格差拡大、対中依存強まる…東京都、太陽光パネル義務化条例に有識者ら懸念

2022/12/07
更新: 2022/12/07

東京都が太陽光パネル設置義務化に向けた条例改正を推進するなか、有識者らは6日に都庁で記者会見を開き、設置に伴う問題点への懸念を示した。電気利用者間の格差拡大や、災害時に感電する危険があるほか、中国への依存度を高める恐れがあると指摘した。

「目標達成ありきではなく、国民、地方の命と暮らしを軽視せず、配慮しながら進めていただきたい」。こう訴えるのは、全国再エネ問題連絡会の山口雅之共同代表だ。メガソーラーや風力発電所の建設により各地で自然環境が破壊され、土砂災害や環境被害への懸念が地元住民の間で高まっていると述べた。

2025年4月の設置義務化に向け、都議会では1日に条例改正案が提出された。事業者には人権を尊重するよう求める都の姿勢に対し、キャノングローバル戦略研究所の杉山大志研究主幹は「無理難題ではないか」と苦言を呈する。

「都は太陽光パネルの設置を義務づけるいっぽう、パネル事業者には人権尊重を義務化している。パネルのほとんどが中国産だ。事業者ができない場合に都はどのように責任を取るつもりなのか」

世界で使われている太陽光パネルの8割は中国製であり、その多くは新疆ウイグル自治区に由来する。杉山氏は、中国製パネルには強制労働の疑いが強く、欧米諸国では輸入禁止の動きが広がっていると述べた。

再生可能エネルギーに詳しい技術士事務所代表の室中善博氏は、太陽光パネルを設置しても気温を下げる効果はゼロに等しく、税金投入の効果は「最悪」だと評した。パネル設置の補助金の財源は税金や再エネ賦課金であり、「一部の都民が儲ける」構造は不公平感を生み出すと指摘した。

東京大学公共政策大学院の有馬純教授は、日本のカーボンニュートラル推進により最も利益を受けるのは、最大の排出国でありながら先進国に太陽光パネルや風車を輸出する中国であると強調。東京都のパネル設置義務化は中国に「追い銭」を与えるに等しく、中国製の再エネ製品への依存度が増大すれば地政学的リスクにつながると警鐘を鳴らした。

太陽光パネル設置義務化に反対する上田令子都議は、5月に行ったアンケート調査では反対派が圧倒的多数となり、パブリックコメントでは4割が反対したと指摘。施行までの2年間で改正案の問題点を周知させたいと述べた。

太陽光パネルをめぐっては、大規模水害などでパネルが水没した場合、感電事故が起きる危険性も指摘されている。杉山氏は、江戸川区などでは大規模水害が想定されていることから、都は安全性を十分確認すべきだと語った。

太陽光パネルの耐用年数が経過し、廃棄が本格化するのは2030年代後半になると杉山氏は考える。廃棄業者が30社しかない現状では、不法投棄や海洋への投棄が大きな問題になるという。

東京都議会は第4回定例会が1日に開会した。太陽光パネルの設置を義務付ける条例改正案を含む64議案を都が提出。小池百合子知事は所信表明で設置義務化について「全国初の制度だ。都は日本の先頭に立ち、脱炭素化をけん引する」と述べた。

世界ウイグル会議のドルクン・エイサ総裁は5日の会見で、新疆ウイグル自治区で強制労働によって作られた太陽光パネルを使用すれば「ジェノサイドに加担することになる」と述べ、設置義務化条例を進める小池都政に慎重な判断を求めた。

政治・安全保障担当記者。金融機関勤務を経て、エポックタイムズに入社。社会問題や国際報道も取り扱う。閣僚経験者や国会議員、学者、軍人、インフルエンサー、民主活動家などに対する取材経験を持つ。