オーストラリアに対する中国の浸透について警鐘を鳴らす著書『Silent Invasion(静かなる侵攻)』中国語版の出版計画が台湾で頓挫している。著者の豪チャールズ・スタート大学クレイブ・ハミルトン教授(公共倫理学)は明かした。中国の圧力で出版を引き受ける出版社がないという。
同氏は今月24日に台北市内で開催された「ケタガラン・フォーラム:2018アジア太平洋安全対話」に出席した時、中国語版の刊行が台湾で行き詰まったと話した。
同書は、中国共産党政府は、西側諸国の民主主義を利用し、民主主義を破壊していると警告している。 豪州に移住した中国人富豪が現地企業や政治家に巨額献金したとの事例を紹介した。こうした政治家が南シナ海問題や自由貿易協定(FTA)などの問題で中国に有利な世論や政策を作り出したという。
同書は今年2月に出版されて以来、オーストラリアで大きな話題を呼んだ。政府は反スパイ法を改正するなど、暗躍する共産党の代理人に警戒を強めている。
当初、オーストラリアでの出版計画も、出版社が中国当局の圧力を受け、2度も白紙に戻された。
台湾でも同じ出来事が繰り返された。もともと、交渉に合意した台湾の出版社は急遽(きゅうきょ)、翻意したため、出版を取りやめた。
同氏は中国当局から言論、出版の自由の弾圧などを恐れずに立ち上がるべきだと、台湾の出版社に呼びかけた。そして、長期にわたる中国共産党の浸透工作から被害を受けた台湾は、今後豪州と連携を取るよう期待するとした。
台湾師範大学の楊聡栄副教授は米ラジオ・フリー・アジアの取材に対して、「台湾の人々は、北京政府からの浸透に対する認識がまだ不充分である」と指摘。また、あるオーストラリアの学者が講義中、ただ台湾に言及しただけで、すぐ中国人の学生の抗議を招いた事例を紹介し、「中国は民主主義を利用して、民主主義を破壊し、言論の自由を抑圧するという動きがある。われわれは中国の脅威を改めて認識する必要がある」と懸念を示している。
台湾中央研究院のある匿名の学者は米ラジオ・フリー・アジアの取材に対して、「台湾には中国の圧力を恐れない出版社がかなり多くある」と出版が不可能ではないとの見解を示した。
(翻訳編集・柳雅彦)
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