北京の著名な元人権弁護士・余文生氏とその妻の許艷氏は13日、市内地下鉄の中で私服警察に連行された模様。余氏は10日、公権運動に携わる法学者と弁護士の2人が実刑判決を受けたことについて、抗議のコメントを発表していた。
余氏は連行される前、余氏自身が「警察から呼び出されている」「もう連行されている」などとツイートした。余氏の妻の許氏も、連行途中の私服警官の車の中で撮影された自撮り動画をツイートしている。
動画の中で、許氏は「地下鉄の中から連れ出された。八角警察署(派出所)へ連行されるかもしれない」と現状を説明した後、「卑劣だ(無恥)、こういう野蛮なことしかできないのね」と当局者らを強い言葉で批判した。
余氏夫婦の連行をめぐり、著名な民主活動家をはじめ、多くの人がその境遇を懸念して「状況を注視する」としている。現在、余氏夫婦がどこにいるのか明らかになっていない。
相次ぎ実刑判決を受ける人権派活動家
今月10日、「国家政権転覆の罪」に問われていた人権派弁護士の丁家喜氏と、著名な法学者で人権活動家の許志永氏にそれぞれ懲役12年、14年の実刑判決が言い渡された。2人は2019年12月に福建省で国政を議論する会合を開いたのち、拘束された。
この判決をめぐっては国連人権高等弁務官事務所や米国務省のパテル副報道官などが非難声明を出している。
余弁護士も10日、丁・許両氏の実刑判決に加え、3月31日に懲役5年の判決を言い渡された覃永佩弁護士の件に対して抗議のツイートをした。
「中国共産党当局が許志永博士を14年、丁家喜弁護士を12年の重い判決を下したことに強く非難する」「自由民主、人権、法治のために奮闘する許志永、丁家喜に敬意を表す。中国の美しき未来は必ず実現すると信じている」と付け加えた。
余氏によると、このツイートをめぐり北京市の当局者が12日に自宅に訪れたという。
その翌日、余氏夫婦は警察に連行された。
法輪功迫害や土地収用、香港民主化運動などに法的支援を続けてきた余氏は、これまで何度も収監され、拷問も受けている。直近では国家主席の公選制導入などを求める憲法改正を提言したため、2018年に転覆扇動で逮捕、4年の懲役刑を受け、今年3月に釈放された。
余氏は当局の監視下に置かれているが、白紙運動など抗議デモが起こるたびにツイッターを通じて、当局に対する抗議の意をあらわにしている。
余氏は収監中に2021年度の人権のノーベル賞と称される「マーティン・エナルズ賞」を受賞している。
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