「立ち退き」を迫る地方政府 住民を軟禁し、騒音で嫌がらせ=中国 江蘇

2023/09/09
更新: 2023/09/08

このほど、住民の「強制立ち退き」をめぐり、現地政府からの執拗な嫌がらせを受けたと訴える動画がネットに拡散された。江蘇省揚州市の男性市民が、現地政府による悪質な「立ち退き」手段について実名で告発した。

この市民によると、今月2日から3日にかけて「強制立ち退き」を実行する部門の職員が家に押し入り、27時間にわたって軟禁されたほか、立ち退きに同意する書類にサインするよう強要された。

金ダライを、夜通し叩き続ける狂気

その際、当局者らは20時間にわたり、金属製のタライやイスを激しく叩くなどして不快な騒音をたて続け、嫌がらせをした。そのため、一家は夜も眠れず、ついには意識を失うほどまで追い詰められたと訴えた。

投稿動画のなかには、胸に役所の身分を示すIDカードをぶら下げ、鉄製の(スープなどをすくう)お玉を手に持った複数の男たちが、住民の家の前で絶えず金属製タライを叩く一幕があった。ガンガンと響く金属音をわざと鳴らして、立ち退き対象の住民を精神的に追い詰めるのだ。

 

 

この様子を見たネットユーザーらは相次ぎ、当局者を「ヤクザ」「ごろつき」と呼んで非難した。なかには「米国だったら、この男たちを撃ち殺せるぞ」という声もあった。

世論の圧力をうけ、現地当局は「現在、この問題に対処をしている」と発表。しかしその後、具体的にどう対処したのかに関する継続報告は出されていない。

中国での「強制立ち退き」をめぐる悲劇は、20年ほど前の、不動産景気が過熱した時代から後を絶たない。住民の土地を強制収用して不動産開発業者に売却することは、中国の地方政府にとって長年の財政的支柱だったからだ。

そして現在。中国政府はこの絶望的な経済危機を脱するため、大規模なインフラ整備計画に乗り出している。それに関連して、当該地区の住民を立ち退かせることは、もはや地方政府にとって厳命された「政治的任務」になっているのだ。

地方政府がヤクザを雇う末世

実際、住民を立ち退かせるために、手段を選ばない地方政府は非常に多い。

上海では「政府が雇ったヤクザ」が、夜中に立ち退き対象の市民の住宅に行き、糞尿をかけたり、生きた蛇を置いたりしていたことが、中国メディアによっても報じられている。雇われたヤクザが、住民に暴力を振るったり、立ち退き対象の家屋を重機でいきなり取り壊すケースも少なくない。

こうした当局からの有無を言わせぬ圧力のなかで、焼身自殺をもって反抗する人も相次いでいる。取り壊し用の重機に、レンガや手製の火炎ビンを投げつけて反撃する住民もいる。

なかには「立ち退き実行部隊」に向かって住民が車で突っ込む事件も起きており、それによる死者も出ている。また、集結した大勢の村民と、強制立ち退きを執行する地方役人や武装警察との間で、大規模な「乱闘事件」に発展するケースも多い。すさまじい末世である。

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。