、金融システムにも深く影響している。

恒大の問題を過小評価すべきではない。恒大の後には、融創中国、碧桂園、遠洋集団、中共国営企業である華潤創業など、多くの不動産企業も危機に直面する可能性がある。

孟軍氏の北京の友人からの報告によれば、北京の大手不動産会社である泰禾集団も崩壊の危機にあるという。しかし、中国国内メディアでの報道は禁じられている。その理由は、不動産業界が多くの産業に影響を与えるからである。

孟氏によると、中国の不動産は正常に発展している産業ではなく、国のGDPを押し上げる手段であった。不動産はGDPの重要な部分を占め、鉄鋼、セメント、木材、輸送、家電など、多くの産業を牽引してきた。

しかし、中国共産党は不動産産業を適切に管理し、健全に発展させることができなかった。不動産業界は、共産党の権力者たちの資産の現金化や資金集めの重要な手段となっていた。したがって、恒大の問題から、不動産業界全体の崩壊、国全体の金融システムの崩壊、さらには国全体の経済の完全な崩壊につながる可能性がある。

中国語大紀元時報の郭君編集長が「菁英論壇」で述べたように、中国の経済発展は過去十数年にわたり、主に3つの産業、すなわち不動産、インターネット、輸出入に依存していた。しかしインターネット産業はすでに大幅に規制されており、輸出入は今年大幅に減少している。従って、不動産産業が最後の支柱となっていた。

今回の許家印会長の出来事は実際に2つの兆候を示している。1つ目は、不動産業界が既に持続不可能であり、今後の状況は更に悪化するであろうということ。2つ目は、人民元資産の価格の大幅な下落の可能性であり、基本的に中国大陸の一時代の終焉を意味している。すなわち、中国経済の高速成長期は、二度と訪れない。

加えて、政治的不安定と大量の資本流出が中国経済に影響し、中国経済はいわゆる「ラテンアメリカ化」の段階に入ったと、国際的には一般に見なされている。今後の問題は単なる停滞に留まらず、崩壊の可能性も持っている。

「菁英論壇」で大紀元の主筆、石山氏は次のように述べた。

中国にはさらにもう一つの大きな問題が存在しており、それは企業の外債、特にドル債の問題だ。例えば、恒大は現在、約360億ドル(約5兆3900億円)以上の外債を完全に償還できない可能性があり、それ故に米国で破産保護を申請している。これは外債保有者が米国の裁判所で訴訟を起こすのを恐れているからだ。

訴えられると、海外の資産や株式が凍結される可能性がある。株式が凍結されれば、数多くの問題が発生するため、恒大は予め破産保護の手続きを行っている。

しかし、恒大は確実に倒産すると予測されている。中共は資産を保護する手段として、倒れようとしている企業の資産を先に手に入れ、国内の銀行融資を回収することで国内の資産を保護する。

そして海外の債券保有者は最後に考慮され、場合によっては一切補償されない可能性もある。例えば、100ドル借りて、2ドルしか返さない場合がある。これが受け入れられない場合、一銭も得られない可能性もある。

これにより海外の債権者に対する圧力がかかる可能性がある。しかし、これには後遺症がある。それは、今後全ての中国の企業や中国の地方政府、中央政府が海外でドル債券を発行し、国際市場で資金を調達しようとする際、信用の欠如により困難になるだろう。

習近平が見せしめにして、許家印はニラの本色を露わに

孟軍氏によれば、恒大が今の時点で倒産するというのは、習近平氏に打つ手がなく、見せしめにせざるを得ない状況を反映しているという。

習氏が、許氏に時間を与え、要求したのは、支払いが済んだ購入先行の建物の引き渡しを完了させることだった。

しかし許氏は、その与えられた時間で何を成し遂げただろうか。2020年から現在にかけて、彼は自己の資産の移転に執心し、海外に逃れようと試みた。しかし結局、彼は監視下に置かれ、現在は完全に拘束されている。

少し前、許氏はニューヨークで恒大の破産保護を申請した。その直後、融創中国会社も破産保護を申請した。融創中国だけでなく、多くの中国の不動産会社も大部分の資産を海外に移転しており、それら全てが海外で資産保護を申請しようとしている。一旦保護されれば、これらの資産は中共が回収不可能となる。

中共の真の目的は、これらの民間企業の全資産を自分たちの手に取り戻すことである。例えば、恒大の負債は約2.4兆元(約46兆3千億円)に上るが、資産も約1.8兆元(約36兆9千億円)保有している。恒大が倒産すれば、この1.8兆元の資産は中共が回収しようと試みるであろう。6月28日に設立された「海港人寿」は、恒大の保険会社「全人寿」の資産を即座に全て引き継ぎ、これは昔の安邦保険集団と同様、段階的に分割していく。これは中共の一貫した手法である。

郭君氏によると、恒大自体の債務は2.4兆人民元に上り、これは一国の債務に匹敵する。その大部分は金融機関と関連しており、企業債、金融債券、そして銀行の借款が含まれている。中国は2週間前に預金準備金率を0.25ポイント引き下げ、約5千億元(約10兆円)の流動資金を市場に供給した。

しかし、これは恒大の不良債権の4分の1に過ぎない。よって、恒大によって引き起こされる問題の規模がいかに大きいかを理解できるだろう。

中国大陸において、すべての不動産会社の背後には権力が存在せざるを得ない。その権力がなければ、会社は機能しないのである。たとえ地方の都市であろうとも、そこに存在する不動産企業の裏には、地方政府の権力や官僚が存在している。

恒大のような全国規模を誇る大型不動産企業の場合、当然、トップクラスの権力が支援している。しかし恒大の許家印氏がいかに賢明であろうとも、今回、彼は共産党の性格を理解していない。

すなわち、2年の期間を以て、許家印氏に先行して購入された物件を全て完成させ、購入者に渡すよう命じているのである。しかし彼にその全てを完成させる可能性はない。彼が逆行して中国全体の経済衰退の大勢を変えることなどできないからだ。

最終的に、許家印氏は投獄されて、すべての問題が解決し、何らかの結論が出るであろう。2年前から彼の出国は許可されず、現在は逮捕されており、全ての罪が許家印氏にかけられ、これで一件落着となるのである。

石山氏によれば、専制体制の中には、このような錯覚が存在している。つまり、権力の中心に近いとき、自分も権力の一部であると錯覚してしまう。しかし、実際には何ものでもなく、単に権力の中心に近い位置にいる「韮菜(ニラ)」に過ぎない。大木ではなく、いつか刈られる「ニラ」にすぎないのだ。