主権国家の権利侵すパンデミック条約…中国共産党の影ちらつくWHO(4)

2023/06/14
更新: 2024/06/26

(3)はこちら。

そもそも、世界保健機関WHO)は、本当に健康上のリスクと戦い、人々の健康を促進することに取り組んでいるのだろうか。法輪功の問題について、単刀直入に言わせてもらおう。 

法輪功は、真・善・忍を原則とする精神修養法で、気功の5つのエクササイズを含んでいる。とても健全で健康的に聞こえるが、実際1999年には、約1億人の中国人が法輪功を実践していた。つまり、多くの人々が、法輪功を健康的かつ有益なものと捉えていたということだ。

しかし、1999年7月、当時中国の指導者だった江沢民が一方的に法輪功を禁止し、残忍な迫害運動を開始した。収容所での強制労働や拷問などによって多くが命を落とし、法輪功学習者からの強制臓器摘出(臓器狩り)についても明るみに出た。件数は明かされていないが、1999年以降、おそらく100万人以上の法輪功学習者が臓器目当てに殺された。

これが中国国内の政治的問題であるかどうかにかかわらず、臓器調達のために生きた人間を殺害することは「健康」とは真逆の慣行だ。この臓器狩りが、WHOが謳う「ワンヘルス・アプローチ」に合致するだろうか。WHOの言い方に倣えば、強制的に臓器を摘出された人々が「死にかけている」ということであって、「健康上のリスク」と見なされるべきだ。

「臓器狩り」が国際社会の注目浴びるも…

WHOはこの「健康上のリスク」を止めるために何をしてきたのか。

「強制臓器摘出に反対する医師の会(DAFOH)」は、2012年から2018年にかけて、中国に臓器狩りの中止を呼びかけるよう、国連人権高等弁務官に対し請願を行なってきた。DAFOHは、50以上の国と地域で300万人以上の署名を集めた。署名を届けるために弁務官事務所の代表者と3回の面会を行ったが、それ以降、大きな進展はなかった。

2019年、英国ジェフリー・ナイス卿が率いる独立民衆法廷「中国法廷」が、入手可能なすべての情報を1年間にわたって精査し、中国で強制臓器摘出が行われたという結論に満場一致で至った。

中国法廷の顧問であるハミド・サビ氏は、2019年9月24日に国連人権理事会で演説を行い、中国が生存中の法輪功学習者などから強制的に臓器を摘出したという法廷での結論と判決を評議会に通達した。しかし、これもそれ以降大きな進展はなかった。

2023年3月27日、ワシントンで行われた「2023年強制臓器摘出停止法案(Stop Forced Organ Harvesting Act of 2023)」に関する立法業務の会合で発言するクリス・スミス議員。(米連邦下院/NTDのスクリーンショット)
 

2021年、12人の国連特別報告者と専門家が声明を発表し、中国での臓器狩りについて懸念を表明した。米連邦議会では、中国での臓器狩りを止めさせなければならないことを確認するいくつかの決議を可決した。

最も注目すべきは、2016年の343号決議案と2023年の「2023年強制臓器摘出停止法案」だ。欧州議会は2013年、2016年、2022年に臓器狩りに反対する決議を採択した。イスラエル、カナダ、台湾などの国々も、臓器狩りに対応する法律を可決した。学者らも、ジェノサイド条約の基準に従って、この迫害が「冷たいジェノサイド」であることを認めた。

WHOは何をしたのか

では、WHOは中国での臓器濫用を止めるために、何をしたのだろうか。

非常に多くの研究者らが、中国での臓器狩りに関する懸念を提起したにもかかわらず、彼らはそれについて認識していなかったようだ。それらの研究者を招いた公聴会を開催することはなかった。

中立な立場にあるはずのWHOは、中国で臓器狩りの犠牲者が大勢出ていたにもかかわず、アフリカでエボラ出血熱が発生した時に行なったような現地調査を組織しなかった。

その代わり、WHOは、法輪功学習者からの臓器狩りが拡大した時期に中国衛生部副部長だった黄潔夫を、WHOの「人間の臓器と組織の提供と移植に関するタスクフォース」のメンバーに招待した。一体なぜだろうか。

私はここで、WHOに以下のことを問いたいと思う。100万人以上の生存中の法輪功学習者に対する強制臓器摘出は、「健康上の大惨事」ではないだろうか。WHOが中国に破壊行為を止めるよう呼びかけなかったのはなぜか。中国での臓器濫用を調査するために、過去23年間WHOは何をしてきたのか。WHOが世界の人々の健康を本当に案じているのなら、なぜ強制臓器摘出の対象となる人々の命を救おうとしなかったのか。

中国で法輪功学習者、ウイグル人、チベット人、キリスト教徒などが臓器狩りの犠牲となった時にWHOがどのように対応するかは、「ワンヘルス・アジェンダ」を世界規模で打ち立てようとするWHOの真意を計るリトマス試験紙となる。

何が健康上の脅威に当たるのかをWHOが選択的に定義するのであれば、それはつまり、WHOは資金提供者の操り人形にすぎないということだ。

臓器狩りは23年間にわたり行われてきた。議会や官僚、調査員などから国際的な注目を集め、民衆法廷によって数々の証拠が検証された。したがって、WHOに対して即時の行動を要求するのももっともだ。

中国偏重のWHOから脱退すべき

世界保健総会でパンデミック条約が採決される前に、法輪功学習者の臓器狩りを行なった中国をWHOが呼び出さないのであれば、WHO内の偏重がはっきり見て取れる。 

中国が臓器狩りを繰り返している限り、彼らが調印するWHOのパンデミック条約やIHR改正案は欺瞞でありでっち上げだ。WHOが何万人もの法輪功学習者やその他の良心の囚人の生命を保護していないのに、それらの条約や改正案にどんな意味があるというのだろうか。

WHOは「ワンヘルス・アジェンダ」を掲げている。中国であれどこであれ、臓器狩りが行われていれば、アジェンダの一環としてそれを停止しなければならない。この人道に対する残虐な犯罪をWHOが無視するのなら、条約締結と改正案にはどんな目的があるのだろうか。健康を口実に権力を獲得するつもりなのか。

WHOが自己修正しない限り、米国は即座にWHOを脱退したほうがいい。パンデミック条約とIHR改正案には署名せず、WHOから直ちに脱退すべきだ。中国共産党がWHOを代理人として米国に仕掛けた「ハサミ戦略」が失敗した時、人々は中国共産党が羊の皮を被った狼であることをはっきりと目にするだろう。

レーガン大統領は「ゴルバチョフさん、この壁を取り壊しなさい」と言い放ち、歴史を作った。

今、米国はWHOから脱退すれば主権を守ることができる。複数の下院議員が、より良い状況になるまでWHOから撤退できるような、債務上限と連動した立法措置を提案している。

議会は、米国の独立性を確保し、市民の自由を守るためにデューデリジェンスを果すべきだ。

(完) 

この記事で表明された見解は著者の意見であり、必ずしもエポックタイムズの見解を反映しているわけではありません。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
医学博士。医療倫理擁護団体「強制臓器奪取に反対する医師の会(DAFOH)」の創設者兼事務局長で、中国での臓器狩り問題に反対する世界的運動の主導者の一人。同問題に関する書籍を共著で多数出版し、医学雑誌にも広く発表している。 受賞歴のあるドキュメンタリー映画 「人狩り 中国の違法臓器売買」に出演したほか、書籍「中国の移植犯罪 国家による臓器狩り」の共同編集者も務めた。