欧州・ロシア 学術界に浸透する中国マネー

ドイツ漢学者、同国大学を提訴 中国の資金援助の内容開示拒否で

2021/08/19
更新: 2021/08/19

ドイツ人漢学者であるデビッド・ミッサル(David Missal、穆達偉)氏は16日、中国からの資金提供に関する情報の開示を拒否したポツダム大学(Universität Potsdam)に対し、訴訟を起こした。米政府系放送局ラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

ミッサル氏はRFAに対し、「多くの大学は、中国からの資金提供の詳細を公表しようとしない。だからこそ、私は自由権利協会(GFF)と協力してこれらの大学を訴えることにした。昨年はマインツ大学、今年はポツダム大学を訴えている」と述べた。

ミッサル氏は昨年、ドイツの100大学に対し、中国からの資金提供の有無、金額、契約条件などを開示するよう求める調査プロジェクトを開始した。

これまでに集めた情報によると、中国教育部直属で孔子学院も管轄する「中外言語交流協力センター」から資金提供を受けた大学は10大学以上、中国通信機器大手のファーウェイ(華為技術)から資金提供を受けた大学も10大学以上となっている。ドイツの学術界中国マネーが本格的に浸透していることを物語っている。

「長い目で見ると、これは危険だ」とミッサル氏は言う。大学が中国からの資金提供を受ければ、一部の教授による自己検閲が行われ、研究の方向性や目標に影響を与え、学問の自由と独立性を著しく損なうことになる。しかし、このような情報を開示する大学は限られており、ほとんどの大学が学問の自由を理由に開示を拒否しているという。

また、同氏が執筆した関連報告書によると、中国からの資金提供を最も多く受けているのは、ゲッティンゲン大学、フライブルク大学、ベルリン工科大学、ベルリン自由大学などだという。マインツ大学、ハノーファー大学、カッセル大学、コンスタンツ大学などがファーウェイの資金援助を受けている。

報告では、中国から資金提供を受けているドイツの大学は、中国に関する議論に影響を与え、利益と責任が相反する状況を生み出し、自己検閲を強め、さらには中国の抑圧的な政策の共犯者になっていると指摘している。

中国マネーの浸透は、欧米で共通の問題だ

フランス人漢学者であるマリー・ホルツマン(Marie Holzman、侯芷明)氏はRFAの取材に対し、「学術界への中国マネーの浸透は、ドイツだけでなく、欧米の大学にも広くみられる問題である。中国の資金援助を受けている欧米の学者の中には、自己検閲を行うだけでなく、科学技術の成果を中国にリークする者もいる」と語った。

「ミッサル氏の緻密な仕事ぶりを尊敬している。中国から資金援助を受けている教授たちは、当然ながら中国を怒らせないように細心の注意を払う。同時に、中国(共産党)がドイツの科学・経済・国家機密を盗むのを助けることにもなる。習近平の目標は、世界をコントロールし、影響を与えることである。これは、全世界にとって大きな問題である」とホルツマン氏は強調した。

規制強化や法整備への呼びかけ

ミッサル氏は、ドイツの州議会に対し、大学の教員や研究者が中国のような全体主義国家から資金提供を受けている場合、財務記録や契約書の定期的な開示を義務付ける法律を制定すること、大学が欧州連合(EU)以外の資金提供者を評価する独立した委員会を設置すること、ドイツ政府が孔子学院やファーウェイなどの中国企業や団体から資金提供を受けている研究者や大学に連邦政府の資金を提供しないことなどを提案した。

ミッサル氏と協力関係にあるGFFのウルフ・ビューマイヤー(Ulf Buermeyer)会長は、「大学教授が、自分の研究に誰がどれだけお金を出しているかを明らかにしたくないのであれば、そのような資金を受けるべきではない。学術研究を売りものにすべきではない」と述べた。

デビッド・ミッサル氏(28)は中国の清華大学に留学中、人権派弁護士らが一斉に拘束された「709事件」を描く動画を制作したため、2018年に中国当局によって国外追放された。その後、香港大学に留学し、香港の民主化運動を積極的に支援した。近年、香港情勢の悪化を受け、ドイツ連邦議会に対中制裁に関する公聴会の開催を働きかけた。

(翻訳編集・王君宜)