監視社会の中国で、相次ぎ中高生が行方不明 「臓器収奪かもしれない」憶測呼ぶ

2022/11/26
更新: 2022/11/26

中国国内では最近、中国各地で中学生や高校生の行方不明者が相次いでいる。中国は世界で最も多くの監視カメラを備え、携帯電話情報や健康コードなどで個人に対する監視網が張り巡らされているにもかかわらず、子供たちの行方はわからないままだ。中国共産党と病院、闇組織が絡む「臓器収奪の被害に遭っているのではないか」などの憶測も広がっている。

学校敷地内で失踪?

捜狐網や網易新聞、新浪網などは江西省の高校生1年生の男子生徒、胡鑫宇さんの失踪事例を伝えた。10月14日夕方、江西上饒市鉛山県の学校に通う胡さんは夜間授業を受けに寮を離れたところ、行方がわからなくなった。事件から1カ月以上が経ち、池や浄化槽まで捜索しているがいまだ発見されていない。

胡さんが通う全寮制の学校の広大な敷地は、周囲を高い塀で覆われている。胡さんが所持品を放置したままであることから、自らの意思で失踪したのではなく連れ去り事件の可能性もあるという。いっぽう、学校には複数の監視カメラが備えられているが「当日の記録は消去されていた」と事情を知る関係者は大紀元の取材に答えた。

中国の受賞ジャーナリスト、趙蘭健氏は「閉ざされた校内での失踪であり、当局は情報を押さえているだろう」「中国では監視カメラは至るところにあるうえ、防疫部門は携帯電話の位置情報や健康コードなどで市民一人ひとりを監視している。当局に見つける気さえあれば、見つからないはずがない」と大紀元の取材に述べた。

趙氏は江蘇省徐州で、首に鎖を繋がれ行動を著しく制限された女性について報じたことで米NGO団体から授賞されているジャーナリストだ。

次のケースは武漢市に住む14歳の劉奥成さんだ。11月12日の夜8時半ごろ、マンションに住む劉さんはゴミを捨てに地上階に降りたのち、行方がわからなくなった。父親を名乗るオンラインユーザーは失踪から8日後に河川で子供の遺体が発見されたが、公安当局は遺体を家族に見せることを拒んだという。

こうした子どもたちの失踪は、この半年で多発している。ニュースやオンラインで確認できる情報などをまとめれば、7月15日から11月11日まで少なくとも21人の行方がわからなくなった。四川、広東、湖南、湖北、浙江と範囲も広く、最年少が8歳、最年長は17歳だった。

昨年、中国民社傘下の研究機関・中民社会救助研究院と行方不明者調査機関が共同発表した「中国行方不明者白書(2020)」の統計データによれば、2020年に中国で行方不明になった人の数は100万人に上り、1日平均2740人が失踪している。

臓器収奪を疑う声

行方不明の子ども達から臓器が摘出されているのではないかとの憶測が広がる要因に、病院が臓器移植の成功を強調していることもある。11月11日、医療プラットフォーム・健康界は「世界初!武漢協和医院、同じ日に3件の小児心臓移植手術を成功」と題した記事を伝えた。

報道によると、華中科技大学附属協和医院(別名・武漢協和医院)の手術室で7日、外科主任の董念国教授率いる医療チームが3人の子供の心臓移植手術に成功したという。同院は同日、小児の心臓移植の症例数が世界で最も多い医療機関となった。

このほか、中国国家衛生健康委員会は9月、人体臓器移植条例の改正を発表した。臓器提供システムの強化と売買など不正防止をより厳格に行うとした。

姓を黄とする中国国内の有識者は大紀元の取材に答えた。「中国各地で不可解な失踪事件が相次ぐなか、病院で臓器移植成功のニュースが報道され、人々は不安になっている。ネット上では互いに注意喚起している。悪い人たちに子供や家族が誘拐・殺害され、臓器を抜き取られるといったことが起きないように、と」

この有識者は、武漢で数百人の大学生が失踪した事件も当局や中国は動いていないとし、「当局の関与がなければ隠し切れるものではない」と指摘した。

2006年に国際人権弁護士デービッド・マタス氏らによる独立調査で、中国では収監された法輪功学習者ら無実の囚人が、移植のために強制的に臓器を奪取されているとの報告書を発表した。法輪功弾圧の開始時期と中国の臓器移植件数は比例して増加している。マタス氏は近年発表した共著論文で、臓器収奪と法輪功迫害は「コールド・ジェノサイド(世間に気づかれず静かに進む虐殺)」だと論じている。

在米の中国評論家である横河氏はラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に、こうした国際的な批判の後もなお中国の移植ビジネスは続いているとした。背景には、あまりにも多くの利益の循環があるためだと推測する。

横河氏によれば、中国人は文化的に死後、臓器提供をしないため、法輪功学習者のほかにもさらなるドナー、つまり需要に応じた供給源が求められているとした。

前出のマタス氏は10月の訪日時に東京で開いた講演会で、近年はウイグル人が臓器収奪のターゲットに追加されているとし、中国共産党の影響が強まる香港や台湾の人々も、誘拐と臓器収奪の危険性が高まっていると述べた。

横河氏はまた、中国共産党は収監者のみならず、多くの一般市民を含む世界最大の生体データバンクを保持しているとも語った。これらは患者とドナーの臓器のマッチングテストの際に有効な情報となっているという。

日本の安全保障、外交、中国の浸透工作について執筆しています。共著書に『中国臓器移植の真実』(集広舎)。
夏松
駱亜
中国語大紀元の記者、編集者。