以前、世界銀行は中国共産党(中共)によるデータ改ざんを支援し、ビジネス環境ランキングは2年間にわたって廃止されていた。
しかし現在、世界銀行はより透明かつ客観的な評価を目指し、民間企業への調査も取り入れた新たなランキングを構築している最中だ。
中国のビジネス環境の悪化し、外資系企業の撤退が深刻化している現状で、中共当局は調査結果が中国の順位を下げることを懸念している。
世界銀行は、世界各国のビジネス投資環境を新たなランキングプログラム「ビジネス・レディ(B-READY)」で年次評価する取り組みを進めており、このランキングは、従来のビジネス環境報告書に取って代わるものとしている。
世界銀行は2021年9月、 「ビジネス環境報告書」 の発行を中止すると発表した。
ウィルマーヘイル法律事務所の調査により、世界銀行の元最高経営責任者(CEO)クリスタリナ・ゲオルギエヴァ氏と銀行の元総裁ジム・ヨン・キム氏が中国に関するデータを変更してランキングを上げるよう職員に圧力をかけていたことが明らかになった。
新しいランキング「ビジネス・レディ」は、ビジネス参入、ビジネス立地、公共サービス、労働、金融サービス、国際貿易、税制、紛争解決、市場競争、企業倒産など10項目に焦点を当て、ビジネス環境を評価する。
「ビジネス・レディ」のマニュアルによれば、このランキングプログラムは世界中の民間企業により展開されるビジネス環境を改善することを目的としている。
民間企業は雇用の主な源であり、脆弱で紛争の影響を受けている国でも、国の経済体制の成功にとって重要な部分である。
新しいランキングは、民間企業の調査を重要な採点根拠としている。スタッフは調査ソフトにより民間企業部門の専門家に詳細な調査票を配布し、直接、データを収集する。
このランキングは来年から、中国を含む180か国に拡大することを試みる。
中国共産党は怯えている
中共は、今回の世界銀行による新しいランキングの導入に非常に怯えている。
6月以来、上海などの地方政府当局者は、自分の管轄区域がランキングで良い成績を収めるにはどうすべきか思案しており、北京はそのために71項の政策変更案を提出した。
アナリスト企業の設立者であり、『Journal of Risk and Uncertainty』の発行者でもあるアンダース・コーラー氏は、8月6日エポック・タイムズに対し、「北京当局が心配しているのは、(中国における企業の)景況感が低下しているためであり、世界銀行の調査順位が低下する可能性があると懸念している」と述べた。
財政部財務副部長・王東偉氏は内部会議で、「中国は世界経済に主導的な地位を占めていることから、ランキングは『急落』する可能性がある」と述べ、国内の主要都市や地方の当局者に世界銀行の調査に十分備えるよう促した。
中国の外資締め付け
王東偉氏の心配には理由がある。2023年6月、中国EU商会は、外国企業が中国から本社や資本を移転させていると報告した。
中国EU商会の調査に回答した570社のうち、3分の2が中国での事業展開が難しくなっていると回答、5分の3は事業環境が 「より政治的」 になっていると回答、10分の1が中国から投資を移したと回答、更に5分の1は投資の移転を延期または検討しており、航空宇宙分野では5分の1が今後中国への投資を見送る予定だとした。
更に、金融情報サービス企業・リフィニティブ社のデータによると、今年5月において、外国人投資家は上海と香港を経由して、合計で17億1000万ドル(約2424億8千万円)相当の中国本土株を売却した。これは4月の売却額6億5900万ドル(約922億6千万円)に比べて大幅に上昇した。
外資が中国から脱出したことで、中国経済の回復への望みが断たれたことに加え、中国共産党が反スパイを掲げて外国企業を粛清したことも直接の原因だ。
2023年5月、中国警察は、米国に本拠を置くビジネスコンサルティング会社である「ケソン」の中国各地の事務所を捜索した。専門家の一人は「窃盗、スパイ行為、国家機密情報の外国への提供」の容疑で中共当局から懲役6年の判決を受けた。
4月にはベイン会社(Bain & Company)の中国事務所が捜査され、3月には米企業ミンツ・グループの中国人従業員5人が拘束された。
中国の民間企業も取り締まり
中国のビジネス環境に幻滅しているのは外国企業だけではない。近年、中国の民間企業も同じく中共当局の取り締まりに遭った。中国EU商会によると、中国の取引先やサプライヤーの5分の2が中国から投資を移しているという。
電子商取引大手アリババは2021年4月10日、過去最高額となる28億ドル(約3984億円)の罰金を科された。3日後、中共の監督管理機関はテンセント、美団、滴滴、百度、バイトダンス、ジンドン、新東方教育など34社の企業を召還した。
中共の恣意的な取り締まりで、中国の民営企業は衰退している。 ピーターソン国際経済研究所のデータによると、中国の大手上場企業100社に占める中共国有企業の割合(時価総額合計で測定)は、2022年末の57.2%から2023年上半期には61.0%に上昇し、民間企業(国の所有権が10%未満と定義されている企業)の割合は2023年上半期には40%未満に下落した。
中共はまた、民間企業に党支部設立を要求し、企業の「黄金株」を取得することで企業を統制している。 1月、中共はアリババ子会社の株式1%を取得することで、取締役会の議席、議決権、事業決定に対する影響力を得た。
中共は民間企業関係者の口を封じるあらゆる手段を用いる可能性がある。コーラー氏は、「世界銀行の調査で、中共は民間企業に肯定的な見方を与えるよう圧力をかける可能性が高い」と警告した。
コーラー氏は「そう脅されては、不正行為によって調査の効果がなくなってしまい、 中国の顺位は他国と比べて人為的に高くなる」と指摘している。
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