8月3日、河北省が何日も洪水に浸かり「予告なしのダム放水」で避難する間もなく取り残された市民が無数にいる。北京市内でも、一部の地区は洪水や濁流が襲い、甚大な被害が出ていることは間違いない。水も食料もないなか、救援を待ち続ける被災民を差し置いて、中国の官製メディアは何を報じているのか。
中国国内の情報を発信する、著名なツイッターアカウント「李老师不是你老师(李先生はあなたの先生ではない)」は3日、国営新華社通信によるビリビリ動画の投稿内容に関連するツイートをした。「李先生」のツイートに触発されたネット民は、当局への怒りに再度火を着けることになった。
パンダの誕生日をお祝い
なんと、この日(3日)国営新華社通信のビリビリ動画での公式サイトでは「パンダの丫丫(ヤーヤー)の誕生日を祝う」内容を公開していたという。
北京動物園(北京市西城区)のジャイアントパンダが23歳の誕生日を祝っているとき、その付近では、道路が濁流になっていたことを知らぬはずがない。
河北省や北京市で大洪水が発生した7月31日から8月3日午後19時(現地時間)に至るまで、新華社がそのビリビリ動画サイトで発表した災害関連内容のコンテンツは、わずか1つだということもわかった。
「李先生」の投稿には、ネットユーザーからの大量のコメントが寄せられた。
このなかで、多く上がったのは「普通の国であれば、災害が起きるとテレビでは災害関連情報が24時間スクロール再生されるというのに、中国はなんて国だ!」といった怒りの声である。
このほか、意外と多かったのは「なんてことないよ。いつだってそうさ。新華社は公的な報道機関として国民を洗脳し、世論を誘導するという重要な責任を負っているんだ」とする、冷めた声だった。
「人民日報」に人民はいない
国営の新華社通信だけではない。官製メディア筆頭で中国共産党の機関紙「人民日報」の3日付のトップ1面にも、「習近平国家主席の著作の宣伝」や「経済促進」などの話題ばかり。肝心な災害関連の報道は1つもなかった。
このことを指摘するSNS投稿に寄せられたコメントに、このようなものがあった。
「この日の新聞を見ていると、まるで災害なんて全くなかったかのような、自分が並行世界(パラレルワールド)にいるような錯覚に陥る」
確かにその通りだ。これは全く「別世界」のことを報じている。この異次元空間には、洪水も濁流もないらしい。
また「人民日報に『人民』なんていない」という、よくネット上で見かける言葉も今回のコメント欄で見られた。この国の「人民」は、あまりの苦難に絶叫し続けている。しかし「党が活躍している」というパフォーマンスを宣伝するとき以外に、それらの苦難を報道することはない。
(下のツイッター投稿者は、「共産党という匪賊を滅しなければ、中国に安寧の日はない(匪共不灭,国无宁日)」と綴っている)
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