中国本土メディア記者「私を殴れ」と香港デモ参加者を挑発 

2019/08/15
更新: 2019/08/15

香港国際空港で13日、中国本土への容疑者引き渡しを可能にする条例改正案をめぐる抗議デモが行われた。抗議者らは、空港内にいた中国本土出身者3人について、中国当局の指示でデモ参加者を装ったのではないかと指摘した。3人のうち、1人は中国官製・環球時報の記者、付国豪氏であることが分かった。もう2人の徐錦煬氏と林志威氏は広東省深セン市の警官とみられる。

一部のデモ参加者は、中国当局が背後で何かを企んでいると疑い、付国豪氏らを問い詰めた。これを受けて、中国政府系メディアは14日未明から、官製メディアの記者が「デモ隊に殴られた」と大々的に報道し、付国豪氏を「英雄だ」と称えた。しかし、徐錦煬氏らについての報道は少ない。

香港警察当局は12日、週末の10、11日の大規模な抗議デモで、抗議者に扮した警官を動員したと公に認めた。抗議者らは13日、国際空港で、黒いTシャツを着てデモ隊に入り込んでいる警官がいないかと警戒を強めていた。その際、挙動不審の付氏ら3人を見つけた。

抗議者らが、徐錦煬氏、林志威氏と衝突した際、2人の氏名などを知った。ネット上で捜索すると、両氏は深セン市公安局(警察署)福田分局に所属する警官だと分かった。

その場にいた抗議者が香港のネット掲示板「連登社区」に投稿した内容によると、デモ参加者らが、徐氏ら2人に警官を証明する「委任証」を持っているかと聞いた途端、徐氏らは走り去ろうとした。デモ参加者らは2人を追いかけ、徐氏を阻止することができたが、林氏は手荷物を残してそのまま空港から走り去った。林氏のカバンから木製の棒などが見つかった。徐氏はその後、体調不良を訴え、香港の警官らに助け出されたという。

中国政府系メディアの記者である付国豪氏は、共産党機関紙・人民日報系の「環球時報」に勤務していると判明した。

香港メディアなどによると、国際空港で抗議者らが付記者に対しても、中国当局に派遣された警官かと質問したところ、付国豪氏は当初英語で「観光客だ」と答え、職業を伏せていた。抗議者らは付記者の手荷物から、香港警務処公衆活動連絡主任の名刺や、「香港警察を愛している」とのスローガンが書かれた藍色のTシャツ、パスポートに当たる「往来香港・マカオ通行証」などを見つけた。

付国豪氏は抗議者らに詰め寄られると、「私は香港警察を支持している!」「私を殴れ!」と叫び、抗議者らを挑発した。その後、付氏は一部の抗議者に殴られ、病院に搬送された。

香港メディアによると、付記者が当初、報道関係者であることを明らかにしなかった理由は「保身のためではないか」と伝えた。

多くの報道関係者は付記者の説明について異議を唱えた。ブルームバーグのファン・ウェンシン(FAN Wenxin)記者はツイッターで、「この2カ月の間、私はおもに中国語で、香港の街で取材活動を行ってきた。デモ隊と香港の警官から嫌がらせを受けたことはなかった。もちろん、私のことを疑わしく思った人もいたが、取材で質問をし始めると、相手の疑念を消すことができた」「人を殴るのは良くないが、しかし付国豪氏の件は報道の自由と関係ない。自分を守りたいなら、まず記者としての責務をしっかり果たさなければならない」と投稿した。

中国国内インターネット上では、徐錦煬氏が香港人のデモ隊に攻撃された様子の映っている動画が相次いで投稿された。しかし、中国メディアは報道の中で、徐錦煬氏の氏名や職業などに触れず、「中国本土からの観光客」と片付けた。報道の大半は、環球時報の付記者の「英雄振り」の強調や、「抗議者の悪意」を批判することに集中している。

台湾メディア・中央社14日付によると、中国版ツイッター・微博では、「中国本土からの観光客」や「徐錦煬」の検索ワードを入力して検索しても、関連投稿は少ない。また、事件発生後、中国ネット検索エンジン「百度」や「捜狗」などで検索しても、徐錦煬氏に関する情報の検索結果は反映されなくなった。中国ネット検閲当局が情報統制を強化しているとみられる。

中央社は「中国当局が付国豪氏を英雄だと称賛した一方で、徐錦煬氏に関して意図的に避けようとしている。これを通して、数多くの映画で描かれた『スパイ』の運命を連想した」とした。

(翻訳編集・張哲)