東京の大学に留学する香港出身の女子学生は3月末、「国家安全維持法(国安法)」違反の疑いで香港当局に逮捕されたことが明らかになった。専門家によれば国安法が日本での言動で適用された初の事例となる。
香港警察国家安全保障部は逮捕理由について、女子学生が「香港の独立を扇動する内容」をフェイスブックに載せたことを挙げている。
米政府系放送局のラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に応じた東京大学の阿古智子教授によれば、女子学生は日本に留学中でパスポートを更新するために一時帰国していた。その後保釈されたが、パスポートを当局に没収され日本に戻れなくなったという。
中国共産党が主導した国安法は、香港における分離独立や中央政府の転覆、外国勢力との結託、反政府的な言論を違法と定める。また香港以外の国や地域での言動も対象になる「域外適用」を規定している。
「今回は『国安法』実施後、日本で適用される初のケースであり、その影響はとても大きい」と阿古氏は指摘する。多くの中国や香港の人権運動や民主活動を支援してきた阿古氏もまた、国安法を考慮して渡航を控えるという。
英国に住む香港市民の李さんは海外中国語メディア「看中国(ビジョンタイムズ)」の取材に対し、「中国共産党の『黒い手』はどこにでもあり、たとえ英国にいても安心感は得られない」と語った。「英国在住の香港人が集会やデモを行うたびに、必ずそばには正体不明の人が写真を撮影している」という。
「中国共産党に反対することは海外にいる香港人の責任であり、決して間違っていない。しかし、その代償は再び香港に戻れないことだ」と李さんは嘆いた。
香港警察は先月、議会にあたる立法会に対し、新たな通信設備を構築するとの名目で58億香港ドル(約990億円)の予算追加を要請した。一部のアナリストは、「香港警察は国家安全保障の名目で、中国の社会監視システムを香港に導入するのではないか」と警戒を高めている。
「国安法」は香港市民の権利が侵害されているとして人権団体や西側諸国などから批判の声が続くいっぽう、香港の警察当局は国安法違反の通報を奨励している。20年から住民らが匿名で通報できる「密告ホットライン」を開設している。
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