インドの有識者は、米大統領選挙の民主党候補、ジョー・バイデン氏が対中政策に関して明白な方針を示していないことについて、中国側の拡張主義に「機会」を与えていると懸念を強めている。
インドの地政学アナリストで、米の戦略国際問題研究所(CSIS)で米印政治を研究するハーシュ・パント(Harsh V. Pant)氏はこのほど、大紀元の取材に応じた。同氏は「中国当局はその拡張主義を止めることは絶対にない」とし、「バイデン陣営は政権移行を進めているにもかかわらず、対中政策における方向性を全く示しておらず、構想も説明していない」と批判した。
パント氏は、インドを含めて多くの国が現在、中国当局から軍事挑発を受けていると強調した。「米国内では政権の移行が行われている中、インドなどは、米側の対中政策の変化に注視せざるを得ないのだ。バイデン陣営が対中政策において、沈黙を保っていることは、将来、バイデン氏らが中国当局の影響力を受けることを意味する。また、これはバイデン氏らが、中国当局が国際社会にもたらしたすべての問題や課題に対して黙認していることも意味する」
同氏は、「米国がはっきりとした姿勢を示さないと今後、米中関係において受け身の立場になるだろう」とし、「米国の外交政策はトランプ政権の前の状態に戻るのではないか」と懸念を示した。
パント氏は、トランプ政権は過去の失敗した外交政策を挽回し、対中で強硬的な姿勢を貫いており、「正しいことをしている」との見解を示した。同氏は、米国の過去の宥和的な姿勢によって、中国共産党が「より独裁的な政権となった」と非難した。
パント氏は、バイデン陣営が意図的に対中政策の説明を後回しにしているとした。「バイデン陣営の次期政権閣僚リストを見れば、バイデン氏らが何を重要視しているかがわかる」
バイデン陣営の政権移行チームはこのほど、ジョン・ケリー元国務長官を気候変動問題の大統領特使に指名した。ケリー氏は以前、中国共産党の脅威と比べて、気候変動問題がもたらした脅威はより深刻だと発言したことがある。同氏は2014年訪中した際、中国の習近平国家主席と会談し、気候変動をめぐり、米中協力を議論した。16年、同氏はオバマ政権を代表して、ニューヨークにある国連本部で地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」に署名した。
「トランプ大統領が中国に対して非常に強硬であるため、中国当局はトランプ政権と話し合うチャンスが全くない。しかし、中国当局はバイデン氏側ならこのチャンスを見出せる。対中政策を明白に示さないバイデン政権は、トランプ政権より扱いやすいと中国当局は考えるだろう」
パント氏は、気候変動問題やCO2削減において、バイデン氏側へ接近を図る可能性が高いと指摘した。インド出身の同氏は、バイデン政権が発足すれば、今後、米政府が中国当局のインド太平洋地域における軍事拡張を容認する可能性に強く危惧し、「国際情勢がさらに緊迫する恐れがある」と述べた。
「南シナ海はその例だ。当時、オバマ政権は、南シナ海で軍事拠点を整備しようとする中国当局を阻止しなかった。これによって、中国側は同海域で人工島建設を進め、軍事拠点化が現実となった」
パント氏は、今後インド太平洋地域において、米の同盟国であるインドがリーダーシップを一段と発揮し、他の国とともに中国当局に対抗していく必要があるとした。
中印両軍は2020年5月以降、国境付近で複数回衝突し、両国の関係は悪化した。緊張緩和に向けた両国の協議が行われたが、進展は見られず、両国は国境に兵士などを追加配備した。両軍は2020年12月、国境地域で越冬用の施設を相次いで設けたと報じられた。
大紀元は、パント氏の主張に関して、バイデン陣営側にコメントを求めたが、返答を得られなかった。
(記者・Venus Upadhayaya、翻訳編集・張哲)
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