北極圏の権利主張する中国 態度は南シナ海より静か 専門家「様子見している」

2021/10/04
更新: 2021/10/04

一部の北極圏専門家によると、北極圏への関与に関しての中国のアプローチは、南シナ海における攻撃的な戦術よりもはるかに柔軟である。南シナ海では海事分野の権利に関して各国と絶えず意見が対立しており、しばしば航行の自由をめぐる論争を引き起こしている。 

対照的なアプローチの背後には多くの理由がある。学者2人が最近同意したことによれば、中国が多国間の北極評議会に貢献し、北極諸国と協力し、北極地域の将来が中国の国家安全保障の問題であると主張する試みにおいてますます困難に直面している。 

デンマーク王立防衛大学(Royal Danish Defence College)戦略および軍事学部(Institute for Strategy and War Studies)のカミラ・ソレンセン(Camilla T.N. Sorensen)准教授は、「私たちが北極圏で見ているのは、北極圏での世界と地域の横断的なセキュリティダイナミクスの複雑化がますます進んでいることです。中国にとってこれは北極圏での行動がより困難になったことを意味します」と述べている。

 中国を北極圏の「非常に新しい参入者」と呼んだノルウェーのトロムソにあるノルウェー北極大学の准教授であるマーク・ランテーン(Marc Lanteigne)博士は、「中国はまだ踏み石を探って川を渡ろうとしている状態です」と付け加えた。戦略の優先度について「中国は北極圏が重要になって来るかどうかを考え始めているところです」。 

ソレンセン准教授とランテーン博士のこれらの発言は2021年9月中旬に開催された北極圏に影響を及ぼす重要な問題に関する隔月のバーチャルフォーラムであるアークティック・アカデミック・Eトーク(Arctic Academic eTalks)で行われた。参加者にはカナダ、デンマーク、フィンランド、ドイツ、アイスランド、ノルウェー、スウェーデン、英国および米国の学者や実務家が含まれている。会議は米国北方軍司令部とその司令官誌であるザ・ウォッチ、米国欧州軍、米国インド太平洋軍、そして北米および北極圏防衛・安全保障ネットワークが共催した。 

ソレンセン准教授は中国がは大国であるが、北極圏での活動、特にグリーンランドが関心を持っている地域での活動は気弱なアプローチを示していると述べた。グリーンランドにおける中国の開発は「比較的控えめ」なままである。中国は米国が北極圏諸国への約束を履行しているかどうか、また中国が提供するものとどのように比較されているかを確認するために、参加者よりもオブザーバーとして「様子見」をしていると彼女は推測した。 

ソレンセン准教授は、「中国は北極圏を利用することに急いでいないように見える」と述べ、中国の戦略を戦術的撤退と呼んだ。

「ある意味、戦術的撤退は中国が長年にわたって開発しているより洗練された戦略である可能性があります。彼らは地域の発展を見守り、過度のリスクと失敗なしに戦略を適応させています。中国が試みたことはすべて失敗しているので、彼らはこの様子見のアプローチ取っています。」 ソレンセン准教授は、この戦略により彼女がハイブリッド活動と名付けた中国がこの地域での活動と通常の活動の違いが分からなくなったと述べた。

ソレンセン准教授は、中国の活動は不透明で複雑かつ国内の組織同士の関係が重複していると説明している。国営企業と民間企業、大学の関係の曖昧さは中国の活動を分類し、それぞれの関与に関連するリスクを評価することをむずかしくしている。 

ソレンセン助教授は、「[中国共産]党はそこに居て関与しているが程度に差があります。誰が関わっているのかやその動機を把握することは常に困難です」とコメントしている。 

ランテーン博士は、10年ほど前から中国に北極圏の権益について尋ね始め、その時点での回答は20年から30年の間に考え始める可能性があるとのことだった。しかし、中国当局者はそれよりもずいぶん前から関心を持ち始めている。

ランテーン博士は、北極圏を国際空間として定義しながらも、2017年に北極圏を中国の一帯一路インフラ計画に統合する方法についての議論があったことを指摘している。「中国はまだ具体的にどのようなものかを決めようとしている」と同博士は述べている。

ランテーン博士によれば、中国本土が北極圏から1500キロ離れていることを考えると北極圏は地理的に中国にとって戦略的優先事項として意味がないと思われるかもしれないが、距離の問題ではないと中国当局者は言っている。「彼らはこの地域から締め出されたくなく、中国は『北極圏で起こっていることは、私たち、私たちの天候、そして私たちの経済的利益に影響を与えている。私たちが何らかの利害関係を主張することは公平ではないでしょうか』」。 

しかし、北極圏における国家的関心活動を主張するより積極的な中国はこの地域の政治的、安全保障的、軍事的発展にどのように影響を与えるかについては疑問が残っている。  

(Indo=Pacific Defence Forum)