中国江蘇省徐州市中級人民法院(地裁)は7日、20年以上にわたって女性を不当に拘束し虐待した夫に懲役9年の刑を言い渡した。女性の誘拐に関わった5人も懲役8年~13年の刑に処された。批判者らは当局が追及を恐れ、ジャーナリストらを弾圧していると指摘する。
この判決は、昨年2月に江蘇省の農村で発見された30代女性の虐待事件に関するもの。女性は首に鉄の鎖が巻かれ、氷点下のなか離れの小屋に監禁されていた。少女時代に誘拐され人身売買されたという。
女性は8人の子供を産まされたほか、地元政府役人にも凌辱されていたとの情報もある。判決には夫に対する「強姦罪」が含まれておらず、軽すぎる判決との批判も相次いだ。中国の著名な弁護士である李荘氏は「虐待は強姦よりずっと罪が軽い」と指摘する。
調査ジャーナリストの趙蘭健氏は、事件の真相を隠す地元公安などの機関が真の悪であると指摘する。同氏はこの事件への調査で当局に追われ米国へ亡命した。
「今回判決を受けたのは最低層の加害者ばかり。事件を20年以上にわたり隠蔽し、事件が明るみになった後も結託して事実を歪曲した地元公安や行政こそ審判されるべき対象だ」と主張した。
「鉄の鎖の女性」は誰?
女性の身元については論争がある。江蘇当局や裁判では「雲南省の小花梅さん」と判定した。しかし、趙蘭健氏ら有志者らの調査では、当時12歳で誘拐され行方不明になった「四川省の李瑩さん」と推定している。
趙蘭健氏は女性の身元を確認するために雲南省を訪れたが、小花梅の叔父は「鎖の女性」が小花梅ではないと断言した。その後、趙氏は当局に拘束され拷問を受けた。その後米国に亡命した。
「鎖の女性」は精神病院に入院したとされるが、その後の消息は不明。中国人権弁護士の吳紹平氏は、彼女自身が語る機会を与えられるべきだと指摘する。
官製メディアの新華社通信は、鉄の鎖の女性が統合失調症を患っているものの、状態が安定していると報じた。しかし、彼女は依然として認知障害に悩まされているという。
米国在住の中国人権弁護士の吳紹平氏は、女性の容態が落ち着いているのであれば、なぜ彼女自身にしゃべらせず、彼女と外界との接触を断っているのかと問いかけた。当局が鎖の女性の母親や叔父とのDNA鑑定を妨害し、女性が住む村を隔離していることを挙げ「真相が明らかになることを恐れている」と述べた。
「当局は人身売買を容認している」
中国問題専門家の李沐陽氏は自身の動画番組で、重くない判決を受け中国共産党による人身売買が容認され、今後も被害者が増える恐れがあると指摘している。また問題を放置した官僚たちは責任を問われていないと述べた。
中国統計局の人口動態によれば21年末時点の総人口14億1260万人のうち、女性6億8949万人に対し、男性7億2311万人と3362万人も多い。一人っ子により政策男女比のバランスが崩れ、特に僻地や貧しい農村部では多くの男性が結婚できない状況にある。これも踏まえ、人口売買が今後も存在し続けるだろうと李氏は指摘した。
趙蘭健氏のほか同問題への追及を試みる人への取り締まりもある。事件の徹底調査を呼びかけた広西省の男性には昨年11月、懲役4年6か月の判決が言い渡された。
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