スリランカ、燃料販売を停止 逃げ出す国民も

2022/06/29
更新: 2022/06/29

経済危機に陥っているスリランカは27日、自家用車向けの燃料販売を停止すると発表した。公共交通機関や保健など必要不可欠なサービスのみ燃料を販売し、国民には在宅勤務を促した。この混乱から逃れようと、スリランカから脱出を試みる国民も続出している。

バンドゥラ・グナワルダナ貿易大臣は「保健分野などの必須サービス以外は燃料が販売されなくなる。わずかな蓄えを節約したい」と記者団に説明した。スリランカのテレビ局ニュース・ファーストによると、措置は6月27日から7月10日まで実施される。

スリランカの首都コロンボでは全校が2週間休校となるほか、国内の燃料消費を抑えるため、州間の輸送サービスも停止するという。

ロシア産原油

スリランカは石油が不足する中、燃料の直接供給についてロシアと協議中だ。スリランカの大臣2人が27日、燃料を入手するためにロシアに出発した。

カンチャナ・ビジェセケラエネルギー相は「ロシア政府や企業から直接石油を購入できれば、我々にとって有利になる。現在交渉中だ」と記者団に語った。同氏によればスリランカは先月、唯一の製油所を再開するために、9万トンのロシア産原油を購入したという。

スリランカは、中共ウイルス(新型コロナ)の流行に加え、中国共産党が進める広域経済圏構想「一帯一路」のインフラ計画の負債で財政が立ち行かなくなる「債務の罠」に陥っている。

ウィクラマシンハ首相は22日、国営セイロン石油公社は、7億ドルの負債を抱えているため、燃料を提供してくれる国はないと述べた。

逃げ出す国民

救命支援が必要だとし、国外脱出する国民も急増している。ここ数週間で300人以上のスリランカ人がオーストラリアへの脱出を試みた。

現地報道によると、スリランカ警察はオーストラリアへの逃亡を図ったとして約399人を逮捕した。豪スカイ・ニュースが報じたところによると、オーストラリア政府は、同国に不法入国するスリランカ人を強制送還すると発表している。

スリランカは、外貨準備高が過去2年間で70%も激減し、破産寸前の状態にある。同国では政府に対する抗議デモが暴徒化し、少なくとも9人が死亡、219人が負傷した。これを受けて5月9日に当時のマヒンダ・ラジャパクサ首相が辞任した。
 

米国とアジア太平洋地域のニュースを担当するフリーライター。