米国カリフォルニア州を拠点とする水陸両用軽飛行機メーカー「ICONエアクラフト」は、飛行機の設計、製造や素材の生産に関する技術が中国企業に盗まれたとして、デラウェア州裁判所に6月1日、訴状を提出した。損害賠償を求める構えだ。
提訴したのはICONエアクラフト創業者兼元CEOカーク・ホーキンス(Kirk Hawkins)氏や元ボーイング会長フィリップ・M・コンディット(Philip Murray Condit)氏ら少数派株主35人。
訴状によれば、同社の大株主である上海浦東科技投資会社(PDSTI)が、中国側にICONの航空機設計、製造、高度な炭素繊維構造などの知的財産権技術を無断で移転した。
35人は、PDSTIが会社にもたらした様々な影響を明らかにした。PDSTIは、他社からの投資を排除し意図的に財源を保留する、少数派の米国人役員を解任する、日本の複合企業ヤマハ社による買収交渉を妨害するなど「会社の存続を妨げる」行動を取っているという。
コンディット氏によれば、ICONエアクラフトに対するPDSTIの投資は、会社の発展を目的としたものではなく「技術を入手し、少数派株主を騙すためだ」とプレスリリースで述べた。
ICON エアクラフト社が開発したメイン商品は、メキシコのティフアナ市で製造されている。陸と海に着陸可能な水陸両用の超軽量動力機「A5」だ。A5の速度は177km/h、航続距離は644km。米国では、スポーツパイロット (LSA)の免許があれば操縦できる。この機体は格納可能な折りたたみ式の翼を持ち、スポーツ用多目的車や小型トラックで輸送できる。
中国に渡ったデュアルユース技術、米軍の再採用は難しい
少数派株主による訴訟では、ICONの炭素繊維製造や航空機設計のノウハウは、今後「空飛ぶクルマ」などとよばれ注目される電動垂直離着陸機(eVTOL)にも応用でき、民間および軍事的な用途がある。中国の投資家はこの技術を狙ったとみられる。
米ジョージタウンに拠点を置く防衛技術コンサルタント会社CSNine社は、ICON A5を米国防総省に売却して、偵察車両として利用する計画を立てていた。しかし、訴状によって明らかにされた、PDSTIとICONエアクラフトの経営陣とのつながりや技術漏洩という安全保障上の観点から、同社は今後、米軍との取引を見直さざるを得ない状況だ。
専門家は、革新的な技術を持つ企業、特にデュアルユース(軍民両用)の技術を持つ企業は、十分な警戒心を持って取引する必要があり、買い手候補に対して、強化されたデューデリジェンス(資産適正評価)を行うべきだと警告している。
(翻訳編集・蘇文悦)
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