近頃、中国各地の公安局が、教師や保護者に対して、学生がもつ携帯電話に「ツイッターなどの通信アプリがあるかどうかを確認するよう」求める通知を出していたことがわかった。
その名目は、生徒や学生を保護するための「電信詐欺対策」だというが、実質的には、当局によるネット情報の「浄化」を狙ったものとみられている。
全国規模の「特別取り締まり」開始か
中国国内の情報を発信する、著名なツイッターアカウント「李老师不是你老师(李先生はあなたの先生ではない)」は17日、「私のところには毎日、全国各地から大量に(取り締まりに関連する)情報が提供されている」として、中国国内で強まる外国製アプリへの取り締まりについて、ユーザーが自分の身を守るよう注意を促した。
このアカウント「李先生」は、ネットユーザーから送られてきたという各地公安局からの複数の通知画像を添付し、当局の取り締まりの動きが加速化していることも含めて、次のように述べた。
「各地の公安局や学校では、教師や生徒の保護者に対して、子供がもつ携帯電話にツイッター、Telegram(テレグラム)、WhatsApp、BatChat、事密达などの通信アプリがあるかどうかをチェックするよう、緊急に呼びかけている。今回の動きは、全国規模の特別取り締まりの一環である可能性が高い」と伝えた。
これら「アプリのブラックリスト」のなかには、海外製の通信アプリだけでなく、「BatChat」や声を変えて話す機能をもつ「事密达 App」といった中国産アプリも含まれている。
当局はこの「通知」のなかで、これらの電子通信機器に詳しくない保護者もいることを想定したためか、まことに「ご丁寧」に、禁止アプリのアイコンや英語表記なども画像付きで載せている。
「世界中にあるアプリ」なぜ中国人だけ制限される?
これらのアプリが、中国の公安当局にとって「不都合な理由」は何か。
公安当局は「外国の電信詐欺業者は、ツイッターなどの外国通信アプリを使い、未成年者に対して、電信詐欺へ関与することを勧誘している。きわめて危険だ」と主張している。
さらに公安当局は、もし子供の携帯電話に、これら問題のアプリがインストールされていた場合は、保護者は子供を地元の公安局に連れて行き「犯罪行為に関与していないか、調査を受ける必要がある」と呼びかけた。
関連投稿に寄せられたコメントのなかには「居住する集合住宅の連絡用のグループチャットにも、同様の通知があった」と明かす人もいた。
また、コメントのなかには「中国当局は何を恐れている。相手は子供だぞ?」「電信詐欺対策だって?これらのアプリは全世界の人が使っている。なぜ中国人だけが騙されるというのか」といった当局への反論的な指摘も目立っている。
個人SNSがシェアする場を「浄化したい」当局
アカウント「李先生」は9日にも、いま高まっている中国の公務員に対する言論取り締まりに関する投稿をしている。それによると、広東省の紀律検査委員会が省内の公務員に対して「個人SNSに関する報告書類」の提出を求めていたという。
「李先生」が自分の投稿に添付したその書類には、公務員が中国SNS・ウィーチャット(微信)の「モーメンツ」へ投稿してはならない「7種類のマイナス言論」が、セルフチェック・リストのかたちでまとめられていた。
公務員であるこの報告者は、投稿する内容のなかにそのリストの項目に当てはまるものがないかを自分でチェックした後に署名をし、さらに勤務先の署名まで求められている模様だ。
チェック項目を以下に列挙すると、「党と国家の歴史を歪曲・否定・攻撃すること」「党の指導者や英雄を誹謗・中傷すること」「西側の立憲政治や民主主義、普遍的価値、人権問題を宣伝すること」「党が成し遂げた貧困撲滅の成果に疑問を呈すること」「雇用・住宅・教育・司法などの話題を通じて悲観的な論調を広めること」「貧富の差などの話題を議論すること」「疫病感染対策や国産コロナワクチンの有効性や安全性に疑問を呈すること」などである。
このほか、チェックリストに例示された「タブー話題」は、実に多岐にわたっている。
要するに「本当のことを言うな、だろ」
このような当局による「個人SNSの投稿浄化」の動きをめぐり、「これでは風景と食事のことしか投稿できないじゃないか」「いっそのこと、モーメンツごと閉鎖したら?」などの批判が殺到している。
ほかにも、「へえ、奴ら(当局)は自分たちの欠点をよ-く知っているじゃないか」「要するに、本当のことは言うな、ってことだろ」などの皮肉たっぷりのコメントも目立つ。
「モーメンツ(友達の輪/朋友圈)」とは中国製SNS・微信(ウィーチャット)の機能の一つ。フェイスブックでいうタイムラインのようなもので、繋がりのある友人の投稿を閲覧したり、友人に自身の投稿をシェアできる機能である。
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