気候変動をめぐる米中対話は4月および8月の2度に渡って行われている。いずれも米国のジョン・ケリー気候変動担当大統領特使が訪中し、中国の気候変動担当特使を含む高官と会談した。中国側は協力姿勢を示したものの、米国による中国個人や企業の経済制裁やビザ制限、人権問題への非難について強い不満を表明。気候変動とは関係のない政治課題を協力条件として提示した。
ケリー氏は8月31日から9月2日かけて中国に滞在。気候変動担当特使のほか、韓正副首相、外交トップの楊潔篪共産党政治局員、王毅外相とそれぞれオンライン会談を行なった。
中国外交部は9月2日の発表で、楊氏からケリー氏に対して、米国の一連の中国への「内政干渉行為」により、中国の利益が損なわれ両国関係が困難に直面していると不服を述べた。
米国はトランプ政権以降、中国共産党に対する警戒心を強め、あらゆる措置を講じた。米国にある共産党教育部管理下の組織・孔子学院の閉鎖、スパイウェア容疑の華為技術(ファーウェイ)機器の市場排除、新疆や香港、法輪功など人権侵害加担容疑のある中国高官への経済制裁など。こうした対中措置はバイデン政権も継続している。
中国側は、これらの解除や停止を求めることを外交条件に加えている。王氏は8月のケリー氏との会談で、要求リストを記載した「2つのリスト」を提示した。
このリストには、中国共産党員とその家族のビザ制限、中国の指導者・政府高官・政府部門への制裁、中国留学生へのビザ制限、中国企業や孔子学院への圧力、カナダで拘留される華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟副会長兼最高財務責任者(CFO)の引き渡し要求などの撤廃・停止が含まれている。
リストは、ウェンディ・シャーマン米副国務長官の7月の天津訪問時に初めて提示された。
こうした中国側の求めに対して、ケリー氏は訪中期間、記者団に対し「気候変動は思想や党派ではないし、地政学的な武器でもないというのが私の答えだ」と述べ、同列視しないとの認識を示している。
9月8日にも、中国の王受文商務次官は米中関係について、気候変動問題などの「協力関係は通商問題と切り離せるものではない」と述べた。バイデン政権は新疆ウイグル自治区に関わる太陽光パネルに人権侵害の疑いがあるとして中国企業に制裁を課しており、こうした対処の緩和を催促している。
世界の太陽光パネルの生産供給チェーンは、共産党が非人道的な支配を行う新疆ウイグル自治区に大きく依存している。バイデン政権は6月、「米国は、新疆における国家主導の強制労働は、人間の尊厳を冒涜するものであると同時に、中国の不公正な経済活動の一例だ」と強く批判した。
(佐渡道世)
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