預けた金が「下ろせない!」「消えた!」 中国の銀行で頻発する異常事態

2023/05/28
更新: 2023/05/30

銀行に預けたお金が、突然引き出せなくなる。さらには、午前中に預けたお金が、なんと同じ日の午後には口座から消えていた。このような信じ難い事態が、中国の銀行で頻発している。

そうした場合でも、銀行は一切責任を負うことはなく、窓口に押し掛けた人々を追い返そうとする。預金者にすれば、心血を注いで貯めたお金を「奪われた」に等しい。

銀行前で抗議する人々「預けた金を返せ!」

今月23日、中国河南省の「禹州建設銀行」で、預けたお金を引き出せなくなったとして、複数の預金者が銀行前や銀行内で抗議した。その様子を映した動画がSNSに拡散され、注目を集めている。

預金者は銀行前で「禹州建設銀行は預金者を騙した。苦労して貯めた金(血汗銭)を返せ」などと書かれた看板や横断幕を掲げて抗議し、預金の返還を求めた。

抗議者のものと思われる拡声器からは「禹州建設銀行は詐欺師だ。預けた金を下ろせなくなった。金を返せ!」などの文言が繰り返し流されている。

動画の他の画面では、銀行の内部でも同様の看板を手に持って抗議する人がいた。銀行の窓口で、預金者と銀行側が口論している様子も収められている。

動画につけられた説明文には「禹州市建設銀行が預金者を騙した。不当な手続きをした」と書かれている。

中国で相次ぐ、銀行の「取り付け騒ぎ

中国では近年、「突然、預金が下ろせなくなる」事態が相次いでいる。今年3月にも河北省邯鄲市叢(丛)台区の郵政銀行の拠点で「預金が下ろせなくなった」と主張する動画がSNSに流出し、注目を集めた。(関連動画はこちら

昨年4月中旬以降、河南省や安徽省の地方都市の、とくに農村を拠点とする6つの小規模銀行で預金が下せなくなる事態が生じた。被害規模は400億元(約8172億円)で、約40万人に被害が及んだとされている。預金を1年以上も引き出せないため、毎日の生活に困窮する人も多い。

地方の当局は、銀行に対して正常な業務を回復するよう指示するのではなく、抗議する預金者を監視し「抗議させないようにする」などの強制措置を取ることで、鎮静化を図っている。

中国のネット上では、このような口座凍結に関連する話題は検閲されており、関連ワードで検索してもヒットしない状況だ。そのため現在は、情報封鎖中である国内の民衆よりも、中国の国内銀行に対する海外からの不信感のほうが強くなっている。

「まるで犯罪者のよう」監視される預金者

この問題をめぐって、預金者は度重なる抗議集会を行ってきたが、そのつど地元当局によって鎮圧されている。

地方銀行の口座を凍結された預金者が、北京にある国家信訪局(陳情局)へ陳情に赴く場合もある。

このような陳情は、全く合法的な民衆の権利である。しかし、地方の問題を中央へ知られたくない地方政府はそれを許さず、地元から要員を派遣して、陳情民を力づくで妨害し帰郷させている。

陳情民が地元に戻されれば、待っているのは地元当局による拘束か、さもなければ24時間体制の監視生活である。そうなると、銀行の預金者である市民は、まるで「犯罪者」のような扱いを受けることになる。

下の動画では、河南省のある農村銀行に預金した人の家の中に、当局が監視カメラを強制設置した様子だ。預金者の行動を24時間監視することで、北京へ陳情させないためであるという。

このような信じられないことが、実際に多発しているのが、今の中国の銀行である。

 

「預金を下ろさせない」ため、あらゆる難癖をつける

一部の銀行では、顧客がパスワードを変更するのに「不動産所有証明証」や「社会保険」「医療保険」などの証明の提出を求めているようだ。

ある男性預金者は、パスワードを忘れたため自身の身分証を持参して、銀行でパスワード変更の手続きしようとしたが、銀行側から「不動産所有証明証」の提出を求められた。つまり「不動産を所有している」ことの証明を要求されたのである。

男性が「家は持っていない」といって断ると、銀行側は「社会保険」または「医療保険」などの証明でもいいから提出を、と要求。

男性預金者は、身分証を提示しているのに、さらにその他の証明を求められるなど聞いたこともないとして、銀行側の要求に応じなかった。すると銀行は、男性の「パスワード変更」申請を却下したという。

男性は「持ち家がなければ、パスワード変更ができない? 俺の預金は全てパーになるのか!」と怒り心頭だった模様。

関連する投稿には「これが中国の新しい国策か?」「そこまでして、庶民に住宅を購入させたいのか!」など、怒りのコメントが寄せられた。

そのほか「預金している全過程を映した証拠動画の提供を求められないだけ、まだマシだよ」といった、皮肉たっぷりのコメントも寄せられている。

 

トラックの荷台に載せられた「寝たきりの老人」

「預金を下ろすには、口座名義人である本人が(銀行に)来なければならない」と規定する銀行もある。

そこで家族はやむなく、口座の名義人である「寝たきりの老人」をトラックの荷台に乗せ、銀行へ連れて行くというケースもある。

ほかにも、名義人が死亡して口座の預金を遺族が引き継ぐ場合に、なんと亡くなった家族の「棺」を担いで銀行へ行くケースもあるという。

 

預けた日の午後に、突然消えた預金

ある預金者の実話である。

午前中に600万元(約1.2億円)を銀行の自分の口座へ入金した。昼食をとって、同じ日の午後に確認したところ、預金カードにはわずか690元(約1.3万円)しか残されていなかった。

600万元が煙のように「消えた」。仰天した預金者が銀行の窓口へ抗議すると、銀行側からは何の説明もなく、ただ「家に戻って通知を待て」と言われたという。

家で10日以上待ったが何の知らせもないため、同預金者は致し方なくメディアに連絡つけてメディア記者とともに銀行へ再度出向いた。すると、担当者は「この件は、うちの銀行と関係ない」と、全く無関心な態度だ。

メディア記者が問い詰めた末、銀行側はようやく「上海のある商人が、クレジットカードリーダーを使って情報を詐取し、預金を下ろしたらしい」と明かした。事件は現在、警察が捜査中だという。
 

 

顧客の預金を使い、無断で「金融商品を購入」

西安では「もとは90万元(約1800万円)あった普通預金が、下ろす時になると千元(約2万円)しか残されていなかった」というケースもあった。

預金者が銀行に問い合わせると「大口引き出しなので、数日後また来て」と言われたり、挙句の果てには「総部へ行けば下ろせるが、往復の航空機チケット代は自腹で払うことになる」と、なんとも不可解なことを告げられる。

預金者はやむを得ず、北京にある銀行の総部へ行ってみたところ、この総部がなんと「投資企業」だったことが判明した。

銀行側によると、預金預け入れの業務を担当した銀行職員は「この投資企業について紹介している。同職員が、預金者のために金融商品を購入した」という。

預金者は「確かに紹介されたが、購入は拒否した。もちろんサインしていない」と反論。銀行側は「契約書にサインしてある」の一点張りで、「お金を取り戻したいなら、投資企業に言いなさい」と責任を他へ押し付けた。

この投資企業も「今はお金はない」ことを理由に支払いを拒否。預金者は、警察に協力を求めたようだが、SNS投稿動画ではここで終わっている。

この預金者は鄭さんという退職した女性で、老後の生活費のために貯めた90万元が消えたことに、泣き崩れた。その後、鄭さんがお金を取り戻せたかどうかはわからない。

 

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。