日本や米国を含むインド太平洋地域における中国共産党の覇権主義の影響力が拡大する中、自由と民主を支持する国々の連帯が強まっている。日本の専門家は大紀元英語版の取材に対して、地域の経済と安全保障の協力枠組み「日米豪印戦略対話(クアッド、Quads)」は、平和と安全を確保する既存ルールの維持のために、結束は強化されていくだろうと語った。
拡張主義に対抗して ABCD包囲網に類似点
日米関係・外交史を専門とする神戸大学の蓑原俊洋教授は、クアッドのあり方は、ワクチンパートナーシップと気候変動についてのみならず、地域における自由民主主義と法の支配をいかに維持できるのかをテーマにすべきだ、と大紀元に対して語った。
蓑原氏は、フィリピンと韓国などの国は来年の選挙で、対中姿勢についてもっと厳しい政権が誕生する可能性があるとみている。これによってクアッドの機能はさらに進化すると考えている。
歴史学者である蓑原氏は、1930年代と現在の状況は似ていると指摘する。当時、日本は既存規則への挑戦者だった。世界は米国、英国、中国、オランダによる日本包囲戦略「ABCD包囲網」が敷かれ、日本の積極的な拡張を制限した。
英国やフランス、ドイツ、EUが相次いでインド太平洋地域の戦略的政策を発表するなか、蓑原氏は地域安全保障について、ヨーロッパとは「良い友人」であることが大事だが、米国と地域周辺国による「当事者」としてのあり方が最も肝心だと述べた。
同氏の見解によれば、習近平氏は思惑通り、戦争や軍事衝突を避けて台湾を2030年前に占領することを狙っているという。台湾統一は共産党の悲願であり、これを実現することで、党の象徴的存在である毛沢東氏を超えようとしているとみている。
同氏は、ナチス・ドイツに侵略されたポーランドと台湾の類似点を指摘する。ヒトラーは1939年にポーランドを侵攻したが、最初は戦争への発展を予想しておらず、誤算から始まった戦争の例だと述べた。習近平氏が台湾を奪おうとした時、結果として地域紛争に発展することもあり得ると指摘した。
米国が台湾を守らなければ、世界のリーダーシップを失うことになるので、台湾防衛に関与するだろうと同氏はみている。「2025年、私たちは新しい米国の新政権が中国に対してより強硬になるだろう。中国の脅威は、米国を団結させるものだ」と述べた。
「インド太平洋は米国の将来にとって一番重要な地域だ。米国の最大の安全保障上の課題であり、米国にとって最優先の戦域であることは変わらない」。4月30日に行われた司令官交代式で、米インド太平洋軍(INDOPACOM)の新司令官ジョン・C・アキリーノ(John C. Aquilino)氏は就任初日に語った。米国防総省も、ロイド・J・オースティン(Lloyd J. Austin III)長官が来月シンガポールで開催されるアジア安全保障サミットに出席し、「インド太平洋地域をどれほど優先しているかを明確にする」と発表した。
蓑原氏は「日本では、中国研究者の多くが『もう(米中戦は)ゲームオーバーだ』という見方をしており、米国が何をしようとしても、次のパワーは中国だという意見が日本では多々みられる。しかし、このような意見は米国を過小評価している」と述べた。また、多くの日本人は太平洋地域の状況についての危機認識は強くないため、台湾に突きつけられた状況を「個別の問題のように扱っている」と指摘した。
中共ウイルス拡大は日米豪印戦略対話の結束強める
米国やインドの専門家は、中共ウイルス感染拡大における米国の支援と中国の行為は、クアッドの結束をさらに強めると見ている。
「私たち(米国とインド)の関係は依然として非常に強い。感染症拡大により共同訓練は行われないが、米国はインドを支援しており、パートナーシップはより強固になったと言える」と米国インド太平洋軍のランディ・レディ(Randy Ready)少佐が大紀元に対して語った。
ニューデリーにあるジャワハーラール・ネイルー大学で中国研究を専門とするSrikanth Kondapalli氏は、インドにおける中共ウイルスの蔓延は「クアッドの協力をさらに強めるだろう」と分析。インド太平洋諸国におけるワクチン接種の支援に協働する同4か国「ワクチンパートナーシップ」の重要性は強調されたと付け加えた。
マラヤ大学の上級講師であるラウール・ミシュラ(Rahul Mishra)氏は、「クアッドの将来はかなり明るい。4か国はクアッドを強化し、組織化することに熱心だ」と述べている。クアッドについて、インド太平洋地域の戦略的関与を表明している英国とフランスを含めて、ヨーロッパ諸国も関心を高めている。同氏は、バイデン政権が中国に対して十分な措置をとっていないため、ヨーロッパからの支持が、バイデン政権のより具体的な行動を促すかもしれないと分析した。
(翻訳編集・蘇文悦)
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