北京の医師、中国のがん治療の闇を暴露 「過剰治療が横行」

2021/05/11
更新: 2021/05/11

北京大学第三病院の腫瘍内科医である張煜(チョウ・イウ)氏は先月、中国のがん(悪性腫瘍)治療業界の闇を暴露し、話題となった。その後、中国の保健当局が介入し、がん治療は「おおむね規範通り」に行われているとの見解を発表。これに異議を唱えた張氏は、当局の専門家を交えた公開討論会を呼びかけた。

中国政府の公式統計によると、2020年の中国におけるがん罹患者数は457万人、がんによる死者数は300万人だった。張氏は4月18日、中国最大のQ&Aプラットフォーム「Zhihu(知乎)」への投稿で、中国のがん死亡率の高さは、治療が困難な一部の末期がんを除いて、(金儲けを目的とする)過剰治療によるところが大きいと指摘した。

張氏によると、製薬会社からのキックバックを増やすために、がん患者に高額な薬を処方したり、不必要な治療を強要したりする医師が多い。その結果、がん治療には費用がかかるだけでなく、効果も期待できない。多くのがん患者は、騙されることを恐れ、通常の病院で治療を拒むことがある。

同氏はまた、上海交通大学医学部附属新華病院(以下、上海新華病院)の一般外科副主任医師が、胃がん肝転移の患者に対し、臨床使用が認められていないNK細胞免疫療法を1回3万元(約51万円)で実施した事例を紹介した。その結果、医療費は従来の10倍になり、患者の家族は莫大な借金を背負っただけでなく、患者の死期も大幅に早まったという。

張氏は投稿の中で、中国の医療における最大の問題点は、「以薬養医(1950年代に始まった中国の医療制度。医薬品が病院の経営を維持すること)」ではなく、規制の仕組みがないため一部の医師が悪いことを平気ですることだと主張した。医師の不正行為によって亡くなった患者もいるという。

投稿が公開された翌日の19日、張氏は投稿を削除し、「外部からの圧力があった」と説明した。

この投稿は、中国社会で大きな反響を呼んだ。多くのネットユーザーからは、「このような良心的な医師は珍しい」「李文亮医師(新型コロナウイルスの流行にいち早く警鐘を鳴らし、警察に処罰され、後に感染で亡くなった武漢の医師)よりも勇気がある」「ちょっとした病気でも、ぼったくり医院や腹黒い医師のせいで貧しくなる」「過剰診療は根強い制度上の問題だ」などのコメントが寄せられている。

「真っ赤な嘘」

張氏の投稿が掲載された直後、中国国家衛生健康委員会(厚生労働省に相当)は、この問題を直ちに調査すると発表した。4月下旬、同委員会の広報担当者は、医療専門家を組織し、上海新華病院の胃がん患者の治療過程を検証した結果、治療内容はおおむね規範通りであったと発表した。

張氏は5日の投稿で、当局の専門家チームが出した結論は、すべての医療過誤を助長する「真っ赤な嘘」だと指摘。このことに失望と懸念を表明し、当局の専門家チームと公開討論を行うことを当局に求めた。

6日の中国メディア「経済観察網」のインタビューで、張氏は、当局が対応しなければ引き続き文章や動画を配信し、より多くの人に真実を伝えていくと語った。張氏は、個別化医療に反対しているわけではないが、一部の医師が利益のためにいい加減な治療を行い、治療の原則に反する薬を処方していることに反対していると述べた。

この投稿が公開された後、多くの医学界の先輩たちから叱責され、罵倒されたことに対し、張氏は「本当の理由は、彼らの金儲け裏のカラクリを暴いたからだ」と語った。

中国メディアが関係筋の話として伝えたところによると、張氏は現在、1週間以上診療を休んでいる。張氏はこの2週間、医師診療予定表に入っておらず、いつ診療を再開するかは不明だという。

(翻訳編集・王君宜)