金融市場は、ロシアの侵略、強まるインフレ圧力、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ、新型コロナウイルスの新変異株など、さまざまな要因に影響されている。その結果、人々の財産も危険に晒されている。
投資家にとっては混乱の時代である。例えば、CNBC(米経済専門ニュース放送局)の専門家の言う事と、フォックス・ビジネス(米FOXニュース傘下のビジネスニュースチャンネル)の専門家の言う事は全く違っている。
株価下落が収まり、押し目買いの時期なのか、それともまだまだ下落が続くのか?もしそうだとしたら、それはどこまで続くのだろうか?
インフレ抑制のためのFRBの大幅な利上げは、株式市場にとって最後のとどめとなり得るのだろうか?
確かにいろいろと騒がれているが、実際はそれほど複雑ではない。株式の変動を予測するのに一番大事なことは、債券と株式が切っても切れない関係にあるという事だ。
債券の話
米国国債の利回りは、無リスク金利と見なされている。また、米国国債は世界で最も安全で完全にリスクのない投資である。米国政府の「全面的な信頼と信用」に裏付けされているからだ。
したがって、国債の利回りは、他のすべての投資のリターンを決定する際の標準となる。
他の投資は、本質的にリスクが高い。社債、高利回り債 (ジャンク債)、株式はいずれもより高いリスクを伴い、投資者に対して高いプレミアム(金利差相当分の収益)を支払う必要がある。
10年国債(10年債)の平均利回りは3.86%である。2年前、コロナ禍により経済活動が停止したため、FRBは事実上のゼロ金利政策を導入した。国債利回りもそれに追随し、ほぼ1年の間1%を割り込んだ。
現在では、長期金利の指標である10年債の利回りは2%前後となり、コロナ禍前の水準まで戻った。
FRBがインフレ抑制のためにさらなる利上げを決定した今、利回りはさらに上昇する可能性が高い。そうなると複数の問題が生じる。
株式市場について
国債市場の金利が上昇すれば、株式の期待リターンや配当利回りも上昇する必要がある。 S&P500指数の配当利回りは、SPY(S&P 500 ETF Trust)で確認できる。
2018年末のS&P500の高値2940時点では、それに伴う配当利回りは1.7%だった。その3ヵ月後、指数は21%暴落し、利回りは2.12%に跳ね上がった (個別銘柄と同様、SPYの利回りは指数の価格と反比例する)。
過去10年間の平均利回りは1.84%である。過去5年間では1.71%である。
これらの数字を追ってみると、あまり腑に落ちないだろう。10年間の平均利回りを見ると、株式は債券を約2%も下回っている。これは、株式(指数)が利回りベースで過大評価されていることを意味する。このような過大評価は長く続かず、価格調整(リプライシング)が必要になる。
現在のレベルでは、これは良いことではないだろう。
20年ぶりの「分離」
ひっきりなしに投入される安価な資金で株式市場を支えようとしたおかげで、金融市場は壊れてしまった。「バラバラ」と言った方がいいかもしれない。しかし、どのように呼ぼうと、市場は正しく機能していないのである。
現在、株式に流入した自由資金により、SPYの配当利回りは1.3%弱まで低下している。利回りがこれほど低くなったのは、「インターネット・バブル」前の高値を記録した1999年以来である。
当時、10年国債の利回りは6%を超えていたのだ!
利回りが上昇し、債券と株式の差が拡大するにつれ、株式への圧力はいつか耐えられなくなる。
FRBはインフレに歯止めをかけるために利上げをしなければならない(これは限定的な成功にとどまる私は考えている)。そして、積極的であればあるほど、早く株式市場に打撃を与えることになる。
「 壊したら弁償だぞ」というのは、小売店ではよく使われる言葉だ。残念なことに、これはFRBには当てはまらない。
では、事態が悪化したとき、投資家はどこに資本を投下すればいいのだろうか。金や銀などの貴金属への現物投資も一つの選択肢である。しかし、現金で保有し、リプライシングを待つ方がより良い選択肢かもしれない。
執筆者プロフィール
ボブ・バーン(Bob Byrne)
20年以上にわたって金融市場で数十億ドルの取引を行った後、TheStreet.comの日刊コラムニストとして名声を築いた。現在、ティム・コリンズ氏とともに、ウォール街で見落とされがちな「アンダー・ザ・レーダー企業」や投資機会に焦点を当てた投資情報誌「Streetlight Confidential」を発行している。
オリジナル記事:英文大紀元「Rates Are Rising: Where Do You Park Your Cash?」より
(翻訳:王君宜)
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