緊張の高まりが懸念される台湾情勢に関して、米国のトランプ前政権で国家安全保障担当大統領補佐官を務めたロバート・オブライエン氏(Robert O’Brien)はこのほど、「中国の台湾侵攻が早まる可能性」について言及し、警告を発した。
台湾有事に関しては、2021年に当時のインド太平洋地域の米軍トップであるフィリップ・デービッドソン司令官が「6年以内に起きる」と述べている。
つまりデービッドソン司令官は、2027年までに中国共産党の軍隊が台湾へ侵攻する可能性について言及し、警鐘を鳴らした。2027年は、習近平国家主席の今期(3期目)の任期が終わる年に当たる。
これに対してオブライエン氏は、今月1日に行われた読売新聞とのオンライン取材に応じ「中国による武力を用いた台湾への侵攻は、今後1~2年の間にも起こり得る」として、日米両国の抑止力強化を促した。
同氏はまた「日米とその同盟国が、台湾に対して自衛に必要な武器を提供せず、また台湾に必要な外交力を与えなければ、中国は台湾を侵略しても深刻な代償を払わなくても良いと判断しかねない。そうなると、台湾は非常に危険な状況に陥りかねない」とも指摘した。
オブライエン氏は東京都内で開催される国際会議などに出席するために、近々来日する予定だ。
台湾メディア「自由時報」は5月8日付の記事で、共同通信が行ったアンケート調査を引用して「日本人の9割近くが、中国(中共)の台湾侵攻を懸念している」と伝えた。
「自由時報」の同記事によると、質問に回答した日本人約2000人のうち6割が「日本が、敵地に対する反撃能力をもつことを支持する」としている。しかし、そのための防衛力強化に、日本政府が増税を導入することについては「8割が反対している」と伝えている。
台湾メディア「自由時報」は、こうした「抑止力強化は支持するが、増税は不支持」という日本の調査結果から「日本人はジレンマに陥っているようだ」と伝えた。
「台湾有事」によって世界的なシェアを占める台湾の半導体生産が停止すれば「世界経済が受ける打撃は、年間134兆円に上る」と、アブリル・ヘインズ米国家情報長官(元CIA副長官)が今月4日に警告を発したばかり。
さらに、「台湾有事」がもたらす甚大な影響は、世界経済にとどまらず、日本も「前線近くにある国」として多くの重大な影響を受けることは必至だ。
その一つとして、日本と中東をつなぐ海上交通路となっているバシー海峡が封鎖されれば、日本へ向かう民間船舶の安全な航行が阻害されるため、迂回ルートを余儀なくされることになる。そうなれば、日本国内のエネルギー危機を招きかねない。
「ウクライナ侵攻におけるロシアの失敗や対露経済制裁の影響などから、中国は今、多くの教訓を得ている」と指摘するアナリストは少なくない。
その「教訓」とは、何のためのものか。中国共産党による「武力侵攻を排除しない、台湾併呑のため」に他ならない。
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