中国共産党第20回全国代表大会で、環境部(省)は公式データを引用し、過去10年間で環境管理の効果が高まったと主張した。しかし、中国の調査ジャーナリストは、中国本土の環境の悪化は衝撃的で、何十年も回復しない可能性もあるという。
生態環境部副部長の翟青氏は党大会中の記者会見で、過去10年間の「習近平と生態文明の思想」の指導の下、中国の生態環境保護が全面的に前進していると述べた。中国が世界で最も早く大気の質を改善した国になったこと、7億7000万人分の飲料水の安全性評価が向上したこと、300種類以上の希少・絶滅危惧野生動物・植物の復元と個体数の増加など、数多くの成果を主張した。
この公式の主張について、中国大陸の調査記者・趙蘭健氏は10月23日の大紀元の取材で、中国の大気汚染、地下水汚染、土壌汚染などはいずれも「衝撃的な水準」にあると指摘した。人々の反公害デモは弾圧され、調査記者は黙殺され、環境部高官だけが虚構を語っているという。
「環境保護評価の基準は、まず非政府組織(NGO)の評価制度の確立があるべきだ。そうした条件があれば、人々の生活に関わる環境保護成果を客観的に評価することができるようになる」と趙氏は語った。「彼(翟氏)は中国共産党の環境管理がいかに優れているかを自画自賛している。記者会見での質問はすべて事前に準備されたもので、そのデータは信用できない」
略奪的な開発 自然保護区を破壊
趙氏は、中国共産党の環境保護政策と経済発展モデルが矛盾していることを指摘した。「保護された自然資源景観の中には、張家界市や長白山脈のように、略奪的なモデルで手っ取り早く商業的成功を収めるために開発されたものもある」
「私は長白山脈を4回訪れた。最も早い訪問は1994年で、再び2015年に訪れたが、自然保護区が略奪され、人工的に開発されていた。中国のすべての景勝地は同じ問題に直面している」と趙氏は述べた。
趙氏は拝金主義が先走る保護区政策を批判した。「米国やチリなど、多くの国の生態公園を訪れたが、そこでは道路を作ることも、商業観光をすることも許されていない。しかし、中国は観光経済モデルを第一に考え、チケット販売による観光収入を第一に考えている」
趙氏は、中国の長江、黄河、青海、チベット、内モンゴルなどの生態系の状況を10年かけて調査し、同じ略奪的開発モデルが自然環境に与える惨状を目の当たりにしてきたという。
水源、漁業に影響を及ぼす砂漠化
2018年、趙氏は青海省南部のチベット高原にある三江源の各地に現地調査に赴き、多くの新しい砂漠の広がりを目の当たりにした。過去の地図と比較すると「この砂漠はここ30年の間に形成されたことがわかった」という。30年前は、墓地や沼地だった。
「この砂漠の存在は、少なくとも三江源流域の生態環境が30年前と比べ衝撃的に変化していることを証明している。専門家にも話を聞いたが、三江源流上流の砂漠化が、実は上海や長江水系全体の水不足を引き起こしているとの見方もある」と趙氏は言う。
三江源は、文字通り「三江の源」を意味し、長江、黄河、澜沧江の発祥の地である。「中国の給水塔」とも呼ばれ、中国の生態系状況や国家経済の発展に重要な役割を果たしている。
「長江や黄河、多くの水系が寸断されるなど、中国の生態環境が悪化していることは、誰の目にも明らかだ」。「水系の断絶は、河川沿いの農業、畜産業、漁業の発展にも影響を与える。したがって、これらの環境問題については、政府のスローガンがいかに優れていても、現実は誰の目にも明らかである」
中国共産党の習近平指導部は、第20回全国代表大会の演説で環境について、「環境汚染の防止と管理を深く推進し、重要な河川、湖沼、貯水池の生態保護と管理をさらに推進する」という2点を強調した。
これに対し、趙氏は習近平の発言について、「環境保護やエコの問題が差し迫っており、言及せざるを得なかったのだろう。気がついたときには、実はすでに環境はある程度悪化していた。社会全体の発展モデルが危機に瀕している」
趙蘭健氏の2014年の報告書は、衝撃的なテンガ砂漠の汚染を明らかにした。地元の牧童たちは、砂漠の後背地に汚水池が出現し、地元企業が未処理の排水を汚水池に流していることを指摘した。彼の記事と写真はその後、政権によってインターネットから削除された。
ジャーナリストへの検閲、抗議活動
趙氏は「中国は2014年以降、メディアに対する統制が強化され、調査報道が厳しく弾圧されている。同時に、中国各地で数万人規模の大規模な反汚染デモが相次いで発生したが、いずれも中国共産党の軍と警察によって残酷に弾圧されている。
中国の9割の都市の地下水は、企業による汚水の地下深部への排出により汚染されている。ある公益活動家は 「中国ガン村マップ」を作成した。公害のため、全国に数千のガン村があると趙氏は言う。
「中国の現在の環境はどうか?」と趙氏は尋ねた。「最終的な評価制度は政府の手に委ねられている」という。「習近平が緑の山河を提唱したが、地方政府は緑の山を復活させることができないでいた。その結果、山の上からプラスチック製の人工植物が何層にも広がって、禿げた山が人工的な緑の山になり、緑の山に緑のインクやペンキを吹き付けたところもたくさんあった」と述べた。
彼は、「中国の自然環境全体の破壊、観光資源の破壊、生態資源の破壊は、今後数十年、あるいは数百年の間には回復しないかもしれない」と述べた。
(翻訳・大室誠)
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