グリーンピース創設者「地球温暖化は300年前から」政治化した環境運動を批判 1/2

2022/09/10
更新: 2022/09/10

環境運動には金と力が集まることを知った左派の政治家に、グリーンピースは「ハイジャック」されてしまったー。こう告白するのは、半世紀あまり前にこの環境運動団体を創設した生態学博士パトリック・ムーア氏だ。

ムーア氏は1971年にグリーンピースを共同設立し、9年間にわたってグリーンピース・カナダの代表を務めた。1979年から1986年までグリーンピース・インターナショナルのディレクターを務め、同団体の方針と方向性を決定する原動力となったが、1986年に同団体を去った。15年間の在任中に、グリーンピースは世界最大の環境保護活動団体となった。

「グリーンピースは環境の『グリーン(自然保護)』と人々の『ピース(平和)』が組織の設立理念だった。しかし『ピース』は忘れ去られ『グリーン』だけになってしまった」と、ムーア氏は胸中を語った。

このインタビューは、21年11月にムーア氏と韓国ソウルの愛和女子大学環境科学工学科のパク・ソクスン教授が交わしたメールのやりとりをまとめたもの。22年7月7日、ムーア氏の許可を得て、朴氏が大紀元に提供した。両氏は、気候の緊急事態はないとする「世界気候宣言(WCD)」に署名した1100人の科学者や専門家の一人である。

グリーンピースの実態

ムーア氏は、グリーンピースは環境運動に資金と権威が集まることを知る欧米左派の政治家の影響が高まり、科学に基づく組織から政治運動及び資金調達組織に変わってしまったと指摘する。

「大衆に恐怖と罪悪感を植え付け、大衆から資金集めをするためのストーリーを作ることに集中している」と述べた。「彼らの主張する化石燃料、原子力エネルギー、CO2、プラスチックなどのキャンペーンは不条理であり、文明を麻痺させている。『経済を破壊しなければ世界は終わる』と人々に思わせるように仕向けられている。今や、彼らは環境と人類文明の両方の未来に悪影響を及ぼす存在となっている」

政治活動においては、国連や世界経済フォーラムなどでも他の政治工作者と協働しているという。「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は科学組織ではなく、世界気象機関と国連環境計画からなる政治組織だ」と指摘し、気候の非常事態というストーリーを補強する情報を提供していると明かした。

天然ガス資源開発の拒否、原子力発電の反対、化石燃料全般への投資撤退…環境活動家たちはエネルギー政策をはじめ、実現性の低い技術を推しつつ発展を遅延させるような政策を欧州諸国の政府に組み入れることに成功した。これらはEUのエネルギー危機の一因といわれている。

「環境活動のリーダーの多くは『人間は地球や自然の敵だ』と言わんばかりで、人間だけが『原罪』を背負っているという考えに陥っている。彼らの信じる哲学は『人が少なくなれば世界は良くなる』というものだが、彼らの言動からは他の人より優れているかのように振る舞う高慢さがにじみ出ている」

 

二酸化炭素を「悪者」扱い

ムーア氏によれば、地球はすでに3世紀前から温暖化していると指摘する。「地球は1700年頃から温暖化しており、化石燃料の使用はそれから150年後のことだ。1700年頃は小氷河期のピークで非常に寒く、作物の不作や飢餓の原因となった。1950年頃までは化石燃料の使用量も二酸化炭素(CO2)の排出量も、現在と比べると非常に少なかった。長い歴史の中で起きた気温の周期的な変動の原因はわからないが、CO2でないことは確かだ」

今日、気温とCO2の関係が論争の中心になることが多く、CO2が温暖化の元凶であると考える人は多い。しかし「政治家や官僚からお金をもらっている科学者やメディア、投資家などが背景にいる。その他大勢は、彼らの話を信じてしまった一般の人々だ」と述べた。

ムーア氏は、350年間(1659年から2009年まで)イングランド中部で継続的に測定された気温のグラフを提示した。「もし、CO2が温暖化の主な原因なら、CO2の曲線に沿って気温が上昇するはずだが、そうなっていない」と説明した。

1659年から2009年まで、イングランド中部の温度と二酸化炭素排出量(パトリック・ムーア氏提供)

ムーア氏は、CO2を悪者扱いすることについて「全く馬鹿げている」と酷評する。「CO2は地球上のすべての生命の基礎であり、現在の大気中の濃度が増加しても、生命が存在してきた大部分の期間より低い」と付け加えた。

この研究は、豪州政府機関CSIROが豪州国立大学(ANU)と共同で実施したもので、豪州、北米、中東、アフリカの乾燥地帯の一部で、1982年から2010年までの衛星観測データをもとに行われた。

2013年の研究では、CO2の上昇は植林の増加と相関しており、CO2濃度の上昇によって、世界の乾燥地帯における緑の葉が11%増えたことが明らかになった。これは「CO2肥沃化」と呼ばれる現象である。

CSIROの研究者は「CO2の増加によって個々の葉の水分消費量が減少すれば、植物は葉の総数を増やすことで対応する。湿潤な場所に比べ、砂漠やサバンナでは被覆が完全でないため、葉の被覆の変化は衛星で検出することができる」と語っている。

ムーア氏によると、世界中のほぼすべての商業温室栽培農家では、作物の収量を最大60%高めるために、温室に注入するCO2を購入しているという。温室栽培の農家は、現在の大気中の2倍、3倍と、より多くのCO2を温室に投入している。自然に育つほとんどすべての植物はCO2に飢えており、成長が制限されているとのこと。

ムーア氏は「ほとんどの環境活動家、政治家や専門家は、化石燃料の使用量やCO2排出量の削減を、彼らが提案するスケジュール内で止めることはできないことを知っている」と述べた。

「私は、より多くのCO2が環境と人類の文明の両方にとって完全に有益であることを知っている」と語るムーア氏は、二酸化炭素がもたらす人々の生活と経済への貢献について啓発する非営利活動組織「CO2連合」理事を務めている。

豪州科学産業研究機関(CSIRO)と豪州国立大学(ANU)による衛星観測の解析では、1982年から2015年の間に世界の乾燥地域では「二酸化炭素(CO2)肥沃」の影響を受けて植生の分布面積が11%増加したと発表した(パトリック・ムーア氏提供)

 

カーボンニュートラル」の皮肉

ムーア氏は「カーボンニュートラルやネット・ゼロも政治用語であり、科学用語ではない」と述べた。アル・ゴアやレオナルド・ディカプリオ、グレタ・トーンベリら著名人が述べてきたが、彼らはいずれも科学者ではないと一蹴する。

ムーア氏によると、ロシア、中国、インドの人口は人類全体の40%を占めており、彼らはこの「反化石燃料のアジェンダ」には賛成していない。ブラジルやインドネシア、アフリカ諸国を加えれば、いわゆる「気候変動に熱心ではない」人の数は人口の過半数になるという。

もう一つの大きな皮肉は、カナダ、スウェーデン、ドイツ、イギリスなど最も寒い気候の国の多くが、温暖化を最も懸念していることだ。例えば、カナダの年間平均気温は-5.35度になる。

また、日本や米欧も積極的に施策に取り入れている太陽光や風力発電など再生可能エネルギーについても、ムーア氏は「かなり高価であり信頼性も非常に低い」と指摘する。石炭火力や水力といった「より信頼性が高く、よりコストの低い他の技術を使用した場合よりも、国を貧しくするだろう」とも言い切った。

「太陽光と風力発電事業者は、政府の補助金、税金の償却、義務付けに大きく依存しており、一部の事業者らが潤っている。いっぽう『環境にやさしい』との名目の下、太陽光や風力発電が割高であっても購入せざるを得ないと人々は思い込まされている」。

利用する面積の割合に対するエネルギー生産効率の低さをムーア氏は指摘する。太陽光や風力は「広大な土地を必要とするが、ほとんどの時間利用できない。これらが利用できない時には、原子力、水力、石炭や天然ガスなどの信頼できるエネルギーが必要となる」

ムーア氏によると、太陽光と風力発電の建設には、採掘、輸送、建設のために膨大な量の化石燃料が使われている。そして、多くの場所で、風力発電所の建設と維持に必要なエネルギーに相当する量を、その寿命の間に生産していないという。

「なぜ、信頼できるエネルギー(原子力、水力、天然ガスなど)を第一の供給源としないのか疑問である。供給源となるのであれば、太陽光と風力発電は不要になる」

(翻訳・大室誠)