米バイデン政権が電気自動車(EV)の普及等の気候変動対策を推進するなか、カリフォルニア州は25日、2035年までにガソリン車の新車販売を禁止すると発表した。いっぽう、米国はEVなど電子製品の生産に欠かせないレアアース調達の8割近くを中国に依存しており、識者は揺さぶりの材料に使われる恐れがあると懸念を示した。
米国のピート・スタウバー下院議員は新唐人テレビに出演し、バイデン政権が進める再生可能エネルギー政策が、米国の対中レアアース依存を強めていると指摘。中国共産党がレアアースの輸出を停止すれば「国防から世界中の製造業に至るまで、大打撃を受ける」と述べた。「バイデン政権はなぜ国内採掘に力をいれないのか」と強い危機感を示した。
電気自動車(EV)や工業用電機機器などの普及にともない、レアアースの需要は増加している。米国では、1960年代から1980年代にかけてカリフォルニア州のマウンテンパス鉱山でレアアースを生産していたが、その後レアアースの採掘や精錬時の環境問題などが相次ぎ、中国からの安価な輸入品に代替された。
しかし、米中対立が続くなか、中国が米国への供給停止に動くことを懸念し、自国のレアアース資源の採掘やサプライチェーン多様化の重要性が叫ばれている。イエレン米財務長官は先月、レアアースへの「過度な依存」を解消すると述べた。
スタウバー氏によると、バイデン政権には、必要な鉱物資源を国内で採掘するだけの政治的意志がないと指摘する。ニッケル、銅、コバルトはミネソタ州の現存する鉱山ですべて採掘可能だ。しかし、米国はこれらの採掘を許可する代わりに、オフショア製品のサプライチェーンを中国から韓国といったより友好的な国に移すだけの「フレンド・ショアリング(friendshoring )」政策を進めていると語った。
「米国には最高の環境基準と労働基準がある。サプライチェーンを維持し偉大な国家の運命は我々の手中にある」「政治的な意志があれば米国を、鉱業と鉱物の優位性のある国に戻すことが可能だ」
レアアースの武器化
米シンクタンク・ハートランド研究所の政策アドバイザーを務めるアン・ブリッジズ氏は、中国が重要資源を「武器化」することは、「前例がないわけではない」と語る。2010年の尖閣諸島をめぐる日中対立で、中国当局がレアアースの輸出を一時的に停止した例を挙げ「日本の製造能力に大きな影響を与えた」と新唐人テレビの取材に応じた。
中国は、台湾や南シナ海といった「核心的利益」が侵害されたと主張する際に経済的圧力を加える傾向にある。ペロシ米下院議長が今月初旬に訪台した際には、台湾向けの天然砂の輸出を停止している。
前出のスタウバー氏は、バイデン政権が電気自動車をはじめとする世界的な気候変動対策を推進することに疑問を呈した。「レアアースの需要が増加しているが、それはどこから調達するのか?」と投げかけ、慎重に実施しなければ、米国の安全保障が脅かされることになると警戒を促した。
(翻訳編集・山中蓮夏、Wenaliang Wang)
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