中国共産党の元幹部が7年前に「決死隊」を募り、中共政権を転覆しようと計画していたことが、中国国家安全部の発表で明らかになった。元幹部は実刑判決を受け、現在は釈放されている。なぜ旧事件が今になって公表されたのか。中国問題専門家は「改正反スパイ法を背景にした中共の思惑」を分析する。
海外から武器調達も検討か
国安部の発表によると、中国南西部・雲南省の元学校幹部だった肅氏は「長期間にわたってネット上で反動的な言論を展開」しただけではなく、「国外の敵対組織の核心的メンバーと積極的に連絡を取り、海外から武器を調達することも検討」し、「決死隊を募って暴力行為で国家政権を転覆させ、中国の政治体制を変えようとしていた」。肅氏は一連の行動を「中国ベンガジ計画」と名付けた。
しかし、計画は実行前に国家安全当局によって摘発され、関係者全員が逮捕された。肅氏は2016年10月、「国家政権の転覆を扇動した罪」で拘束され、11月に保釈された。しかし2017年4月、中国共産党総書記を民主的な方法で選出すべきだとした公開状を出すと、再び拘束された。
最終的に肅氏は2019年には禁固4年の判決を受け、2021年に釈放された。しかし政治的権利は剥奪された。
中国のSNS「Weibo(微博)」で800万人以上のフォロワーを持つアカウント「蘸鹽」は15日、肅氏の本名は「子肅(シシュク)」であり、雲南省共産党学校の元教師。公職にも就いていたと主張している。
7年前の旧事件を持ち出すのはなぜか
なぜ、中国共産党は未遂に終わった事件を7年越しに公表したのか。中国問題専門家の唐浩氏は自身の番組で、現在推進している「国民参加型のスパイ取り締まり」運動と関連していると分析した。
「外部の脅威を作り出すことで、国内の人々の注目をそらし、自国内の失敗を隠すのは中国共産党の常套手段だ」と唐浩氏は指摘する。「恒大や碧桂園の債務不履行や金融機関の経営悪化、若者の失業などは庶民の関心事だ。しかし中国共産党はこれらの問題を解決できない。そのため、7年前の『決死隊』事件を取り上げて、人々の関心を逸らしているのではないか」
さらに、「スパイが至るところにいるのではないかという雰囲気を作り出し、人々に相互に監視させることで、中国共産党にとって好ましい社会環境を作り出すことができる」と分析した。
燻る不満と習近平氏の不安
中国の法学者で、現在はオーストラリアに滞在する袁紅氷氏は18日、エポックタイムズの取材に対し、事件の公表から習近平氏が大きな不安抱えていることがわかると指摘した。
袁紅氷氏は中国共産党内部の情報筋の話として、最近消息不明となった中国ロケット軍の李玉超司令官らについて、「表面上は習近平氏に忠誠を尽くしているが、本音としては大きな不満を抱いている」と指摘。秦剛外相がロケット軍と一定の関係を持っていたことも、習近平氏にとって大きな衝撃だったという。
習近平氏は今まで複数回にわたって、政権の安定さを懸念する主張を行っている。5月30日の国家安全委員会では、中国当局が「直面する国家安全問題の複雑さと巨大さは明らかに増大している」とし、「暴風と荒波のような重大な試練を迎える準備をしなければならない」と指摘した。
さらに国家安全部は11日、米CIAが絡むスパイ案件を摘発したと発表した。スパイとされた人物は西側諸国の価値観に賛同し、「政治的な立場に動揺が生じ」たため、CIAに利用されたのだと批判した。
袁紅氷氏は、中国の国家安全当局がスパイ摘発の宣伝を行う背景には、共産党内部の粛清が絡んでいるとみている。10年近く続いた「汚職摘発」だけではもはや粛清を行う合理性を説明できないため、「国家の安全」という謳い文句を使うことで、粛清の対象を共産党外部まで拡大しているのだと語った。
部下の忠誠心に不安を覚える習近平氏は、中央規律委員会と国家監査委員会を使って監視を行なっている。しかし「表面上は忠誠を尽くす素振りを見せつつ、不満を燻らせている」者もいるため、「重大な政治事件が発生すれば、局面をコントロールできなくなる恐れがある」と袁紅氷氏は指摘した。
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