蘭州市で昨年ブルセラ属菌漏えい事故、市民3000人超感染 政府発表の10数倍

2020/09/16
更新: 2020/09/16

中国北西部の甘粛省蘭州市では2019年夏、地元の製薬会社からブルセラ属菌漏えい事故が発生したことがわかった。当局は同年12月、約200人の市民が感染したと発表した。しかし、実際の感染者数は3000人以上であることがわかった。

中国メディアの報道によると、2019年7月24日~8月20日にかけて、動物用医薬品製造会社、中牧実業股份有限公司傘下の製造工場である蘭州生物薬廠で、ブルセラ属菌が漏えいしていた。この事故で、同年11月末ごろ、工場の近くにある中国農業科学院の蘭州獣医研究所の職員や学生から、ブルセラ属菌の抗体の陽性反応が出た。同研究所は工場からわずか460メートル離れたところにある。

漏えいの原因はずさんな管理にあった。同工場は、動物用ブルセラ症ワクチンを製造する過程で、使用期限が過ぎた消毒剤を使ったという。滅菌が不十分であるため、ブルセラ属菌を含んだエアロゾルが工場から排出された。

甘粛省政府と省の衛生当局は2019年12月26日、初めて同事故と感染情報を公表した。それによると、ブルセラ属菌の抗体陽性者数は203人。臨床症状がみられた抗体陽性者は1人いた。

当局はこれ以降、新規感染者や感染実態などの情報を発表していない。しかし、中国メディア「財新網」は9月14日、蘭州市での実際の感染者数は当局の発表より十数倍多いとの記事を掲載した。

同報道によると、20年2月末までに、蘭州市当局は工場付近に住む市民2万人に対して抗体検査を行った。初歩の段階で、ブルセラ属菌の抗体陽性者が5000人いると判明。その後、甘粛省衛生当局が確認を行い、感染者数は3000人余りだと確定した。

蘭州市衛生健康委員会は15日、「財新網」の報道を受けて、ブルセラ属菌の抗体陽性者は3245人と公表した。

他の中国メディアは、20年2月末で感染者が3000人以上とわかっていたにもかかわらず、当局はなぜ公開しなかったのか、漏えいがなぜ1カ月続いたのかなどと相次いで非難した。工場長ら8人は中国共産党の規律処分と行政処分を受けただけで、法的責任は問われていないという。

「財新網」によると、3000人以上の感染者は現在も適切な治療を受けておらず、つらい症状に苦しめられている。

「毎日経済新聞」は19年11月末、同漏えい事故について報道を行った。蘭州獣医研究所の近くで関係者に取材を試みたところ、学生や職員は「知らない」と口を閉ざした。研究所の出入り口には、多くの警備員が配置されたという。

ブルセラ属菌によるブルセラ症は、人獣共通感染症で、発熱、倦怠感、関節や筋肉の疼痛、悪寒、発汗などの症状がみられる。ヒト用ワクチンは実用化に至っていない。

また、発熱が間欠的に起きるため、感染者は仕事をやめざるを得ない場合がある。強い倦怠感から、中国では「怠け者病」と呼ばれている。

(翻訳編集・張哲)