G7外相会合、林外相が中国人権問題や台湾情勢等を提起

2021/12/13
更新: 2021/12/13

英国リバプールで行われた主要国(G7)外相会合では中国による拡張主義や経済的威圧、ウクライナ情勢など国際的課題が議論された。会合に出席した林外相は中国国内の人権問題を提起したほか、台湾海峡に関する日本の立場を説明した。

12日の記者会見で林芳外相は、初日の午前中から中国をめぐる議題になったと話し、「東シナ海南シナ海における一方的な現状変更の試みへの深刻な懸念と反対、香港情勢および新疆の人権状況の深刻な懸念、台湾海峡の平和と安定の重要性、経済的威圧」などを提起したうえで日本の立場を説明したと述べた。他国の外相からも懸念の表明を含む発言があったという。

G7諸国のうちすでに4カ国が北京冬季五輪に政府使節団を派遣しない「外交ボイコット」を行うと表明している。林外相はボイコットについて「若干の意見交換」があったと述べ、「(日本は)適切な時期に諸般の事情を総合的に勘案して判断をする」と述べた。他国の外相との会談内容については言及を控えた。

2日間の会合を終えたのちに発表されたG7議長声明では、インフラ投資で途上国に多額の借金を負わせ影響力を強めている中国について「威圧的な経済政策を懸念する」と記された。初となるASEAN(東南アジア諸国連合)諸国の外相を招いた拡大会合では「自由で開かれたインド太平洋」の重要性と先進国の関与を確認したという。

林外相、二国間会談で関係構築

林外相はG7外相会合の期間中、英トラス外相、米ブリンケン国務長官、独ベアボック外相、仏ルドリアン外相、伊ディマイオ外相、豪ペイン外相、加ジョリー外相との2国間会談を実施した。韓国の鄭義溶(チョン・ウィヨン)外交部長とも立ち話をした。

G7外相会合の集合写真 (Photo by Paul Ellis – WPA Pool/Getty Images)

ブリンケン国務長官との日米外相会談では、中国や北朝鮮が地域情勢に与える不安定さを踏まえ、日米同盟の抑止力・対処力を強化していくことを確認した。加えて、日米韓3か国の連携が重要との意見で一致した。

日英外相会談では、日英両国がインド太平洋地域の平和と繁栄に向け更に協力を深めていくことで一致し、英国のTPP11加入手続についても意見交換した。林大臣からは日本産食品に対する輸入規制の早期撤廃を求めた。

日独外相会談では、日独160周年の本年に「2+2」の初開催やフリゲート艦「バイエルン」の日本寄港等、日独間の安全保障協力の深まりを歓迎し、インド太平洋での協力を含む日独間連携の強化で一致した。

日豪外相会談では、日米豪およびミクロネシア連邦、キリバス、ナウルに対する東部ミクロネシア海底ケーブル敷設事業に関する共同報道発表について「大きな意義がある」との評価を共有。引き続きインド太平洋地域における質の高いインフラの整備を日米豪の枠組みも活用した支援を続けるとした。

ピアノを披露し談笑する林外相ら各国外相たち(Photo by Christopher Furlong/Getty Images)

林外相が夕食会場のビートルズ記念館で「イマジン」を演奏したことが英字メディアを中心に話題になった。外相は、会場にはレプリカの白いピアノが置かれており「誰かが座ってくれと、弾いてもいいといわれ、即興で『イマジン』を三分の一くらい弾かせていただいた。大変皆さんにも喜んでいただいたと思う」と述べた。

主要国、ロシアを強く牽制

G7外相会合では主に中国の威圧的行動とロシアのウクライナに対する妨害行為が議題になり、各国が権威主義に対する統一的な見解を調整した。

ホスト国である英国のトラス外相は会談の冒頭、特定の国の言及を避け「自由と民主主義の範囲を狭めようとする侵略者に立ち向かうために、強く団結する必要がある」と述べた。

12日、G7外相は「ロシアとウクライナに関する共同声明」を発表し、国境変更のための武力行使は国際法上厳格に禁止されていると強調。その上で「ロシアはウクライナへのさらなる軍事的攻撃が、大規模な結果とそれに対する深刻な代償をもたらすことを疑うべきではない」と強くロシアを牽制した。

米国の情報機関は、早くて2022年にロシアが最大17万5000人の部隊を動員してウクライナ侵攻計画を実行する可能性があると推測している。

日本の安全保障、外交、中国の浸透工作について執筆しています。共著書に『中国臓器移植の真実』(集広舎)。