米国国防総省は、中国がもたらす国家安保課題に対する戦略の包括的な見直しのため、対中戦略専門家チーム「任務部隊(タスクフォース)」を新設する。同省は、インド太平洋地域における中国の影響力拡大を「歩調を合わせて対処すべき脅威」と定義している。
2021年2月10日、米国国防総省はニュースリリースで、「現在の法治に基づく構造はインド太平洋諸国すべてのメリットとなっている。中国はこれを覆そうとしている」とし、「米国とその同盟諸国は同地域における自由で開かれた環境維持に取り組む。中国は国力の全要素を駆使して、他諸国の意志を曲げようとしている」と発表した。
ロイド・オースティン米国防長官の右腕となる中国専門家のエリー・ラトナー博士率いる15人の同任務部隊は、運用概念、諜報、技術、軍の構造・姿勢・管理を優先事項とする方針を策定するために調査を実施し、4か月で結果を国防長官に提出するとしている。
当局が「駆足の取り組み」と呼んでいる同イニシアチブには、米国の同盟・提携諸国との関係およびこれが米中関係にもたらす影響に関する検討も含まれる。
2月10日、国防総省内における任務部隊新設を発表したジョー・バイデン米大統領は、「中国関連の問題について強力な方針を策定することを目的として、[国防総省各部門の]軍事専門家と民間人で構成される任務部隊は迅速に任務に取り組み、今後数ヵ月以内にオースティン国防長官に主要な優先事項に関する情報と判断材料を提出する」とし、「これには米国政府全体の努力、議会における超党派の協力、そして同盟・提携諸国との強力な連携体制が必要である」と述べている。
バイデン大統領はまた、「インド太平洋だけでなく世界の平和を維持し、米国の権益を保護するために増大する中国問題に対応する必要がある」と話している。
発表の数時間後、バイデン大統領は中国共産党中央委員会総書記などを兼務する習近平主席と電話会談を行った。これは同大統領が3週間前に就任してから初の米中会談となる。
米国政府の発表では、同大統領は「中国政府の強制的かつ不公正な経済慣行、香港の強硬な取り締まり、新疆ウイグル自治区における人権侵害、また台湾などの地域周辺で中国が高めている攻撃的行動について根源的な懸念を強調」した。大統領は、兵器拡散防止、気候変動、中国湖北省武漢市を震源地とする新型コロナウイルス感染症パンデミックなど、米中共通の課題にも言及。さらに、「自由で開かれたインド太平洋」の維持に取り組むと強調した。
これには同盟・提携諸国との協力により南シナ海や他の公海で「航行の自由」作戦を展開する取り組みおよび主権領土や排他的経済水域(EEZ)への侵入防止対策が含まれる。
習主席に対してインド太平洋の平和維持を強調するバイデン大統領の姿勢には、中国の攻撃的な戦術に困惑する同地域の提携諸国から支持が集まった。 ロイター通信が報じたところでは、民主主義を掲げる中華民国総統府の報道官は、「台湾は国際社会の一員として、志を同じくする米国などの諸国と緊密に協力しインド太平洋地域の安定と繁栄に共同で貢献していく構えである」と表明した。
米国国防総省は、2020年にも、中国共産党幹部等が「中国領地・領海と周辺域を越えた地域で機能を運用する方法を検討することを中国人民解放軍に強く促している」と議会に報告している。同省は以前、中国の公表資料をもとに、2050年までに中国人民解放軍を世界最高級の軍隊にすることを目指して、中国共産党が大規模な軍近代化計画を推進していると指摘した。
中国の共産主義政権の意図を示す証拠は世界中に散見される。 同国防総省は2月11日に発表したニュースリリースで、「多くの場合、アフリカの角から南米、そしてインド太平洋全体に至るまで、中国は第二次世界大戦終結以来続いてきた国際秩序を乱す方法で自国の影響力強化を図っている」と述べている。
ラトナー博士の発言によると、任務部隊は中国関連の主要課題と機会を特定し、国家安保の優先順位を付けることで他の資源の必要性を判断する予定である。任務部隊が提出した資料や推奨事項は議会および他の利害関係者との間で協議されることになる。 ラトナー博士は記者会見で、「中国はほぼすべての機能的な問題、率直に言えば米国が関与するすべての地理的な問題に干渉していることから、同国は問題の根源となっている」と話している。
(Indo-Pacific Defense Forum)
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