江蘇省南京にある「郵政儲蓄銀行南京江寧支店」へ預けられた顧客の預金243万元(約4700万円)が、同行の銀行長によって不正に使用されたことが発覚して以来、4年の歳月が経つ。
横領の被害を受けた預金者側の一人、徐秀珍(79歳)氏はこのほど、手に身分証を持ち、「事件発覚から4年が経つが、未だにお金は返って来ない」「今は借金まみれだ。銀行よ、お願いだから早く預金を返してほしい」と訴える動画をSNSに投稿し、物議を醸している。
今も進まぬ被害者への補償
中国メディア「九派新聞」の3月20日付の報道によると、この件の被害者である李さん一家は2018年末に問題の銀行へ預けた預金が引き出せなくなったことに気づき、すぐに警察に通報した。警察の介入で初めて、預金の引き出し記録などが偽造されていたことがわかったという。
2019年4月、当時の銀行長であった人物が逮捕され、翌年9月に資金横領の罪で懲役2年3ヶ月の実刑判決が下された。この横領事件の犯人は、刑期を終えて今は自由の身になっている。しかし、銀行から被害者に対して、被害金額に相当する補償は進んでいない。
失われた預金を取り戻すため、李さん一家は問題の銀行を訴えた。裁判所は、横領した元銀行長に対して横領額の243万元を銀行に返還するよう命じるとともに、銀行に対して「被害を受けた預金者へ預金の全額返還」命じた。
しかし銀行側は「預金者が長期間にわたって記帳しなかった」などを理由に同判決を不服として、上告した。2022年5月、南京市中級人民法院(裁判所)は一審判決を破棄し、再審を命じた。
李さんによると、再審後、この件をめぐって銀行側と数度の話し合いや調停が行われたが「銀行は被害金額のうち総額で120万元(約2317万円)しか補償する気がない。今も判決待ちの状態だ」という。
顧客の預金を横領して「高級車を購入」
李さんによると、20年前、この銀行は大口顧客の家へ訪問するサービスがあったという。銀行側も預金集めのために、大口顧客に対して多くのVIPサービスを提供してきた。
VIPサービスとは、銀行長が直接預金者の自宅を訪問し、顧客から預かった預金を銀行へ入金した後、記帳された通帳や入金証明などを届けるため再度預金者宅へ戻るといった類だった。また毎月、預金者宅にはお米や食用油などの礼品が届けられたという。
李さんは、横領した銀行長と知り合いであった。そのため、営業ノルマを抱える銀行長のところへ預金することにしたという。「まさかあの人が、そんなことをするとは思いもしなかった」と李さんは当時を振り返る。
この銀行長は「李さん一家の預金を使って高級車を購入した」と法廷で証言している。また、李さんによると、被害者はほかにも多くいて、被害金額は合計3千万元(約5.8億円)を超えていると公安関係者から聞いたという。
中国社会に広がる銀行不信
中国メディアによる報道が出た後、この話題は3月20日に中国のSNSでホットリサーチ入りした。
「預金者が長期間にわたって記帳しなかった」という銀行側の主張には納得がいかないネットユーザーも多く、寄せられたコメントには銀行への批判が目立った。
なかには「預金を使い込まれてから、銀行を訴えてもどうにもならない。こんなニュースはもう見飽きたよ」といったコメントもあり、中国の国内銀行への不信感が民間で広がっている。
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