日本でも今月2日に運営を始めた世界最大の暗号資産取引所バイナンス。創業者は中国系カナダ人の趙長鵬氏で、もともとは上海を拠点にしていた。2021年に共産党政権が暗号資産取引そのものを違法指定する前の2017年に撤退。しかし、禁止されたはずの中国で、ひと月900億ドルもの取引を行っているようだ。
ウォール・ストリート・ジャーナルが現職や元社員からの情報を1日、報じた。それによれば、バイナンスの総取引量の20%におよぶ世界最大市場が中国であり、アクティブユーザーは90万人。具体的な取引が行われた月は明らかにされておらず、大規模な投資家からの取引は数えられていない可能性もあるという。
報道によれば、中国のユーザーは当局の規制を回避するため、バーチャルプライベートネットワーク(VPN)を使用したり、パラオの持つデジタル市民権などを利用したりしているという。
バイナンス広報担当は、中国はアクセスを遮断しており「中国拠点のユーザーがサービスを利用することができない」と述べ、報道内容を否定した。
中国人民銀行は2021年9月、暗号通貨を違法指定するとの文章を発表した。ビットコインなどの暗号通貨は「経済金融秩序を破壊し」、「マネーロンダリングや違法な資金集め、詐欺などの犯罪活動を助長し、市民の財産の安全を脅かしている」と批判した。
世界最大との冠は華々しくもあるが、バイナンスは渦中にある。今年、米商品先物取引委員会(CFTC)や米証券取引委員会(SEC)といった規制当局から、詐欺やマネーロンダリングの疑いで起訴されたのだ。
CFTCは3月、暗号資産取引所の違法運営や虚偽に基づくコンプライアンスを問題視し、バイナンスと趙長鵬氏を訴えた。取引量を水増ししたり、ユーザーの資金を不適切に使うなどして、投資家を誤解させるデータの改ざんがあったという。
6月にはSECが双方を提訴。未登録の取引所を米国で運営して不正に海外取引所に移したり、データを操作して「投資家や顧客をリスクにさらした」と批判した。
新興メディア、セマフォー3日付によれば、米司法省もバイナンスに対し詐欺容疑で刑事告訴を用意している。いっぽう、昨年11月に大手取引所FTX(のちに破産申請)に資産の引き出しパニックが発生した例から、大型取引所に対しては罰金や勧告、不起訴などの対応にとどめ、市場への影響を抑える可能性もあるという。
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