6月16日、中国で経済活動を行う日本の企業からなる中国日本商会(法人会員8560社)は、「中国経済と日本企業2021年白書」を発表した。同報告書は、在中日本企業が直面する課題を示している。日本企業が置かれている経済環境の不平等さや、通知不足による予見を立てることの難しさが説明されている。
2020年以降立て続けに制定された、中国のサイバーセキュリティに関する関連法では、個人情報やインフラデータの国境移転が制限されている。報告は、外国企業の活動を阻害する可能性があると指摘している。「概念の定義や適用範囲があいまいであることから、ビジネスの予見性を低下」させるという。また、「日本企業への恣意的な適用をしないように」とあらかじめ警告を発信している。
日本企業は、情報セキュリティに関わる政策として、2019年6月のG20大阪サミットで提唱された「データ・フリー・フロー・ウィズ・トラスト(DFFT)」のコンセプトに基づく策定は望ましいとしている。
税の引き上げが事前通告なく行われている。米中貿易摩擦により、複数回に関税率の引き上げが事前に周知期間なく実施されているため、それに伴う負担の増加が継続している。同報告書によると、関税に関して、課税の必要性や価格の妥当性についての判断基準が、企業に開示されないという。
同報告書は、日本産食品の輸入規制が継続していることを取り上げた。世界各国が日本産食品の輸入規制を撤廃している中、中国は2011年3月の東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故が原因で、日本の10都県産の全ての農産物・食品に対する輸入規制措置をいまだ続けている。また、残る37道府県でも青果、乳製品などの輸入が事実上できない状態にある。
同報告書は、日本企業の「安定操業」が困難な状況について書いている。例えば、担当者の恣意的な「法執行」が行われるケースがあり、さらには環境監査が突発的に実施され、理由の明示なく工場の休業や営業停止を受けた企業があったという。
中国における日本人赴任者の労働環境についても、問題提起を行っている。現在、中国を赴任するために目的地の外事弁公室または商務機関の発行する「招聘状」が必要となっている。一部の日系企業は「招聘状」の発給を受けられないため、従業員は中国に赴任できない状況がある。
中国での就労許可、居留許可など各行政手続の最適化が求められ、特にパスポート原本を提出する場合、預ける期間を最大限短縮するよう求めている。
報告は、全体的に中国では偽物が多くの市場で横行していると指摘する。卸売業の分野では、一部の業者はコンプライアンス意識が低いとした。例として、1.偽物を販売したり商品を不当に安く販売する 2.過積載を前提とした料金を提示する 3.発票を発行しない前提で税金分のコストを割引いた配送見積を提示するなどを挙げた。
こうした不正に対して、当局が現地業者を取り締まらず、日本企業に矛先をむけるケースがある。「夜逃げ」により取引先である日本の投資企業が、本来卸売業者が支払うべき増値税の支払要求を、関係当局から受けたケースも紹介した。
日本財務省の「国際収支状況」によると、日本の対中投資額は2020年通年で前年比21.1%減の1兆1046億円と減少した。実際、2020年7月に中国が発表した「外商投資参入特別管理措置(ネガティブリスト)2020年版」では、日本企業に対する制限禁止条項はいまだに33項目あり、中国で行われる事業は大幅に制限されている。
(蘇文悦)
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