EV市場の覇権狙う中国 アフリカで電池原料の独占図る 米国は新戦略で対抗

2018/12/17
更新: 2018/12/17

ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は13日、ワシントンにあるシンクタンク「ヘリテージ財団」で講演し、アフリカで中国ロシアの影響力拡大に対抗する新たなアフリカ戦略を発表した。

ポルトン氏は講演中、中国とロシアはアフリカで金融的・政治的な影響力を急速に拡大させ、「略奪的な行為によりアフリカの経済成長を妨げ、アフリカ各国の経済的自立を脅かしている」と指摘した。また、中露は「米国のアフリカでの投資機会を妨げたうえ、米の軍事活動に干渉した」「両国の略奪的な行為は米の国家安全保障にとって大きな脅威だ」と述べた。

トランプ政権の新アフリカ戦略は、「持続可能で自立したアフリカ」を目指し、今後数カ月〜数年内に各国との2国間貿易協定を進めていくと提唱している。また、アフリカ各国との透明性のある貿易と投資を通じて、アフリカのビジネス環境を改善していくという。

ボルトン氏は、特に中国に関して、賄賂や不透明な合意内容、借金漬け外交などでアフリカ各国を属国状態に陥らせたと批判した。その最大の目的はアフリカの鉱物資源を獲得するためだという。

中国のEV覇権と次世代EV向け電池

中国当局は近年、電気自動車(EV)市場での「強国」を目指している。製造業振興政策「中国製造2025」でEV産業は重点分野の一つと位置付けられている。このため、アフリカでの巨額投資を通じて、EVに欠かせないリチウムイオン電池の原料であるコバルトを寡占しようとしている。

米科学誌「サイエンティフィック・アメリカン」は今年始めの記事で、現在コバルトの供給が需要に追い付かない状況だと述べた。それによると、2040年には世界で使われる自動車のうちの3分の1が電動自動車になるという。

日本経済新聞は8月の報道で、コバルトを「21世紀の石油」と表現し、中国当局はこの貴重なレアメタルの供給網を支配しようとしていると指摘した。需要拡大のため、コバルトの国際取引価格は2年前と比べて4倍に急騰したという。

コバルトの生産量の世界1位はアフリカのコンゴ民主共和国だ。ブルームバーグによると、2017年同国の生産量は世界全体の68%を占める。この重要な資源を獲得するために、中国企業はコバルト採掘企業の買収を進めた。コンゴにあるコバルト採掘企業大手14社のうち、8社は中国企業の傘下に収められた。この8社のコバルト生産量は同国生産量の半分を占めるという。

英市場調査会社ダートン・コモディティーズの統計では、コンゴで生産されたコバルトの94%が中国の精錬会社に輸出された。

ブルームバーグは、中国企業がコバルトの精錬・加工において、すでに世界でリーダー的地位を得たとしている。ダートン・コモディティーズによると、中国のコバルト加工企業は世界生産量の8割を占めるという。

中国共産党政権に近い中国語メディア「多維新聞」は10月11日、「レアメタル争奪戦、中国がアフリカ援助で布石」と題する記事を掲載した。同記事によれば、中国当局はコンゴで銅とコバルトの採掘権を得るために、アフリカで経済援助とインフラ整備を展開するなど数年前から周到な用意をしてきた。

各国、コバルトを使用しないバッテリー開発で対抗

いっぽう、中国企業はリチウムイオン電池の開発技術において他国に後れをとっている。

中国共産党機関紙・人民日報電子版9月1日付によると、中国科学技術部(日本の文部科学省に相当)ハイテク技術発展・産業化司の続超前・副司長は、EV向けリチウムイオン電池の分野で、中国企業は「独創性のある技術を生み出していない」と指摘した。

中国のEV向けリチウムイオン電池メーカーは、耐熱性の固体高分子電解質膜(隔膜)など重要部品は海外企業からの輸入に頼っている。

ドイツコンサルタント大手のローランド・ベルガーは8月、中国、日本、米など世界EV生産主要7カ国を対象に行った調査報告「Eモビリティ・インデックス2018」を発表した。同報告では、中国企業は生産量の成長率が7カ国でトップとなっているが、技術力は6位にとどまっている。

各国の研究機関と企業は、中国当局のコバルト供給網支配に対抗して、コバルトを使わないEV向けバッテリーの開発を加速させている。サイエンティフィック・アメリカン誌によると、米研究家はカソード(陰極)技術で代替品を開発している。

AP通信社12月6日付によれば、ホンダ・リサーチ研究所(Honda Research Institute)とカリフォルニア工科大学などは、次世代のフッ素化物イオン電池を共同開発している。

(翻訳編集・張哲)